第5章 コボルト (2)
そんなある日。ようやくコボルトと遭遇した。
犬の姿で立って歩いていて、手の指を器用に動かし木になった果物を採っているので、知能はあるらしい。毛はモフモフの茶色だった。
護衛のマグネルとメイドのアンナが、カイトの前に出て守るように位置した。
「マグネルさん。生け捕りにはできませんか?」
カイトの問いに、マグネルは戸惑いの表情を浮かべた。
「カイト様。スライムと違い、コボルトはそんなに有用な存在ではないので、普通は倒して魔石を採取以外の扱いはしないものですが……」
マグネルの答えに、カイトはちょっと考え込んだ。
(今後も行動を共にすることが多い護衛のマグネルとメイドのアンナには、自分がサマナーの異能持ちである事を打ち明けるべきか……)
マグネルもアンナも悪い人には見えないので、打ち明けてみることにした。既に義姉のリリアナには伝えてあるし。せっかくコボルトと遭遇したチャンスは活かしたいし。
マグネルが見事な棒術でコボルトを捕獲してくれた。
気を失ったコボルトを、召喚の魔道書に収納し、サーバントとした。
名付けが必要なので 「タロー」と名付けた。最初安易に「コボちゃん」にしようかと呼びかけたら、コボルトが嫌そうな顔をしたので、前世の自分の世界で多かった犬の名前にしてみた。ポチとも迷ったが……。
突如、本にコボルトの姿が消えたのを目の当たりにし、
「凄いです! カイト様」
「本当にサマナーだったんですね」
マグネルとアンナの声が重なった。カイトは照れ笑いを浮かべた。
* * *
コボルトを捕獲してサーバントにできたので、カイトはさっそく義姉のリリアナの部屋を訪れ報告した。護衛のマグネルとメイドのアンナには教え済みなので、義両親には食事の席でそれとなく報告するつもりだ。
リリアナも喜んでくれた。コボルトの「タロー」が出現する召喚用の魔道書を興味深そうに見ていた。街のマーケットの書店で購入したというのを聞き、マーケットに行きたそうにしていた。貴族の子女はあまり外出はしないものらしい。父親のシモン辺境伯が娘のリリアナを溺愛しているので、外出となると一悶着ありそうだ。息子を亡くしたばかりだし。
などととりとめなく考えている中、リリアナと侍女達により、モフモフを愛でる会が形成されていた。
窓辺で三毛猫のキャルが、
(私を忘れ気味では?)
と不貞腐れ気味にダラリと横になっていた。




