第一部:共鳴する業(ごう)と契約 12話 【境界の弾丸、赤く染まる鉄条網】
装甲車が地響きを立ててバリケードへ肉薄する。ジークは微塵も怯まず、鉄の塊を容赦なく車体で粉砕した。轟音とともに柵がひしゃげ、火花が夜を切り裂く。
「クロエ、撃て!」
ジークの合図と共に、クロエが助手席の窓から銃口を突き出す。黒く染まった銃弾が火を噴き、バリケードを固めていた警備兵たちの盾を紙くずのように吹き飛ばした。
突破したのも束の間、ギルドが隠し持っていた「異形」が闇の中から現れた。人の形を歪め、結晶状の突起を生やした怪物たちが車を取り囲み、跳躍する。
「……なるほど、追放が確定した時点で、こいつらを差し向ける算段か」
車体の上に一匹の異形が着地し、屋根を突き破ろうと爪を立てる。車内では銃を扱うのが限界だと悟ったクロエは、迷わず助手席のドアを蹴り飛ばした。慣性で車外へ飛び出し、腰の愛刀を逆手で抜刀する。銀の刃が月光を反射し、迫り来る異形の胴を鮮やかに一閃した。
「戻れ、クロエ!」
ジークが車をスピンさせ、迫る異形を跳ね飛ばす。クロエは跳躍し、再び助手席へと滑り込んだ。
車内に戻った瞬間、彼女は鞘に納めた刀の感触を背中に感じながら、手にした黒銃のグリップを強く握り直す。
「刀は飽きたか?」
「車内じゃあ邪魔なだけ。……今はこっちの方が、この子と相性がいいみたいよ」
クロエがマガジンを叩き込み、スライドを引く。彼女が引き金を引くたび、黒弾がガラスの盾を貫通し、外を囲む異形の核を的確に穿っていった。
「クロエ、正面だ。ゲートを固めるのはギルドの精鋭どもだぞ」
「……ええ。お望み通り、風穴を開けてあげる」
クロエは銃身の熱を掌に感じながら、前方のゲートを見据えた。上部の扉から半身を乗り出し、引き金を引く指に力を込めて能力の出力を最大まで引き上げる。
二人の破壊力が噛み合うたび、国境の夜は死の静寂と硝煙の混ざり合う色彩に塗り替えられていく。
ジークはアクセルを緩めない。彼は分かっていた。この境界を越えた先にあるのは、安息の地などではない。自分たちが作り上げた「箱庭」の真実、そして終わりのない追跡の始まりであることを。
車は鋼鉄のゲートへと、まっすぐに突き進んでいった




