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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第二章】世界大戦編 ユイサイド
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第二章10話 『世界の傾倒』

 総司のところへ行くと、総司が早速話しかけてきた。


「ちょっといいか。協会のことで情報が入った。」

「え?どうやってそんな情報を手に入れたの?」

「プライマリーには一流スパイがいるからな。まあいいから、隣に座れよ。」


 トントンと叩いたところに木に寄りかかるように体育座りで座る。


「それでだ、協会は今、次々と魔法使いたちをそれぞれの母国の軍へ配属させている。恐らく理事会員以外の全ての魔法使いを導入するかもしれない。そして、お前への指示もそのうち来るだろう。そしたら日本に行くことになる。」

「ちょっと待って。アンはどうするの?それになんで日本?私は日本出身じゃないよ。」

「それについては、この世界ではすでに結衣のいた国のことは歴史やみんなの記憶から消えている。そして、ここに存在する結衣の存在の辻褄を合わせるために同じ言語で最も影響を受けていた日本に結衣の籍を置くこととなった。これは前にエマから聞いた話だぞ。覚えているだろ?」

「確かにそんな話を聞いた気がするけど、色んなことがありすぎてあまり覚えていない。」

「まあ、理由はそんなところだ。そして、アンについてはアンもまた軍に徴兵されるだろう。今ここで魔法の練習をしているのはこのためだっただろうからな。」

「でも、アンはたぶん絶対に負けないと思う。」

「そうか、なら結衣はもし、アンと戦場で戦うことになったらどうする?」

「・・・逃げる。」

「そうか、まあそうならないことを祈るんだな。」

「そう言えば世界って今どうなってるの?日本って戦争とかしない国じゃなかった?」

「なるほど、じゃあそれらも込みで説明しとくか。」


 総司は世界情勢について語り始めた。


 世界は今、温暖化や異常気象によって食糧危機にある。すでに貧しい国々では紛争が絶え間なく日々行われている。それに対してそれなりに経済力のある国はなんとか技術を使って存命している。しかし、資源は有限、土壌も荒廃し始める。何よりも経済がもう発展しない状態なので国民の不満も溜まっている。その不満を国外にぶつけようとしているのだという。各国は新兵器開発を争い、禁じ手であった魔法にも手を出した。もはや世界は戦争を免れようのないところまできている。世界の一二争うアメリカは宇宙開発、その技術を軍事利用し、さらにもう既に魔法使いたちの部隊も創設し、魔法による攻撃の訓練や魔法に対しての防戦訓練などをしている。もちろん、インターネットなどを使った情報網も抑えて各国の情報を収集している。

 一方、アメリカ同等の力を有する中国は、兵器の大量生産と大量の兵士の育成、さらには普通の兵士に魔法まで教えている。そして、徴兵制を導入し、全ての国民に戦闘訓練を実施しようと取り組んでいる。

 ロシアの場合は広大な土地を使って大型兵器を開発中だという。他には情報における規制が多くてほとんど外部に漏れていないようで、謎に包まれている。

 中東ではサウジアラビアを筆頭にアラブ諸国が結束して、作物を工場栽培し、食糧を確保しつつ、宇宙開発が進められている。どうやら地球を出て他の惑星に移住する計画をしているらしい。

 アフリカでは砂漠化が深刻化して移住する人が絶えない。だがそれを阻止しようとするものが武装して混乱が起きている。

 東南アジアとオーストラリアは互いに手を組み、水没した島国も多く、移住者を受け入れている。海面上昇で広くなった海洋上で人工島を建設している。もちろん兵器も開発、生産し戦争に備えている。その人工島は要塞の役割を成し、温暖化だけでなく、戦争の脅威からも逃れられるようにしているらしい。

 南アメリカ大陸では犯罪が多発し、マフィアが統治しているとの情報がある。政府は消滅し、各マフィアの縄張り争いで争乱となっている。

 インドは独特な方法をとっている。仏教やヒンドゥー教などの宗教的な力、魔法によって成り立ち、広く魔法という力が使われている。今のところ争いごとのようなことは起こっておらず、戦争に対しても準備はしていないようだ。その理由としては仏や神がインドを守ってくれるということらしい。

 ヨーロッパはというと、古代や中世のような力関係が強まり、南の地中海沿岸はローマ帝国となり、フランスは今の形をとどめ、イギリスはアイスランドなどを合併し、ドイツは東西に勢力を伸ばした。北欧の国々はバルト三国とともに手を組み、中立的立場をとっている。また、ロシア、イギリス、ドイツによる侵攻を恐れ、警戒を強めている。そして、各勢力で魔法部隊を創設、アメリカ同様に軍兵器とともに魔法で対抗するつもりだ。

 そして、日本は第二次世界大戦のときのように外部を侵略しないことを周辺諸国と約束し、日本国防軍を創設した。さらに、韓国、北朝鮮、台湾と共同軍事訓練を行い、東アジアにおける空域と海域を共に守ることを決めている。在日米軍を沖縄の基地を除いて追い出すことに成功し、軍事での独立をほぼ果たした。また日本でも魔法使いの育成に力を入れ、魔法学校まで創設した。それとは別に軍学校も創設、さらに兵器開発のための国立機関を創設、企業の参加を補助金で促し、軍事力増強を図っている。また、自給自足をするために作物栽培工場を各地に増やした。自然の力や資源を最大限に利用できる技術を用いる。大戦での敗戦で得た反省を活かした日本はもはや世界有数の軍事大国となった。


 といったところで総司の説明は終わった。


「言えるのは、魔法と現代の技術が混じった世界大戦はカオスになる、というところだ。さて、そろそろ戻らないとアンがご飯でも作って待ってるんじゃないか。」

「ああ、そうだね。いろいろと教えてくれてありがとう。またね。」

「別に今ここで別れなくてもいいんだぞ。」

「一人で帰れるからいいの。じゃあね。」


 総司に背を向けて屋敷へと向かった。

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