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第二部 真実の対峙 17話 【暴かれる盤面】

食事のテーブルに、静寂が降りる。上質な料理の並ぶ豪華な食卓。だが、クロエの心は要塞の奥底にあるあの部屋に囚われていた。


ふと、クロエはフォークを置き、向かいでワインを嗜むジークを見た。


「ねぇ、ジーク。ここに来た時に入れてくれた、あのモニターのある部屋……あそこに映っていたことを知りたいの。世界のことが、私のことが、教えてくれない?」


ジークの手が止まる。ワイングラスを置く音が、やけに硬く響いた。彼はクロエを真っ直ぐに見据え、静かに溜息をつく。


「知れば後戻りできなくなるぞ。ここにいれば食うには困らないし、生きていくのも楽だ。平穏に時を過ごすことを選んでも、誰も咎めない」


それはジークなりの、最大限の慈悲だった。彼女を呪われた過去から遠ざけ、ただの「クロエ」として守り抜こうとする強固な意志。しかし、クロエはその優しさに甘んじることを選ばなかった。


「そうだね。貴方の庇護下にある以上、明日も明後日も安泰だと思う。でも……私は知りたいの。自分のことも、今、私たちが生きているこの世界のことも」


クロエの瞳には、迷いがなかった。かつての彼女と重なる面影ではない、一人の人間としての強い意志が宿っている。

ジークはそのまっすぐな瞳を、深い紅の瞳で静かに受け止めた。数秒の沈黙が流れ、やがて彼は椅子の背に手をかけ、ゆっくりと立ち上がる。


「……ついてこい」


一言だけ告げ、ジークが歩き出す。

クロエはすぐさま席を立ち、その後を追った。要塞の深い闇を切り裂くように、彼の足音が響く。向かう先は、あの無数の監視モニターが死神の眼のように並ぶ指揮室だ。


扉が電子音と共に開かれる。

再び目の当たりにするその部屋は、相変わらず冷たく、そして雄弁に世界の末路を語りかけていた。ジークはメインコンソールを操作し、壁一面のモニターに次々と映像を呼び出す。


「お前が見たがっているのは、これか?」


映し出されたのは、地図上に無数に点在する赤い光の点だった。それが何を意味するのか、クロエは直感的に悟る。


「全部、研究所の跡地……?」

「そうだ。世界を病ませ、異形を産み落とす『源泉』だ。そして――お前が自分の中の霧を制御できるようになった時、何が起こるのか。それを今から見せてやる」


ジークの横顔は、もはや支配者でも、一人の男でもなかった。何百年もの間、ただ一人でこの理不尽な世界と戦い続けてきた「監視者」の顔だった。クロエは息を呑み、モニターの中に流れる残酷な真実を、視界に焼き付けようと瞳を凝らした。


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