第36話 地形とギミック
「まず敵だ。ポコタに何をぶつける?」
ガルドの問いに、みんなでああでもないこうでもないと粘土をこねた。出来上がったのは、地面をのそのそ歩く小さな石の虫――岩虫。踏めば潰れる。触れれば弾かれる。単純だからこそ、避け方も踏み方も、遊ぶ側の腕次第になる。
「これだけだと単調だよね」フィリアが図面に線を足す。「羽が生えてて飛び跳ねる奴とか、甲羅みたいなので踏んでも平気な奴とか」
「甲羅は蹴り飛ばせるようにしよう。当たった別の敵を巻き込んで一掃できたら気持ちいい」
俺の提案に、ノワが目を輝かせた。「それ絶対悪用したくなるやつじゃん」
「悪用していい。それが狙いだ」
空を飛ぶ敵は、フィリアの案で羽虫にした。踏んでも弾かれるだけで倒せず、頭上から不意打ちしてくる。「これ、避け方覚えるまで絶対イラつくやつだ」とノワがぼやきながらも、俺は却下しなかった。少しの理不尽さは、乗り越えたときの快感の材料になる。度が過ぎない範囲で、なら。
地形にも仕掛けを足した。踏むと一段高く弾んでくれる弾み茸。踏み抜くと崩れる偽の足場。そして――大地に空いた根の道。中に飛び込むと、離れた場所に瞬間移動する古の抜け道だ。
「抜け道、か」とガルド。「言葉だけ聞くと、ずいぶん物騒だな」
「安心しろ、繋がる先は宝箱か次の足場くらいだ」
集める要素も欲しかった。ソルの村このかた馴染み深い、活気のメーターと繋げよう。道中に落ちている小さな魔石――活力の実を集めるほど、ポコタは一回り大きくなり、一発だけ被弾しても耐えられるようになる。
「大きくなったポコタ、かわいい」とリナ。「潰れたらどうなるの?」
「潰れても死なない。小さいポコタに戻るだけだ」
安全設計は、もう体に染みついた癖になっていた。幻影闘技のときと同じだ。負けても、失うのは前進の一部だけでいい。
最後に、ステージの終わりに立てる旗のついた門を描いた。触れればクリア。単純だけど、遠くにそれが見えた瞬間の「あと少しだ」という気持ちだけは、何度作っても色褪せない。
「マップ、いくつ作る?」とピコ。
「最初は平原、次に洞窟、次に……」
「山と、水の中もほしい」とテオ。「水の中は跳び方変わるとかっこいいよね」
水中でジャンプの重力を軽くする、という思いつきは、その場でみんなの目を輝かせた。地形が変わるたびに、岩虫の代わりに違う敵が出て、違う仕掛けが要る。作業量は〇×の比ではない。それでも誰も嫌な顔をしなかった。
「一個の板の中に、こんなに世界が詰め込めるんだな」
ガルドの呟きに、俺は頷いた。跳んで、集めて、崩れる足場を越えて、旗にたどり着く。ただそれだけの繰り返しが、こんなにも豊かになる。
(第37話へつづく)




