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第一部:共鳴する業(ごう)と契約 11話 【黒弾の洗礼】

ジークは鏡の前で整えたネクタイを締め直すと、上質なカシミアのコートを羽織った。隠れる気など毛頭ない。彼にとってこの世界は、そもそも自分の掌の上にある箱庭に過ぎないからだ。


世界中に広がる網の目のような組織。誰もがそれを自分たちの力だと信じているが、実はすべてがこの男の意のままである。アキラとカグヤの手回しで用意された漆黒の装甲車が、ホテルの裏口で静かにエンジンを響かせていた。


「一番最も危険な方法だぜ? 覚悟はいいな」


ジークが運転席から助手席のクロエに視線を向ける。クロエはホコリを被った隔離区域での装いとは別人のように、鋭い光をその瞳に宿していた。


「私はこれでもギルドでSランクを張っていた能力者よ。舐めないでくれる?」


不敵な笑みを見せるクロエの膝の上に、ジークは一丁の重厚な銃を放り投げた。

無骨な黒い銃身。片手では余るほどの太いグリップ。だが、手に取ると見た目に反して驚くほど軽い。


「これは?」

「最新式だ。お前の能力の出力にも耐えうる仕様だ。遠慮なくぶっ放せ」


ジークは前を見据えたまま告げる。


「お前は刀に固執しているようだが、車の中では振るえないからな」

「……ありがと。使わせてもらうわ」


クロエが銃の感触を確かめると、ジークは予備のマガジンを差し出した。


「そのマガジンを握って力を込めてみろ。お前の『霧』の力が弾丸に転写される。お前だけの、専用銃だ」


クロエがマガジンを強く握りしめると、内部の弾丸が怪しい黒色に変色していく。自分の力が、殺傷能力を持つ弾丸へと形を変える感覚。それは刀で切り裂くのとはまた違う、冷徹な死の予感だった。


「調整は終わりか? すぐに使うことになるぞ」


ジークがシフトを叩きつけ、アクセルを深く踏み込む。

猛然と発進した装甲車が、検問所を封鎖していたギルドのバリケードへと突っ込んでいく。


「いくぞ」


狂気じみた突破劇の幕開けだった。窓の外では、すでに追手たちの怒号が飛び交っている。クロエは黒く染まったマガジンを銃に装填し、迷わず引き金に指をかけた。


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