第3章 〈召喚術入門〉(2)
カイトは今日も、マーケットの古本屋で購入した、魔塔所属の調査員による、これまでガイア世界に現れた召喚者への取材記録をまとめた魔塔製作本である〈召喚術入門〉をパラパラとめくってみていた。
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ただし、魔道書の中には既にモンスター等が封印搭載されている物もあるので、読める=持ち主と認められた場合は魔道書に命じるだけで召喚可能。
魔道書に対して召喚したい存在をイメージして「出でよ」と命じれば召喚できる。
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倒したモンスターは、魔道書に封印し新しく召喚獣として召喚することも可能。
と書いてあった。
「う〜ん。魔道書かあ……」
前世の記憶を取り戻したカイトは、
(召喚のチュートリアルとかナビシステムのような物はないのだろうか?あると便利なのだが……)
などと都合のいい事を考えていた。
「お困りですか?」
背後から声が聞こえた。振り返ると三毛猫が直立していた。
「私はキャル。助けていただいたので、私はガイド&見守り係として一緒にいる事にしました。お気軽にご相談ください」
「ガイドも兼ねてるのか。よろしくお願いします!」
挨拶の後、
「人の言葉を喋れるという事は猫神とか獣人なの?」
カイトは湧き上がった素朴な疑問を口にした。
「猫神の眷属になりますね。まだまだ未熟ですが。カイトのいた人間世界に用があり行った途中うっかり車に轢かれそうになりまして……」
キャルは頭をかいた。
「人の言葉を喋れるのは猫神や獣人や高位モンスターが多いですが、カイトがサーバントとした存在とも会話や意思疎通は可能です」
そう言葉を付け加えた。
* * *
カイトは自分の思い描いた都合のいい考えを猫のキャルに聞いてみた。
「召喚本のチュートリアルとかナビシステムはないかな?あると便利なんだけど」
「う〜ん。本の精霊を召喚してみては?例えばリブロと名付け、そのチュートリアルとかナビシステム機能を付与するイメージで。魔塔の本は魔道具も兼ねているので」
「なるほど!」
カイトはキャルのアドバイスに嬉しそうに相槌を打った。
「『出でよ』と命じればいいんだっけ?」
(そんなんで召喚できるのかいな)
カイトは不安を覚えながら、召喚術入門を手に取り、
「出でよ、本の精霊リブロ」
と言ってみた。
直後、本からポンッと灰色の煙のような物がグルグルと出てきた。次第に形を取り、人型になった。銀ブチ眼鏡を掛け、魔塔の黒フードを被った初老男の姿をしていた。
「カイト殿。よろしゅう」
リブロはそう告げた。
(凄〜い。これが召喚?女神様。ありがとうございます)
カイトは内心小躍りしていた。
* * *
それから数週間。カイトは本の精霊リブロや猫のキャルから召喚について学んでいた。
召喚はある程度の魔力を消費するので、子供のうちは過度に行わない方がいいそうだ。
召喚能力がある事は何となくガルス辺境伯家の人々には秘密にしていた。前世の記憶が戻り、社畜サラリーマンとしてパワハラ上司に酷使搾取されていた経験から、なるべく無能謙虚なスタンスで厄介事には関わらないポリシーにしようと自分に言い聞かせていたからだ。
マーケットで買った紺の和綴じの、
「遥か昔にいたサマナーという異能使いが使っていた書物で、異世界から召喚された遺物」は、ドラゴンをはじめ、人によっては神と崇めるような高位のモンスター等のイラストが載っていたが、リブロの説明では初心者が呼び出すのは危険という事で、まず第1歩は、ほとんど魔力を消費しないスライムを捕まえて魔道書に封印し新しく召喚獣として召喚する練習を提案された。
「スライムは街から外れた森にけっこういるにゃん。魔の森に出没するスライムは高位で倒すのが大変だけど、街外れの森のスライムは草食系がほとんどでおとなしく倒したり捕獲しやすいにゃん」
キャルが目を細めながら言った。
カイトはそれを聞き、
(一応ガルス辺境伯家の跡継ぎ候補の養子になったわけだし、スライム捕獲は魔獣狩りの初歩にトライとして、喜ばれるのでは。そのうち護衛のマグネルに付いてきてもらい、スライム狩りに外出しよう)
と思ったのだった。




