第二章5話 『基礎訓練』
アンの魔法の特訓が始まって一週間が経とうとしていた。葵はアンに基本から順に教えていた。その間、正直言って私は暇だった。けれども、アンに魔法を教えることが、アンが魔法を使えるようになることが私の協会から課せられた任務であるため他人任せすることもできないので、とりあえずアンといっしょに魔法の特訓をしていた。私は魔法をここまでちゃんと教えられたこともなかったし、基本的な特訓はあまりしたことがなかった。実践的な演習はやったことがあるんだけど。そして今日は基礎魔法の総復習の日だった。これでアンが問題なく基礎魔法が使いこなせたなら第一段階がクリアされる。いわばテストの日である。
「それじゃあアン、好きな順番でいいからやってみせて。審査員はこの私、三笠葵と結衣ちゃんでーす。それでは私たちは見てるからどうぞ!」
私たち二人はアンから少し距離をとったところで様子をうかがう。アンは張り切っているようだった。
「それではいきましゅ。フィールド!」
まずアンがとったのは集中力の上昇と防御や攻撃の強化。これは一般的な方法、魔法社会の戦闘では常識と言っていい手順の最初の動作だ。
「フロート!」
次に自分自身に魔法をかけて宙を舞う。
「アウェイ!」
空気中に対してアウェイを放ち、素早く移動できる。これは敵の攻撃を緊急回避するのによく使われる。もちろん、それ以外に物を吹き飛ばすことができる。
「スター!」
スターは指先に魔力を少し溜めてからピンポン玉の大きさの光を放つ。
「それから、ショット!」
ショットはそのままの意味通りに撃つ魔法。アンは見事にスターで放った小さい光をショットで撃ち放った。
「スパーク!」
スパークはスターの応用で一瞬光を放って敵の目を眩ませる。でも、自分の目も眩んでしまうことがあるので注意が必要だ。
「バースト!」
バーストは物を破壊する基礎魔法。簡単な物ならこれで壊せる。でも、アンは転がっていた石を砕こうしたみたいだけど失敗したようだった。
「最後は、リリース!」
リリースは体内にある魔力を体外へ放つ。防御にも使えるし、攻撃にも使えたりする。でも、加減を間違えると魔力がなくなって大変なことになる。アンは上手くできたようだった。
「おつかれ、アン。」
葵がアンのもとに行くと、アンはフロートを解除して地に降りる。
「どうでしたか?」
アンは評価が気になっている様子。
「焦らずとも審査の結果はちゃんと言うから。では、審査員の結衣ちゃんからどうぞ。」
「え、私から?まあ、だいたいはできてたと思う。」
「そうそう。だって私が教えたからね。ちなみに私からは、おめでとう。これで君も魔法使いの一員だ。基礎魔法を使って自分を守っていってね。・・・てことで。合格だよ。」
「ありがとうございます。今日はパーティーですね。」
「うんうん。」
試験合格に素直に喜んでいるアンとハイテンションな葵は、はしゃぎあっていた。
そして、その日の昼から夜にかけて3人でお祝いの食事会が行われたのだった。
翌日。私はアンの次のステップの特訓が始まる前に密かにある人たちを呼び出した。一人はプライマリーの情報部隊長であった山崎香耶であり、あとは総司と織田山門である。3人には密かにアンの両親について調べてもらうことにした。何か手がかりがつかめ次第、行動するつもりでいた。それまでにアンの魔法を少しでも上達させなくては。
葵にもそのようなことを説明しておき、急ピッチでアンへのレクチャーを進ませた。
そして、2、3日も後に3人の下調べは終わった。アンにも両親の捜索を始めることを話した。アンはどんなことがあっても両親と再会することを覚悟していた。2日後に行動をすると決めて、私たちは準備を始めた。




