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嵐を呼ぶ席替え 前編

 どこからどう見ても俺の居合道仲間かつ幼なじみの切通蛍だった。返してくれ俺のドキワクを。新キャラ追加かと思ったら幼なじみでした~とかあんまりだ。もしこれがギャルゲーだったら即電源を落としていたところですよ。


「あれぇ、高村くんのお知り合いでしたかぁ? 学校案内は学級委員さんにお任せしようと思ってたんですけど、高村くんにお願いした方がよさそうですね~。では、自己紹介をお願いします」


 しまった、驚きすぎてつい席を立ってしまった。そろそろクラスにもとけ込めてきたかなってときにこの悪目立ちはよろしくない。カナとか司彩とかのせいで手遅れ感はあるけども。

 蛍は事前にクラス名簿を渡されていたのか、俺の姿を目にしても特に驚いた様子はなかった。そのかわり、こちらをチラチラと恥ずかしそうに見てくるという不可解な行動をとっていた。

 今は自己紹介に集中するためか、背筋をのばし目線は正面を向いている。


「今日からこのクラスで世話になる切通蛍だ。このような妙な時期での転校だが、どうかよろしく頼む。余談だが、うちは居合道という武道の道場を開いている。興味のある者はぜひ声をかけてほしい。以上」


 教室に蛍の、凛とよく通る声が響く。

 最初はポカンと呆けていたクラスメイトたちだが、波紋のごとく個々人の反応が広がっていき、再び教室が喧噪に包まれる。

 美人さんだ~、かっこいい! 居合道ってなんだろう、お近づきになりたい、太ももがエロいなどさまざまな声が飛び交う。おい最後のやつ誰だそんなの聞かれたら蛍に斬り刻まれるぞ。

 ばっちりインパクトが残る自己紹介が終わったところで、盛り上がりの冷めない生徒たちにおばちゃんが声を張る。


「はいみなさん静かに! ちょうどいい機会なので、このまま席替えをしましょう。ずっと出席番号順っていうのもつまらないですしね。クジは作ってあるので、順番に取りに来てくださぁい」


 席替え。それは高校生、いや学生にとってのビッグイベントである。クラス替えと同じく今後の学生生活を左右するためいっときたりとも気が抜けない。ただ運を天に任せるだけなんだけどね。

 しっかし蛍のやつ、うちに転入してくるなら事前に言っといてくれればいいのに。びっくりさせたかったとかの理由で知らせなかったのだろう。あいつは昔からそういうところがあるからな。

 番号順で教卓の上にあるクジをひいていき、黒板に書かれている座席番号の位置におのおの机を移動させていく。


 俺は、窓際を1列目とすると2列目、後ろから2番目の席だった。まずは第一目標、後ろの方の席の確保、成功。

 次は第二目標、山谷と司彩の近くの席になること。

 俺は真っ先に机を移動させたため、あとは待つのみ。

 と、俺の左となりにすさまじい勢いで机を移動させてくる影を確認。


「みーくん、おとなりさんだね」


 またカナか。こいつとは同じクラスになることがほとんどな上に、なぜか席も近くになるんだよな。腐れ縁ってやつだろうか。

 俺はもうカナが近くにいることに慣れきっているため、そろそろ離れてもいいだろうとうんざりしてるのに、カナはなぜか鼻歌なんか歌って嬉しそうにしている。俺の近くにいて何が楽しいんだか。

 続いて俺の目の前に、おずおずと蛍が現れる。


「ふむ、ミナトの前の席か。後ろからいたずらとかはダメだぞ?」

「しないしない」


 蛍は反応が面白いから多分する。


「しかし転入してすぐミナトと同じクラスで、なおかつこんな近い席になれるとはな。素直に嬉しいぞ」

「そうだ、なんで先に転入すること教えてくれなかったんだよ。びっくりした」

「ふふふ、ドッキリ成功だな」

「なんでこんな微妙な時期に転校してきたんだ?」


 俺がそう聞くと蛍は気まずそうに目を泳がしながら、しどろもどろに答えた。


「いやな、私が通っていた風見鶏高校は私立なんだが、学費がな。家計的に厳しくて家から通えてなおかつ学費の安い県立高校に転入するしかなかったのだ。その手続きが長引いてこんな時期になってしまった」

「そうか……。変なこと聞いて悪かったな。でも、ここなら俺もいるし、知り合ったばかりだろうけど、カナやまごめもいるから他のとこより少しは安心していいんじゃないか。わからないこととか困ったことがあったら何でも言ってくれ」

「ふ、ふん。私は元からミナト、お前を頼るつもりだったぞ。なんだかんだいって面倒見いいし、幼なじみだし」

「幼なじみとかいう言葉を口にするな。頭痛がする」

「そうだったな、すまない。とにかく私が言いたいことはあれだ、お前と同じクラス、近い席になれたのは運がよかった、ということだ。これからよろしく頼むぞ」

「こちらこそ。同じ学校ってことは稽古日は一緒に帰ることになるだろうし」

「はうっ!? ほ、放課後にミナトとふふふふたりきりで帰宅、だと……ゴクリ」

「何をテンパってんだお前は。いまさらだろ」

「わかってないなミナト。シチュエーションが大事なんだ。私とお前が同じ学校になったのは今回がはじめてだろう? 同じ学校に通い、制服を着てともに帰る。それが大事なのだ」

「2次元にあてはめれば理解できそうな気がする」


 と、雑談していたらガタガタとうるさく音を出しながら机を移動させてくる人物が近くにきた。誰だよ迷惑だな。

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