第二部 真実の対峙 21話 【迫りくる影と、決断の時】
ジークから告げられた「前世」の真実。その重圧に、クロエの心はしばらくの間、波立つ水面のように落ち着きを失っていた。ジークもまた、彼女の動揺を察し、無理に答えを求めるようなことはせず、ただ静かに同じ時間を共有し続けた。
しかし、外の世界は二人の静寂を許さなかった。
双子のアキラとカグヤによって拘束された将軍は、拷問にも等しい尋問の末に、サリエールの不穏な計画を白状し始めていた。将軍の口から語られたのは、かつてのデリフの記録を悪用し、世界各地に点在する「異形生成地帯」を制御し、兵器として利用しようという狂気的な野望だった。
ジークは以前、自らの手でデリフの研究所の記録を灰に帰していた。だが、研究所の生き残りが密かに資料を持ち去り、その子孫が長い時を経てそれを見つけ出したのだろう――。将軍の告白を聞いた双子からの報告を受け、ジークの眉間に深い皺が刻まれる。
もはや、この要塞にクロエを隠しておくことは難しい。サリエールの追っ手は、もはや一つの国の軍隊という枠を超え、世界規模の執念でクロエという「特異点」を追い詰めようとしていた。
ジークは覚悟を決め、コントロール室で待つクロエのもとへ向かった。窓の外には沈みゆく夕日が、まるで血のような赤色を要塞の壁面に落としている。
「クロエ」
呼ばれたクロエが振り返る。ジークはそのまっすぐな瞳を見つめ、事の顛末をすべて話すことにした。
「……サリエールの連中が、何を目指しているか分かった。彼らは俺が過去に封印したはずのデリフの技術を再発掘し、世界をその力で塗り替えようとしている」
クロエはジークの声色の厳しさに、事態の深刻さを悟った。
「その標的が、私……なのね」
ジークは無言で頷く。その眼差しには、愛おしさとともに、守りきれないかもしれないという苦渋が滲んでいた。
「隠し通すのは不可能だ。彼らはこの要塞の位置すらも特定しつつある。……選択の時だ、クロエ。このまま守られることを選ぶか、それとも、お前自身の手でその運命を終わらせるために、戦いの渦中へ飛び込むか」
ジークの言葉は、クロエに対する最後通牒であり、同時に彼女の意思を尊重するという彼なりの最大の敬意でもあった。要塞に漂う冷たい空気が、二人の未来を鋭く切り取っていた。




