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第三部 最期の純愛 44話 【重なる魂、紅蓮の旋律】

怪物の体内は、ジークが放つ支配の霧と、クロエが持つ絶望を断ち切る意志がぶつかり合い、異常な熱量を帯びていた。核の奥底、心臓部ともいえる領域で、二人は背中合わせに立つ。


「ジーク、準備はいい?」

「……ああ。お前のすべて、俺が受け止めてやる」


クロエが漆黒の刀を高く掲げると、彼女の内側からあふれ出したのは、純粋で無垢な光の粒子だった。それは「プロジェクト・イヴ」の残滓が、クロエという器を通してようやく見つけた「安らぎ」の輝き。


ジークは両手を広げ、自身の象徴である赤と黒の霧を極限まで圧縮した。それは世界を滅ぼすほどの破壊のエネルギーでありながら、クロエという一点を守るための「絶対の壁」でもあった。


二人の力が一つに混ざり合う瞬間、ホールの空気が悲鳴を上げた。


「いくぞ!」


ジークの放つ紅い霧が、クロエの刀身を黄金色の炎のように包み込む。紅と黒、そして光が螺旋を描き、一つの巨大な「断絶の閃光」へと昇華された。それは物理的な破壊を超え、怪物に刻み込まれた数多の呪いと、将軍の汚らわしい野望を根底から消し去るための力。


「おぉぉぉぉぉっ!!」


ジークの魂を削るような咆哮と、クロエの澄み渡るような叫びが重なり、閃光が怪物の核を貫いた。


空間そのものが粉砕されるような轟音。

黒い霧は怪物の肉塊を喰らい、紅い炎は魂のおりを焼き払う。内側から起きた爆発は、外側へ向けて放射され、サリエールの地下拠点を根こそぎ消滅させるほどの光の奔流となった。


「二人で……越えるのよ」


クロエの刀が、怪物の心臓を完全に両断する。

その刹那、紅蓮の旋律が奏でられたかのように、怪物の咆哮は歓喜の嘆息へと変わった。二人の力が交差した中心点では、もはや支配も隷属も存在しない。あるのは、互いを求め合う純粋な衝動と、その熱だけだった。


すべてを白く塗り潰す爆光の中で、ジークはクロエの腰を引き寄せ、守り抜いた。

たとえ世界が塵に帰ろうとも、この手の中にある体温だけは決して離さない。二人の力が、境界を、運命を、そして呪われた過去を、跡形もなく消し飛ばしていった。

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