第二章18話 『8月16日②』
12:00頃、アメリカ海軍の太平洋艦隊が日本の経済水域に侵入し、海軍の主力艦隊は防戦を始めた。しかし、その数分後にミサイル巡洋艦が所定の位置につき、一斉に日本に向けてミサイルを発射した。そのミサイルを探知したイージス艦で組まれた哨戒艦隊はすぐに本部へ連絡した。
「アメリカ海軍によるミサイル発射を複数確認!対処します。」
それに対して有賀総長は対処を中断させた。
「核兵器による攻撃はすべて黒野大将が対応する。破壊ではなく消滅をもってして対応しなければ、辺りは汚染され、我々の食糧にだって影響し得る。」
この一件をすべて黒野大将に任せた。
それらの情報とほぼ同時刻に日本の排他的経済水域にアメリカの太平洋艦隊が侵入し、第一主力艦隊が戦闘に入っていた。
第一主力艦隊とは、日本国防軍の海軍において一番の戦力を持ち合わせてる連合艦隊の直轄部隊と第一艦隊のことを指す。現在、日本海軍の艦艇のほとんどは連合艦隊に所属してある。つまり、連合艦隊総司令長官の指揮下にあり、その司令官は海軍大将の及川海鈴であった。第一主力艦隊の指揮は東郷清隆中将が執った。東郷中将は防空警戒陣をとり、臨戦態勢に入った。前方に直轄部隊の艦隊、後方の少し離れたところに第一艦隊が続いて航行し、陣をとった。そして、敵の第一次攻撃隊が襲来。先の大戦とは違い、艦載機といっても、耐久性や攻撃性、機動性などが上がり、空軍が持つ戦闘機と同等とも言える戦闘能力をもつ。欠点と言えるのは恐らく飛行時間の限度が短いといったところだろう。
「東郷中将、敵機5機確認!対艦ミサイルを確認したもようです!対空射撃を準備します。」
連合艦隊直轄部隊旗艦・大和の艦長である萩野大佐が進める。
直轄部隊の艦すべての副砲が照準を合わせた。
「副砲ではミサイルは防げない。主砲も準備し、同じく対艦ミサイルで応じる。発射のタイミングは敵のミサイルが発射されて軌道が安定してから、照準を確実に合わせて発射。副砲は敵戦闘機を狙え!」
東郷中将の指示通りに動き、戦艦の主砲には小型誘導ミサイルが装填された。その頃には敵機はミサイルを放っていて、すぐに照準を合わせて発射した。ミサイルとミサイルがぶつかり合い、爆発を起こす。日本側が多くミサイルを放ったことにより、残ったミサイルは自動的に敵機を狙って飛んでいった。しかし、当たることはなかった。
「敵艦隊の正確な位置は掴めたか?」
「未だに観測範囲外のところにいるようです。」
「ということは、敵は哨戒機を飛ばしてこちらの位置を把握しているか。ステルスか。こちらはまだ見つけていないことには攻撃しようにも出来ない。なぜ日本は空母を攻撃ではなく、防衛にまわしたのか。アメリカの空戦力というものがどれだけ強力なものなのか分かっていただろうに。」
「東郷中将、どうしますか?」
「相手がどこにいるのか分からずに監視されているのなら、それを利用すればいい。我々の任務は太平洋艦隊を倒して、ハワイの基地を占拠すること。予想ではハワイにつく前に敵艦隊に遭遇するとされていたが、それはちょっと違ったようだな。さて、作戦を発表する。第一艦隊は針路、速度そのまま敵艦隊を捜索。それと一応、航空戦力の補填として後方にいる第七艦隊に航空支援を要請。その辺の細かいところは第一艦隊司令官の宮野少将に任せる。我々、直轄部隊はハワイへ速度を上げて向かう。暗い夜道をライトも持たずに進んでいくようなものだが、対艦ミサイルの対処の練習もしたことだし、この火力で何とかしよう。」
この作戦のとおりに分隊しそれぞれの武運を祈った。ステルス哨戒機は直轄部隊の動きを把握して本隊へ報告し、ハワイ防衛ラインを形成するように促した。太平洋艦隊は分隊した直轄部隊をターゲットに動き始めた。
時刻は13時を回った。太平洋艦隊は情報を受けて体勢を整えるために慌ただしくなっていた。水上打撃群にはすでに日本の経済水域に突入していたところを日本の直轄部隊を上手く追尾するように指示した。そして、ハワイ防衛ラインの形成に向けて、各チームを出撃させていた。哨戒艇を出し、潜水艦も配置につかせ、イージス艦及び駆逐艦、フリゲートで警戒を強めた。
時刻は14時を回る。何事もないまま連合艦隊直轄部隊は航行していた。しかし、東郷中将は何か良くないことが起こると感じていた。
「あれから何もないというのは怖いな。哨戒機がいるとするならば、攻撃機がいくらか来てもいいくらいなのだが、静かすぎて不気味だ。・・・速度を緩め、エンジンその他探知機以外のすべての電源を切れ!」
数分後に艦隊はそれぞれ安全の距離を保って完全に停止した。数分後、船務科の1人が報告。
「司令、後方より敵艦隊と思われるものを感知しました。」
「よしっ、速力微速で右に旋回!並びに砲撃用意!大和型の主砲により敵艦隊を迎え撃つ。対空射撃は巡洋艦と駆逐艦に任せる。」
「司令、敵艦隊の大まかな艦種が判明しました。空母1、戦艦2、巡洋艦級4、駆逐艦10、フリゲート5の計22隻。」
「空母と戦艦をターゲット。砲撃開始!」
合図とともに砲撃が始まった。大和型の長距離砲撃により、敵艦隊はダメージを受ける。しかし、敵航空機はすでに飛び立っており、対艦ミサイルによる攻撃が見込まれた。
「ミサイル装填!対艦ミサイルに対処せよ!」
対空射撃から残った敵攻撃機が対艦ミサイルを放つ。同時に味方戦艦主砲より小型誘導ミサイルが放たれる。しかし、誘導ミサイルは軌道が安定せず命中率が悪かったため、敵対艦ミサイルのほとんどはそのまま味方艦隊に直撃した。
「対艦ミサイル複数着弾!」
「被害報告を急げ!」
「被害報告、対艦ミサイルが計6本の命中を確認!内戦艦武蔵に2本、戦艦紀伊、重巡三隅、最上、軽巡木曽にそれぞれ1本ずつ命中。武蔵と木曽は炎上し、只今消火作業中です!」
「了解。それ以外は引き続き攻撃を。」
第2砲撃を行い、敵戦艦1隻を大破、航行不能にしたが、敵機による第二次攻撃隊が飛来、再び対艦ミサイルを放つ。同じように即座に対処するが、あまり効果をあげられず被害を受けた。
「対艦ミサイル着弾!被害状況を確認します。」
「うむ。」
「報告します。味方艦隊に計5本着弾を確認!内、戦艦紀伊、和泉に2本、重巡播磨に1本。紀伊の損傷は大きく航行不能!他2隻は主砲ともに大破、炎上中!消火作業にあたっています。」
「重巡美濃と軽巡三河、駿河、磐城は旗艦大和とともに敵艦隊に急接近し、近距離攻撃を仕掛ける。残りは復旧作業にあたれ。速力最大船速!針路北西!」
大和他4隻は針路を変え、敵艦隊へと一直線に向かっていった。