第3章 〈召喚術入門〉(3)
数日後。
スライム捕獲の許可をガルス辺境伯夫婦から取り、護衛のマグネルと出かけるカイトに、メイドのアンナも付いてきた。猫のキャルも途中から合流した。
アンナは目下はガルス辺境伯家のメイドをしているが、魔獣狩りで亡くなった両親は辺境伯家の騎士団員だったとの事で、将来騎士になる為の訓練も兼ねて冒険者ギルドに登録しているそうだ。始めてから日も浅く、まだ最低ランクなそうだ。
(冒険者ギルドあるんだ!)
カイトはワクソワした。
(そのうち僕も登録しよう!)
アンナやマグネルはスライムを倒したことがあるそうで、街外れの森に行く道すがらカイトに説明してくれた。
最弱スライムはなんなら皮靴で踏みつけても死亡することもあるらしい。
スライム死亡で出てくる魔石は小さい上に質が悪く、買取や売買対象であるが、安く買い叩かれるそうだ。駆け出しの冒険者がスライム魔石多量を持ち込み、雀の涙の小銭を得るものらしい。
スライムから出た魔石は屑魔石として、魔道具ランプや竈の燃料に使われるそうだ。スライムの中でも稀な上級種は高値が付くが、滅多にいないそうだ。
生きて捕獲すると、生活水や下水等の浄化に使えたりして便利らしい。スライム用の保管箱に入れて飼育するとの事。踏み潰さず気絶させる位の衝撃を与えるのが注意点なそうだ。
アンナが道に落ちていた木の棒を拾い、カイトに見せた。
「私はスライム捕獲には軽く木の棒で叩いてます。けっこう素早くて、踏むのだと逃げられることもあるので」
そのアドバイスに従って、カイトも道すがら木の棒を拾ったのだった。
* * *
街外れの森は鬱蒼としていて、魔物が出そうな雰囲気を漂わせていた。
マグネルが説明してくれた。
「スライムだけでなく、コボルトやゴブリンもたまにいますね」
「コボルト? 犬人間?」
(モフモフ)
カイトはワクワクしながら言った。
「犬頭で下半身は人間の姿のことが多いですね。魔石の買取価格はスライムより少し良いですね」
アンナも話に加わった。
「訓練になるので私もよく狩ってます」
「お小遣い稼ぎに良さそうだね。とりあえず今日の目的はスライムの捕獲だけど。コボルトもいるといいな」
カイトは更にワクワクしながら言った。
しばらく歩いていると、草むらから何かが飛び出してきた。
プルプル震えている物体。
「スライム⁉︎」
カイトは薄グリーン色の物体をまじまじと見つめた。
丸い目と口のようなのがあり、プルプルとしたゲル状の丸型で、魔獣にしては可愛いらしかった。
マグネルが、
「緑色なので草食系ですね。飼育にも適してますよ」
そう教えてくれた。
カイトは薄グリーン色の球体を軽く木の棒で叩いて気絶させ、スライム用の保管箱に入れた。
(スライム初ゲットだぜ!!)
カイトは内心興奮していた。
「カイト様、お見事です!」
アンナが褒めてくれた。
褒められなれていないカイトは照れまくった。
(今の人生でもそうだけど、前世の記憶が社畜だから……怒鳴られた記憶しかない……褒められたの初めてかも。じーん)
そう感慨に耽ったのだった。
* * *
スライムを捕獲した日の夜、カイトは自室で本を使った召喚術を試してみていた。
本の精霊リブロの説明では、呪文はなくても構わないらしい。
「入れ」
「出でよ」
でいいらしい。
本の文字が読める事とサマナーの能力があるか否かが重要な鍵であるらしい。
ので呪文は些細な事であるらしかった。
(さすが猫の女神のギフト。チートだぜ!)
リブロを召喚した時と同じく、召喚してサーバントとして使役する場合は名付けが必要との事。
紺色の和綴じの本を持ち、スライムを指しながら、
「スライムに名を与える。今から君はジェルオだ」
そう名付けた。
「スライム・ジェルオ。入れ」
と命じると本が光り、ページがパラパラとひとりでに開いて、スライムが吸い込まれた。
本から出すスライム召喚もしてみる。
「スライム・ジェルオ。出でよ」
本に吸い込まれた薄グリーン色の丸型スライムが現れた。
「ジェルオです。ご主人様。よろしゅう」
スライムが喋った。契約すると魔獣モンスターとも喋れるらしい。
「やった〜。本を使った召喚成功!」
カイトは両手を上に上げ、喜んだ。
(そのうち、本に載っている生物も召喚してみたいな。ドラゴンとか載ってるからドラゴン召喚してみたい〜)
初めての魔獣狩りや召喚術の心地良い疲れから、カイトはうとうと眠りに落ちたのだった。




