クラス分け
ハァハァと荒い呼吸をしながら、はりだされたクラス名簿の前に立つ。周りからの視線は言わずもがな。そんなもの気にしてられるか。こっちは今後1年間の高校生活がかかってるんだ。
まずは自分の名前を探す。1組から順に、ってもう見つけてしまった。2年1組だ。
1組の下の方……よっし、山谷発見。これでひとまず安心できる。
問題は幼なじみーズだ。うぅ、幼なじみ、心の中で言っても若干のダメージが。最近は幼なじみ属性もちのキャラが必ずと言っていいほどでてくるため非常に困る。今この話は関係ないか。
まあ、もうまごめが同じクラスなのはわかってるんだけどね。自分の名前のすぐ上にあるんだもん。
意を決して上の方を見る。
はい、案の定ありました。『浮海彼方』、どこからどうみてもカナである。まーた同じクラスだ。どうなってるんだよいつも思うけどおかしいだろ。8年間一緒だぞ8年間。
淡い期待は打ち砕かれたが、ある程度覚悟していたからかすんなり受け入れられた。あと気になるのは1人。
カナの名前から徐々に視線を下げていく。
今年は、今年はどうだ。いつも一緒になるカナとは対極の存在、今まで2回しか同じクラスになったことのないあの人物。
浮海、江間、大野、甲斐。
きた。きたぞ! 『甲斐司彩』、確かにある!
信じられない。以前フラグをたてたような気がするけど、それが功を奏したのかもしれない。まさか本当に同じクラスになるとは。
俺、カナ、まごめ、そして司彩。一度にそろうのははじめてだ。今後どうなるか想像もつかない。
そこで俺ははたと思い出した。カナとまごめに、司彩は男だとウソをついていたことを。
司彩にも、一緒のクラスになったらもっと雑談とかしようぜって言っちゃってるし、今さら他人のフリをしてくれ、なんて言えない。
おわった。完全におわった。
そんなときに、肩をトントンと叩かれる。
ビックぅと大げさに驚く俺。だってタイミングがよすぎるんだもの誰だ一体。
おそるおそる振り向くと、そこには長髪をたずさえた女子生徒がいた。
「ん? あれ? お前、司彩か?」
よくよく目をこらしてようやくわかった。中性的で整った容姿にやや気だるげな雰囲気。いつもスウェット姿しか見ていなかったのと、随分と制服姿を見ていなかったせいで一瞬誰かわからなかった。中学の時よりまた一段と大人っぽくなっていて、ほんのちょびっとだけドキッとした。服装の効果ってすごいね、うん。
「見間違えるなんてヒドいなタカト。しかし今はそんなことどうでもいい。今日は記念すべき日だ! 本当に同じクラスになれた!」
あの普段はクールな(ゲームや2次元キャラで興奮しているときは除く)司彩が俺の手をがっしりつかんでブンブン振り回している。
司彩ファンクラブのやつらの視線がビシビシ突き刺さっているような気がするが今は気にならない。だって俺もめちゃめちゃ嬉しいんだから。
カナやまごめにしっかり説明すれば半ご○しくらいですむだろう。その後は、俺の夢にまでみた山谷、司彩との充実オタクスクールライフが待っている!
ルンルンルンと某アルプスの少女ハ○ジのごとく踊っていたら、後ろから肩をトントンと叩かれる。
無粋なやつだ。誰だいったい。今俺は幸せをかみしめてるところだというのに。
「楽しそうだねぇみーくん。わたしとも1曲踊ってくれないかなぁ」
「そのあとはあたしね。楽しくデスマーチしよ?」
まごめさん、デスマーチって死の行進で踊りの種類じゃないからね? 意味は合ってるかもしれないけども。
激しく振り返りたくない。振り返ったら確実にヤられる。さっき半○ろしですむだろう、とか言ったがその程度じゃすまないような気がしてきた。へへ、久しぶりだぜ、ここまで濃い暗黒オーラを感じるのは。
しかしここで無視を決め込んだらマジで命が危ない。こうなったら土下座でもなんでもするしかない。
意を決して振り返ろうとしたら、司彩に先をこされた。
「それはできない相談だね。タカトはボクが来世まで予約済みだ。今世での予約は諦めてくれたまえ」
さわやかな笑顔でそう言い切る司彩。かっこいい。王子さまみたいなセリフだ。でもね、その言葉、俺にとっては爆弾でしかないんだ。だってほら、あの2人もうマンガみたいな青筋たてちゃってるよ。
「な、なんの権利があってにいちゃんを独占しようとしているんですかね!」
まごめが吠えた。ちっこいまごめと比較的背が高めな司彩じゃチワワとドーベルマンにしか見えない。
「おっと、妹さんだったんだね。すると隣りにいる子はタカトの幼なじみさんか。これは失礼なことを言ってしまった。すまない」
「謝る前ににいちゃんとつないでる手、離してもらいたいんですけど」
「了解した」
そう言って手を離し、そのまま流れるような動作で自然に腕を組む司彩さん。
こ、この体勢はマズい。司彩のムダに大きな、その、胸が腕に当たって。
司彩の方を見ると、まるで神ゲーを前にしたときのような表情をしている。
「きぃやぁ! カナちゃんさん、見ました!? にいちゃん、胸を押しあてられてデレデレしてますよ!」
「わ、わたしたちが腕を組んでもこんな反応しないのはなんでだろうね~。わたしまったくこれっぽっちもわからないなぁ教えてくれないかなぁみーーーーくんっ?」
勘弁してくださいよホント。いつの間にか俺がロックオンされてるし、司彩は司彩でこの状況楽しんでるっぽいし。
「すみません、説明する時間をくださいお願いします」
その後10分くらい誠意をもって頼み込んだ結果、始業式のあとに話を聞いてくれることになりました。その間ずっと口を押さえて笑いをこらえていた司彩の処遇についてはのちのち考えよう。
戦々恐々としながら始業式を終え、教室に戻る。




