第二章11話 『国防軍』
屋敷に戻り、ご飯を食べたあとは自由時間。私はいつものようにティーを飲みながら、ゆっくりしていた。アンは魔法の自主練をしに外へ出ている。空が青く澄んで静かなひと時を過ごしていた。しかし、そんななか、屋敷にお客さんが訪れた。その人たちはヘリコプターで空から降り、屋敷を包囲した。恐らくはアンも同じ状況になってるだろう。彼らの目的はもう分かっている。アンと私をそれぞれ連れていくことだ。日本の国防軍とドイツ軍がそれぞれ奇襲しにきている。それらは予測魔法で情報を得た。でも、なぜこんなことをする必要があるのか。問題はそこにあった。私はカップに入っていたティーを最後まで飲み干し、席を立った。
「アクティベーション。」
魔法を展開し、剣を手に取る。ひとまずアンのもとへ行こう。私は玄関へ向かった。私の足音で居場所を察知したのだろうか。お客さんたちはさっきまで私がお茶していた部屋の窓から窓を割って侵入してきた。私は走って玄関のドアを蹴り開け、付近にいたお客さんたちをショットで飛ばす。お客さんたちは銃剣らしきものを手にしている。そしてあの中は恐らく麻酔銃だろう。外に出ると屋敷の上に一機とちょっと向こうにもう一機のヘリコプターが飛んでいた。あそこにアンがいる。高速魔法で加速し、すぐにそこまで行った。しかし、アンはちょうどヘリコプターに乗せられようとしてるところだった。すでに意識はなく、自力での脱出は不可能。さらに、私をドイツ軍が麻酔銃で迎え撃ってきた。予測魔法と高速魔法でそれらをかわして、ヘリコプターを目指して浮遊した。しかし、ヘリコプターからは催眠ガスが放出され、私は眠りに落ちてしまった。
目を覚ますと、そこは見慣れた檻の中だった。両手は魔法使い専用の手錠をかけられて、後ろ手にされている。目覚めて間もなく、誰かがやってくる足音が聞こえた。それは私がいる檻の前でとまった。逆光で顔がよく見えず、影だけうっすらとあった。
「はじめまして。私は日本国防軍総長を務める者だ。手荒な真似をしたことは謝罪しよう。すまなかった。」
ちゃんと頭を下げているようだった。
「さて、もう気づいているとは思うが、あなたを日本国防軍の魔法部隊に招き入れたい。引き受けてくれると、すぐにでもここから出て別な場所で詳しいことを話すが、あなたの意見を聞きたい。」
「私が日本軍に徴収されることは分かっておりました。私に居場所をくれるなら協力します。」
「そうか、それならば今すぐその手錠を外させよう。」
周りにいた人の一人が檻を開けて、私の手錠を外す。あの人はその間にどこかに行ってしまった。私はその付き人に案内されてある部屋へと入った。
「ようこそ、国防軍はあなたを歓迎します。」
そこにいたのはさっきの総長だった。
「改めまして私は有賀秀徳と申します。さあどうぞ、こちらにおかけになって。」
高級なソファに腰かけて私はいろいろと総長に質問をした。
「私が部隊に配属される前にこの国防軍について知っておきたいので質問をしてもいいですか。」
「どうぞ、お気の召すまで。」
このタイミングでティーがテーブルに出された。私が屋敷で飲んでいたものだった。
「まずはこの組織の構造について、総長とは国防軍のどの位に位置するのですか。」
「なるほど、では簡単に国防軍についてご説明しましょう。私たち、国防軍は軍の基本である海陸空の3つにわかれることができます。加えて魔法部隊、いや、魔法軍と言いましょうか、これで国防軍は4つにわかれることができます。以前の大日本帝国軍はそれぞれの軍が独立して好き勝手に動いて収集のつかないことになりましたが、国防軍はその4つの組織を国防軍上層部で統括できるようにしました。昔の天皇陛下が担っていた元帥は内閣総理大臣が務め、その補佐役、軍に関する専門知識を有し、実質的な指揮するのが総長となります。防衛大臣は文官として政治上での国防軍の地位の確保などをしてもらうので大臣は国防軍の指揮権などはありません。さて、話は戻り、総長以下はどのようになっているかですが、総長の配下として参謀があり、参謀長とその他参謀官でなり、それから4つに別れます。それぞれの軍を仕切るのは大将です。陸軍大将、海軍大将、空軍大将、魔法軍大将の4人がそれぞれ軍をまとめ上層部である、私たち総長と参謀とで決めた作戦や命令を彼らに発します。大将以下は、中将、少将と位があり、中隊や小隊の指揮官となります。他にも様々な称号がありますが、軍によって違い、細かいので省略とさせてもらいます。」
「わかりました。では次の質問です。魔法軍はどれくらいの人数がいるんですか。」
「それがですが、現在即戦力となるのが魔法協会からきたものが100名程度でして、新たに国立の魔法学院を創設したのですが、まだ戦力にはなりません。ですから、あなたには魔法軍の先駆けとなって最初の作戦を実行してほしいのです。」
「最初の作戦?」
「はい。おそらくは大戦の火付け役となるでしょう。私たち日本はドイツと再び手を組み、2つの大国である中国とアメリカをおさえます。そうすることで資源と食糧を確保できます。これは日本を守るためであります。作戦はドイツと同時に行います。日本は中国を奇襲し、先に兵力を削ぎます。これをあなたにやってもらいたいのです。」
「それは皆殺しってこと?」
「できたらの話ですが、中国は数が圧倒的に多いですので。」
「それで具体的な場所はどこ?」
「軍事施設や魔法訓練所などです。」
「などってことは複数やるってこと?」
「はい。あなたなら、できるでしょう。」
「え、私一人でやるの?」
「ええ、それとこれ軍の服です。どうぞ。」
国防軍の軍服を渡され、そして総長は立ちあがった。
「神城結衣。あなたに中国要所奇襲の任を命ずる。健闘を祈る。」
敬礼をしたので、私も慌てて立ち上がり敬礼した。
とりあえず、ドイツと同盟を組んでいる限りはアンと戦うことはなさそうだ。そして、作戦を無視して謀反なんてしたら日本だけでなく、協会に恨まれてまた世界を相手にすることになりそうだから、心を鬼にして私は日本の兵器となることにした。これから犠牲になる人たちへ、ごめんなさい、今のうちに謝ります。そして、なるべくはやく死ぬように努力します。
世界大戦は目前に迫り、その引き金となるのは私であった。




