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エンドレス・マジカルライフ  作者: 沖田一文
【第二章】世界大戦編 ユイサイド
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第二章4話 『お世話役』

 夜が明けて、朝日が窓から差し込む頃に起きる。着替えてリビングに向かうと、ちょうどインターホンが鳴った。その足で玄関に行き、ドアを開ける。そこにいたのは私と同じくらい、じゃなくて私よりも背が低い協会の制服を着た女の子が段ボールを重たそうに持って立っていた。


「あの、生活物資を届けに参りました。私、わあああ、落ちるぅ。」


 ついに重さに耐えきれなくなったのか段ボールが彼女の手から離れ落ちるところを、かろうじて私が魔法を使って阻止した。それをそのままゆっくり地面に置く。


「すみません。あの、それで私は協会からあなた様のお世話役を任じぇられました、アンと申します。これからお願いします。」


 ちょっと発音に問題があるけれど、きっと日本語を頑張って覚えたのだろう。ただ彼女は金髪だけどそんなに外国人ぽくないというかどこか日本人ぽいところがある。


「アン?」

「はい、私は母がドイツで父が日本人です。日本語名だと三宅あん、です。」

「なるほどー。世界で通じる名前だね。あ、私は。」

「はい存じております。協会の特別将軍であられる神城結衣様。」

「特別将軍?」

「スペシャル・ジェネラル、単純に訳したのですが違ってましたか?」

「いや、そんな話聞いてないけど。」

「あ!どうしよう、これは機密事項でした。特にまだご本人には内密にと・・・。」


 アンは私を見つめて少し黙る。


「今のことは忘れてください。全部です。」

「忘れるって言っても。」

「忘れましたか?」

「はい?」

「よかった。これで大変な事態は避けられました。・・・はっ、あの、私は協会からあなた様の。」

「わかってる。三宅アン。よろしく。」

「はわ、なぜに私の名前を。やはりあなた様は特別な、すごい人なんですね。」

「いやいや、さっき聞いたから。あと、私のことは結衣でいいよ。」

「なんと!特別な将軍様にそのような馴れ馴れしいことはできません。」

「あのー、わざとなの?もうわかったからね、私がスペシャル・ジェネラルだってことは。」

「はわ、そのようなことまでご存じで。やはりあなた様は・・・。」

「もういいから。それであそこに積んである段ボールを全部運べばいいのね?」

「あれは私がやりますので。」

「大丈夫、魔法を使えばすぐだから。」


 段ボールの下に魔法陣を描き、一瞬で屋敷の中に入れた。


「わあすごい。やはりあなた様は。」


 私はアンを手で静止させて、念押しをする。


「私は、()()。結衣って呼んで。」

「わかりました。将軍、じゃなくて結衣。」


 どうやら彼女はわざとやってるのではなくこれが素のようだ。つまりは天然。どうしてこんな子がお世話役になったのか。そんなことは追及せずにまずはこの段ボール箱の山を開けることにしよう。


「さっそく、この箱を開けましょう、アン。」

「はい。」


 私たちは二人で小さいながらも、いや小柄ながらも重たい段ボール箱を開けてものを取り出しつつ、それを適切な場所へと置く、という作業を繰り返した。そこで気になることが一つあった。


「なんか私一人分にしては量が多いような。」

「ああそれは私もここで暮らすので2人分ですよ。」

「何!?ここに?」

「はい。私は結衣のお世話役ですから。ここで一緒に住むのは当然のことです。」


 もしかしてこれは協会による監視も含めているのか。とてもそのようには見えないけれど、見た目だけで判断しちゃいけないってことね。きっとアンはいざという時の私の歯止め役になるに違いない。


「あと一時間くらいで終わりそうですね。そしたらお昼にしましょう。」

「ああ、うん。でも私何も作れないから、どこかで買って・・・。」

「大丈夫です。私はお世話役ですから、お料理はお任しぇください。」

「おお、ありがとう。」


 この子料理もできるなんてやはり天然ってなりをした凄腕なんじゃ。


「結衣。終わりましたか?」

「ああ、まだ終わってない。ごめんごめん、ちゃんとやります。」

「?」


 そこから無言で作業を続け、一時間以内に終えることができた。そのあと、アンはキッチンに立ち、調理をし始めた。しばらくしてご飯ができたというので、リビングのソファで待機していた私はダイニングに向かう。そこには短時間ながらもしっかりと多彩な料理が並べられていた。


「今日は時間がなかったのであまり栄養バランスに気を遣えませんでしたが、どうぞご賞味ください。」

「いただきます。」


 まずは一口食べる。


「どうですか?」

「うん、おいしい。こうやって作ってもらったのって久しぶり。」

「そうですか。では私もいただきます。」


 昼食という本日初めてのご飯をおなかいっぱい食べた。そのあと、アンが食器を洗い終えると、重要な話があるというのでリビングでそれが話された。


「実は、私がここに住むというにはお世話役以外にもありまして、それがえっと、実は私は魔法がまだうまく使えないのです。それで、結衣に教えてもらえ、と協会から言われて、つまり、結衣の任務として私の魔法の先生になるということでして。」

「私が魔法の先生?ということは、私に弟子入りするってこと?」

「はい。私の両親は二人とも魔法使いなのですが、実は半年前くらいに行方不明になりまして、それで身寄りのない私をここに合わせたのです。そして、協会は私という問題と結衣という厄介者を一緒にさせて様子を見るとのことです。」


 そんなことを平気でいうのね。てことはこの子はやっぱりただの天然なのか。


「事情はなんとなくわかった。アンの魔法の特訓については協会からの任務だから何とかする。けど、問題なのはアンの両親の行方について。これについて何か知ってることはあるの?」

「はい。わかってることは、今もなお捜索中ということだけです。」

「捜索中ね。協会は何かを隠してるようだね。」

「はい。私もそのように思っております。」

「まあ、元気を出して。私がアンの魔法を開花させて、うまく魔法を使えるようになったら、一緒に両親を探しそう。」

「は、はい!がんばります。」

「ところでアンは学校に行かなくて大丈夫なの?アンっていくつ?」

「私は12歳、今年で13になりますが、高校までの基礎科目は小学の頃に勉強しましたのでご心配なく。」

「アンって知識的にはいいのね。」

「はい?」

「んーん。なんでもない。さっそくだけど、アンの魔法を見せてちょうだい。念のため外でね。」

「わかりました。お手柔らかにお願いします。」


 屋敷の広い庭の真ん中にやってきた。正直、私が魔法を教えるのは厳しい。だからここは私にいろいろと魔法を教えてくれた人に見てもらうことにした。私は手を前に出して唱えた。


「お願い、来て、葵!」


 前方に魔法陣が現れ、白い光の中から人影が現れた。私はその人を驚いているアンに紹介した。


「こちらは葵。私に魔法について教えてくれた人だよ。葵、こちらがアン。アンに魔法を教えてほしいの。」

「結衣ちゃんのお願いだからね。まかせて。どうも私が葵です。よろしく~。」


 軽いノリであいさつする葵に対してアンは礼儀正しくあいさつした。


「三宅アンと申します。葵さんよろしくお願いします。」

「うんうん。結衣ちゃんに負けず劣らずのかわいらしさだね。アンちゃん、私の子にならない?」

「え、ええっと・・・。」

「葵。変なこと言わないで。アンが困ってるから。あと葵のノリは私もいつも困ってるの。」

「あらごめんね。」

「あの、葵さん。」

「なあに?」

「結衣のお師匠さんって本当ですか?」

「ん?まあそうだよ。結衣ちゃんに魔法を教えたのはこの私。だから安心してアンちゃんもきっとすぐに魔法を使えるようになるわよ。」

「わはぁ。よろしくお願いします。」


 こうして、アンの魔法の特訓は始まった。

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