第二章14話 『中国の新米魔法使いたち』
作戦開始からおよそ一時間後にようやく最終ターゲットである魔法育成施設へとたどり着いた。ここは山奥にあるため、一般市民はいない。さあ、始めよう。魔法による戦争を。
「アパートファイアボール!」
6つの炎を建物にぶつけていく。燃え上がるなかから、人影がたくさん飛び出してきた。そして、私はその人たちにコの字に囲まれていた。どうやら小隊に別れて行動しているようだ。その小隊が連携して私を相手にしようとしている。
「「アクティベーション!!」」
一斉に魔法を展開する。
「闇夜に光輝く、
一つの炎が燃え上がる、
わが民の道しるべとなるだろう、
燃え上がれ、
ファイアーロード!」
「冥府へ堕ち、罪人は地獄の川へ、
氷漬けにされよ、
コキュートス!」
「天之四霊の一角を担う蒼龍よ、
東方の守護者としての威厳を見せよ、
侵略者を駆逐し、祖国を導け、
東方蒼龍!」
「陰陽の十二天将の土神よ、
視界を阻害し、砂嵐を呼べ、
天空!」
4人の魔法使いが魔法をそれぞれ唱えた。私の周りの地面が燃え上がり、その中が氷に覆われる。私は宙を舞ってそれらを避ける。そしたら龍が現れ、現れたと思ったらいくつものに増えて襲いかかる。それらを剣で対処しているうちに向こう側から砂が勢いよく襲ってきた。
「今だ!今のうちに行くぞ!」
あるひとりが声を上げ、一斉に攻撃が開始された。その魔法は一つ一つは何ともない簡易なものだが、束になることによって大きな魔力となる。私は魔力をリリースして砂嵐を散乱させる。
「あらゆるものを返せ、ミラーリング!」
ミラーリングを360°展開し、攻撃を弾いた。彼らも上手くそれをかわす。
これはなかなかキツい戦いになりそうだ。私も少し本気を出さないと。
「ローマの最高神ユーピテルよ、
天を操り、雷を起こせ、
天使の羽を付与し、
われの願いのために、
事象を支配せよ、
インペリアル・エンジェル・スカイ!」
さて、改めて始めよう、天の力による狩りを。
まずは豪雨を降らし、強風を招く。風を背に纏い、天使の羽根を使って加速する。勢いを利用して相手に襲いかかる。弱そうな者から狙う。しかし、そこへ庇うように剣を受け止めた者がいた。おそらくはそこの小隊長とかだろう。それとも友人?でも、私の速さについてこれるかな?私は全方向からの連続攻撃を仕掛けた。でもその者はすべて剣で受け止めた。
「私は秦子轩。ここの生徒会長であり、管理者でもある。あなたの噂は知っている。でも、ここのみんなは殺らせない。ここから去れ!」
ものすごい目力で睨んでくる。彼女の怒りが魔力を増大させて滲み出てくるのが伝わってきた。でも、引くわけにはいかない。私は任務遂行の義務がある。
鍔迫り合いを止めて、距離をとる。彼女は嵐のなか平然と立ち構えている。その後ろには必死に嵐に耐えて立つ仲間たちがいた。
その圧に圧倒されそうだったが、私は再び飛翔して彼女を相手にした。彼女は高速魔法の使い手のようでこのスピードについてきた。私は気象を操作し、雷や雹などを使ってダメージを与えようと試みたが、すべて防がれてしまった。
「そろそろ終わり?なら、次はこちらの番。
魔より生まれし産物、
心臓を握り、時を奪い、
悪夢を見よ、ファントム!」
彼女の目力がすごく、目に魔力を帯びていた。心臓が何者かに握り掴まれ、視界が眩む。瞬きをすると、彼女はすぐ目の前に迫っていた。心臓を剣で貫かれ、地に叩き落とされる。晴れ渡った空に浮かぶ彼女が悪魔のように見えた。
「私は守るためには悪魔にも神にもだってなろう。あなたをここで討つ。動けなくなるまで何度でも心臓を貫き、肉片に成り果てるまで何度でも斬り刻もう。」
血を吐き捨てながらも立ち上がり、息を整える。
「ここにいるのは私の学校で育った強靭かつ強力な魔力の持ち主だ。自らの罪を嘆き、苦しみながら失せるがいい。皆、真の力を解放せよ!」
「「ヂィエ ファン!」」
一斉にそう唱えた彼らは今までの魔力とは違った。それから彼らは目で合図を送りあった後、目に見えない速さで動き出した。私は予測魔法を発動させて相手を探る。しかし、追いつかない。まずは背後から一撃、左側からもう一撃。痛みにもがき、ふらついているところに全員に剣で心臓を貫かれた。声もあげられず、血を吐き出し、身動きが取れなかった。力が抜けていき、魔力がこぼれていく。秦子轩が剣を抜きとり、私の頭を掴むと剣を高らかにあげた。
ここで終わるわけにはいかない。意識を保つのに必死であったなか、私はこぼれていく魔力を利用して、それを溢れ出る魔力へと変換した。私を中心に爆風が起こった。秦子轩たちはそれに巻き込まれて飛んでいった。心臓に刺さっていた剣は消えて、血がまた溢れてきた。血が足りなく、視界が狭くなりつつも、ゲートを開いて本部へと帰還した。