↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
28/47

第28話 量産、最初の壁

「――というわけで、まずは百台作ろう」


 俺の宣言に、工房が静まり返った。気まずい沈黙を破ったのは、フィリアだった。


「百台? ……ユウタ、一台にどれだけ時間かかってるか分かってる?」


 分かってなかった。数えてみて、俺は青くなった。共鳴回路を組めるのはフィリアだけ。駆動部の継手を寸分違わず仕上げられるのはガリンだけ。二人がかりで、一台に丸三日。


「百台なら……三百日?」


「一年近くかかるってことじゃん」とノワが即座に指摘する。ぐうの音も出ない。


 材料費も計算した。共鳴石は普通の魔石より純度が要る。仕入れ値をはじき出した瞬間、俺は電卓――もとい暗算を二回やり直した。


 【幻晶板一台あたりの想定価格】=平民区の子供の、半年分の小遣い


 これじゃ意味がない。遊ぶ時間がない子供に届けるための道具が、その子の家より高い買い物になってどうする。


「前世で散々見た地獄だ、これ」


 誰も突っ込んでこないから、俺は一人で肩を落とした。「初期投資が回収できるまで一台一台手作業でやります」なんて企画、会議に出した瞬間に突き返される。速さも、値段も、両方とも今のままじゃ話にならない。


「一人で全部やろうとするからだよ」


 ピコがあっさり言った。


「あたしらのマナカート、王都まで運ぶのに一台ずつ手作りしてたら、大会になんて間に合わないじゃん」


「……ガランドじゃ、違うやり方してんのか」


 ガリンが、そこで初めて何か思い出した顔をした。


「そういえば……儀式化した点検、あれの逆をやればいいのか」


「儀式化した、点検?」


「ああ。マナカートの整備、俺一人でやってるように見えて、実は工程がバラバラに分かれてる。魔石の充填は充填係、外殻は外殻係、最終確認は俺。……誰も、最初から最後まで一人じゃやってない」


 その言葉が、頭の奥で何かに繋がった。共鳴回路を組めるのはフィリアだけ。でも――共鳴回路の「一部分」だけなら、教えれば誰でもできるんじゃないか?


「フィリア。回路、分解できるか? 全部一人で組む前提じゃなく、誰でもできる工程と、フィリアにしかできない工程に、切り分けて」


 フィリアは腕を組んで、しばらく黙った。


「……できる、かも。核の部分だけあたしがやって、あとは決まった形に嵌め込むだけにすれば」


「よし。ガリン、ガランドの分業のやり方、詳しく教えてくれ」


 まだ、答えには辿り着いてない。でも――一人で全部作る発想そのものが、間違ってた。それだけは、はっきり分かった。


(第29話へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。