意外な(?)転校生
波乱のクラス替えから2週間がたち、浮き足立っていた教室内がだんだんと落ち着いてきていた。
休み時間は相変わらず山谷と過ごしていたが、去年と違う点がある。そう、司彩だ。
山谷と司彩はすぐに打ち解けてしまった。理由は明白。好きなアニメとキャラが一致したから。こういうとき、趣味ってすごいなぁって思う。同じ趣味を持つもの同士は距離を縮めやすいものだ。
おかげで俺は充実した休み時間を過ごしている。教室の中心では運動部の連中が楽しそうにはしゃぎ、その他は数人のグループを作ってひっそりと過ごす。よくある高校の風景。
カナとまごめは女子の中心グループにいるため俺たちの方にはあまりやってこない。お昼の時間を除いて。
例年通りお昼休みになるとカナとまごめが机ではさんでくるのだが、今年はそこに司彩も参戦。結果として4つの机が連結されることとなった。
ここ2週間で司彩が改めてすごいやつだということがわかった。まごめはいいとしても、あの手強いカナですら手玉にとっているのだ。司彩さんマジパネェっす。そして山谷ほんとすまん。うらめしそうな顔しないでおくれ。
「タカト、今日は浮海さんが作ったお弁当か。幼なじみからの手作り弁当とか贅沢すぎる。ギャルゲーの主人公みたいだ」
「昔からだからもう慣れちゃってるけど、よく考えたらありがたいことだなぁ。俺もまごめも料理できないし」
「ふーんだ、どうせあたしは料理ベタですよーっだ!」
まごめがすねてしまった。昔からカナの料理の上手さにコンプレックス抱いてるっぽいんだよな。
「いいんだよ、みーくんもまごちゃんも料理できなくて。これからもわたしが作ってあげるから~」
「タカト、聞いたか。浮海さんが今プロポーズしたぞ。ひゅーひゅー」
「なっ!? そ、そういう意味じゃないから! つーちゃん何てこと言うの!」
蛍のときといいなんでこんなに早く打ち解けられるんだ。いや表面的なものかもしれないけど、そうだとしてもすごいぞ。カナやまごめはコミュ力高いが、まさか友達が俺以外いない司彩がここまで普通に会話できているとは。まさか司彩のやつ今まであえて友達作らなかっただけなんじゃなかろうか。
と、こんな風に何気ない日常が過ぎて行き、新学期がはじまってから3週間目。
担任のおばちゃん(名字が小馬なだけでお若い先生)が朝のHRをたどたどしく行っていた。
俺は次の授業のことを考えながら連絡事項を聞き流していたため、クラス中が騒がしくなるほどの連絡を聞きのがしてしまった。
そこかしこでマジで、とかうっそ~とかの言葉が飛び交っている。
なんだ。なにがあったんだ。
その疑問はおばちゃんの発言によって即座に解決されることとなる。
「それでは転校生さん、入ってきてくださぁい」
なるほど、みんなが騒いでいた理由はこれか。こんな時期に転校生とか珍しいな。新学期がはじまってまだ3週間しかたっていないこの時期に。
だが、悪くない。悪くないぞこのイベントは。
2次元時空において転校生は重要な役割を持っていることが多い。学校外で出会った特殊な力を持つ美少女だったりとか、意味深なことばかり言う謎のイケメンとか、主人公、またはヒロインを狙うスパイとか。突然新しいキャラを登場させることができるし、既存のキャラの主人公との関係を『同じ学校に通う同級生』にガラリと変えることができる。
わかっている。ここはマンガやゲームの世界じゃない。でもやっぱり期待してしまう。転校生が自分のクラスに来るなんてことはマレだ。それだけで非日常と言っても過言ではない。
頼む、美少女こい! 最悪もうイケメンキャラでもいいやオタクなら!
べ、べつにワクワクとかしてねぇしぃという雰囲気をバリバリだしながら、固唾をのんで教室の入り口を見つめる。
ドクン。ドクン。心臓の音がやけに騒がしい。ああ早く入ってきてくださいお願いします。
数秒後、ついに教室のドアがひかえめに開かれる。
あれだけ騒がしかった教室が一気に静まりかえった。
なぜなら、転校生がとんでもない美少女だったからだ。
まず目をひくのは、後ろで1つにまとめられたナチュラルブラウンの髪。日光をはじいてキラキラと輝いている。
涼しげな目元に、髪の色と同じ茶色の瞳。
同学年の女子と比べてやや大きめの胸部に、健康的なふともも。
まとう雰囲気はまるで武人のような……って。
「蛍じゃねえか!」




