第二章6話 『突入』
さて、その時がきた。私とアンはこれからアンの両親を探しにとあるドイツ軍基地に行く。バイエルンにあるドッグルストルン基地というところにアンの両親がいる可能性があると分かっていた。ドッグルストルン基地は大戦時に造られていた基地だが、完成せずに終戦を迎えたところらしい。現在は廃墟となっているはずだが、どうやらドイツ軍が密かに使用しているらしい。私たちはそのいかにも怪しいところに転移した。
ゲートにはもちろん監視となる兵士がいた。その兵士にすでに見つかってしまっていたため、私は話しかけてみた。
「あの、私たちは魔法協会の者です。ここにこの子の両親がいると聞いたのでここを通してください。」
「残念ながら関係者以外立ち入り禁止だ。帰りな。」
当然ながらこうなる。しかし、私は問う。
「では、ここにこの子の両親はいるんですか?」
「いない。」
「じゃあここは何をしてるんですか?」
「ここは軍の基地だ。訓練や装備の開発をしている。それ以上は機密だ。」
『装備の開発』ね。この兵士は何かを隠している。予測魔法による分析でわかる。そもそも機密があると言っている時点で隠していることは確かか。
「開発って何か実験でもしてるの?」
「軍事秘密だ。帰る気がないなら拘束するぞ。」
「私を脅すつもり?」
「寝てもらうぞ。」
兵士は私を気絶させようと襲ってきた。でも、途端にアウェイで弾き飛ばす。もう一人いた兵士が警報を鳴らし、応戦してくる。でもこれもアウェイで弾く。2人が飛んでいった先にゲートがあるが、その衝撃だけではビクともしなかった。
「アクティベーション。」
魔力を展開させ、剣を握る。
「五月両剣!」
剣を縦に振ってゲートを斬り割ろうとしたが、歯が立たなかった。じゃあこれはどう?
「アステカの創造神テスカトリポカよ、悪魔と化し、あらゆるものを無へ還せ、リバース!」
黒い塊はゲートの中央部を大きくえぐり取り、飲み込んで消えた。そのゲートの断面を見るとかなりの厚さだった。
「アン、私から絶対に離れないでね。行くよ。」
そして、アンの手を握り、走り出す。ゲートの先にさらに洞窟のような地下にある基地に入るためのゲートがあった。大きなゲートだが、人が出入りするための下の真ん中に扉があった。あらかじめ予測魔法で分析すると、もちろん頑丈にロックされていたので、走っている勢いを利用して、バーストでこれを破壊する。そして、中に入った瞬間に状況が一変した。
多くの兵士が銃を構えて待っていた。突然止まれやしないので、仕方なく予測魔法で弾丸の軌道を読み、当たりそうなものだけを剣で排除する。予測魔法によると、この通路の半分のところに横に通路がある。そこにいけば弾に当たらずに一休みできる。でも、その片側に敵兵は潜伏している。ということは、そこの敵兵をまずは倒さないといけない。
「アン!この先の通路を右に曲がるからそしたら連続でショットを打って。私は先行して敵を倒すから!」
「はい、わかりました!」
そして、角を曲がる。すぐにアンの手をはなし、高速魔法で敵を倒しに行く。アンは言ったとおりにショットを打ちまくっていた。私はそのアンが放つショットもよけつつ、そこにいる敵兵を倒した。その直後に予測魔法が私に危険を知らせた。突入時に攻撃を奥でしていた部隊がもう背後に迫ってきていた。袋小路で逃げ場はない。敵はこっちに何かを投げてきた。それは催眠ガスだった。でも、すぐに高速魔法でアンの背後にまわり、相手を無力化していく。それから、二人分のシールドをかけて催眠ガスを防いだ。一息ついてから、敵兵が持っていた銃を分析してみると、それは麻酔銃だった。
「催眠ガスに麻酔銃を使ってくるってことは敵は私たちを生け捕りにするつもりね。麻酔銃とか普通の銃弾よりもたちが悪い。当たれば痛みに耐えたとしても眠ってしまったら終わり。だからアン、絶対に当たらないようにしよう。当たったら最後、目覚めた後に何をされるかわからない。きっと地獄が待っている。」
「はい。気を付けます。」
「よし、行こう。通路の奥に下にさがる階段がある。でも、慎重に降りるよ。」
私たちは階段をゆっくりと降りていく、下のフロアが見え始めた頃に予測魔法で敵を察知する。さっきよりも数が多い。この人数を殺さずにしかもアンを守りながら行くのは難しい。
「なら俺が相手をしよう。」
振り返ると総司が立っていた。
「なんでまた勝手に。」
「いいから、俺がやつらを引き付け、道をあける。おまえたちは何も考えずにここを突破しろ。行くぞ!」
総司は勝手に階段を降り、交戦を始めた。ここは総司に任せて私はアンと手をつないで突っ走った。寄ってくる敵は総司の攻撃によっておさえられる。気にせずに突き当りまで走った。そしてそこにあったドアを開けて部屋に入ると、すぐにドアを閉めた。するとすぐにドアの向こうから衝撃と音が伝わってきて静かになった。どうなったのか気になるけど、ここはアンもいることだしやめておいて前を向いた。その部屋は地下2階と地下3階とでなる巨大な部屋だった。その地下2階から見下ろすと、そこに巨大な機械があって、その機械につながっている椅子二つに2人の人間がもたれかかっていた。