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第二部 真実の対峙 23話 【火薬の匂いと、終わりなき問い】

「見えるか?」


高台から眼下に広がる光景を指し、ジークが問いかける。双眼鏡を覗き込んだクロエは、思わず息を呑んだ。基地の周囲は飢えた異形の大群に囲まれ、その中心には堅牢な要塞が鎮座している。正面突破など自殺行為に近い、圧倒的な戦力差だった。


「作戦はあるの?」


クロエが双眼鏡を返すと、ジークは不敵に唇の端を吊り上げた。


「昨夜、アキラたちに命じておいた。外壁の各所に爆弾を仕掛けてある」


クロエが心地よい眠りについていた間に、着々と進行していた工作。ジークらしい隙のない準備に、クロエは呆れつつも笑みをこぼす。


「手際がいいことで」

「安心しろ。お前が暴れる機会は山ほどある」


二人は車に戻ると、ジークはボンネットの上に地図を広げた。その大きな手が、迷いなく図面の上を滑る。


「俺たちは裏口から潜入する。表口はアキラたちの爆破を合図に、派手に暴れてもらう予定だ。目標はここ、中央サーバーだ。サリエールの研究データがすべて詰まっている。ここを物理的に破壊すれば、連中はしばらく自分たちの尻拭いに手一杯になるはずだ。俺たちを追う余裕なんてなくなる」


クロエは示された裏口からの侵入ルートを、脳裏に焼き付けるように記憶した。


「基地内は通路が狭いだろう。刀を振るうには不向きな場所も多い。これを使え」


ジークから手渡されたのは、以前にも扱ったことのある馴染み深い銃だった。


「これはお前専用だ。好きに使え」


掌に伝わる銃の重みを確かめ、二人は作戦を続行に移した。荒野を疾走する車のエンジン音が、静寂を切り裂いていく。基地が近づくにつれ、張り詰めた緊張感が車内を満たした。


ふと、クロエは隣でハンドルを握るジークを見た。


「ねぇ、ジーク。……終わったら、聞きたいことがあるのだけど」


クロエの言葉に、ジークは形のいい眉をわずかに歪めた。横目でクロエをちらりと見やり、少しだけ声のトーンを下げる。


「……今ではだめなのか?」


その問いには、戦場という極限状態においてさえ、クロエのすべてを知っていたいという彼の独占欲と、どこか期待にも似た不安が入り混じっていた。クロエは少しだけ視線を逸らし、小さく首を振る。


「今聞くと、後々に響くかもしれないから。終わったあとでいいよ」


その言葉の真意を測りかねたかのように、ジークは一瞬だけクロエの横顔を見つめた。やがて彼は短く、しかし力強く頷く。


「わかった。……生きて帰れば、何でも答えてやる」


爆音とともに、遠くで外壁が炎上し始めた。アキラたちの合図だ。ジークはアクセルを床まで踏み込み、黒煙が上がる死地へと車を躍り込ませた。二人の問答は、戦火の轟音の中に飲み込まれていった。


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