第三部 最期の純愛 38話 【深淵の門】
通路の角を曲がった瞬間、鋭い警報音が館内に響き渡った。行く手を阻むように、重装甲に身を包んだ複数の兵士たちが目前の通路を封鎖する。
「排除するぞ」
ジークの合図と同時に、二人は踏み込んだ。
ジークは真っ先に飛び出し、眼前の敵の懐へと潜り込む。彼が繰り出す拳は、銃弾をも弾く強化装甲すらも紙のように砕き、兵士たちを次々と壁へと叩きつけていく。一撃ごとに鈍い衝撃音が鳴り響き、兵士たちは悲鳴を上げる間もなく意識を刈り取られていった。
一方のクロエは、狭い通路という制約を逆手に取った。彼女は壁を蹴って空中で体を翻し、銃を構える。無駄のない動きで放たれる銃弾は、兵士たちのヘルメットのバイザーや、関節部の僅かな隙間を正確に撃ち抜いていく。ジークの荒々しい暴力と、クロエの精密な銃撃。二人の流れるような連携の前では、通路を埋め尽くした精鋭たちも、ただ崩れ落ちるしかなかった。
「……こんなもんかな」
最後の一人が床に崩れ落ちると、ジークは荒い呼吸も乱さず、冷ややかな瞳で倒れた兵士たちを見下ろした。その足元には、研究所の深部を守る巨大なセキュリティゲートが鎮座している。
ジークは躊躇なくゲート横の操作パネルに手をかけ、ハッキング用のツールを接続した。
「開けられるの?」
クロエが警戒を解かずに尋ねると、ジークは端末の画面を覗き込みながら、わずかに口角を上げた。
「愚問だな」
フッと不敵な笑みを浮かべた直後、電子音が軽快に鳴り響き、重厚なロックが解除された。巨大な扉がゆっくりと、油圧の作動音を立てて左右に開いていく。
「流石」
クロエはジークの背に深い信頼を寄せ、開かれた闇の奥へと足を踏み入れた。そこは、サリエールの闇の核心――「プロジェクト・イヴ」が眠る、聖域にして監獄だった。




