第4章 あの人も転生者……?(2)
王立アカデミーに入る上で不可欠な魔法属性検査を受け、6属性が検出されず、魔法を使えない無能力者の烙印を押され王族から追放され、ガルス辺境伯の養子に追いやられたカイト王子であったが、アカデミー入学試験は春先で、現在ガルス辺境伯家では越冬用の食料の加工保存に忙しい秋口なので、カイトは既に半年ほどは追放先にいる事になる。
風に当たっただけで発熱するような病弱な王子カイトを蔑視し、嫌味を言ってくる侍女や宮廷人もおらず、王宮にいた時よりリラックスして暮らせていた。そのせいか、カイトの体調は風邪を引きにくくなり、すこぶる良かった。
(飼い猫が毒殺された位だし、俺にもバレない程度に微量の毒が盛られ続けていたのでは?……)
苦労人だった社畜サラリーマンの前世持ちの知識から、カイトは最近そう疑っていた。
(俺を殺して得する奴の心当たり……はないが……利用価値薄い末っ子王子だし。
王子が死ぬと、相続人が減るから遺産取り分が増えるというサスペンス理由位しか思いつかん……親にも疎んじられてたし)
とりあえず王宮で毒盛られてた可能性があるのなら、リリアナ姉さんに毒知識習って、解毒剤作れるようになってた方がいいよな。もう王都に行く事なんてないと思うけど。
解毒ポーションって高く売れそう。ポーション作りには何か能力要るのかな? 今度聞いてみよう。
リリアナ姉さん口数少ないし、話題あまりないから、話題になって助かる。
傍らに侍っている猫のキャルを撫でて愛でながら、カイトは漫然とそう思っていた。
* * *
食事の時間中、カイトは勇気を振り絞り、義姉のリリアナに話しかけてみた。
「あのぉ……以前、『武芸ができなくても毒を使えば簡単に魔獣を倒せる。そのうち調合薬学を教えてあげるわ』とおっしゃってましたよね。調合薬学に興味があるのですが、教えていただけますか?」
「いいわよ。夕方位なら大体時間があるから、都合がいい時に私の部屋に来たらいいわ」
リリアナは気さくにそう答えた。
「調合は何か才能が要りますか?昔、飼い猫を毒殺された事があって解毒ポーションを作れたら作ってみたいのですが」
カイトの言葉に、アリシアは眉をひそめた。
「猫ちゃんを毒殺ですって⁉︎犯人に天罰が下ればいいのに」
「王宮の奴等は性根が腐ってるからな」
シモンも苦々しげに言った。
リリアナはカイトを見ながら、
「調合は、液体を扱うので〈水〉属性でもスペシャルSレベル持ちになるかしら……。
それ以外では異能の〈調合〉や〈錬金〉か、私のように〈毒〉属性持ちができる事が多いわね」
「……」
そう説明したのだった。
カイトは該当しないのに絶望して黙りこんだ。
「ちなみに、抜け道としては、異能〈付与〉の持ち主が作った魔道具アーキテクトを使えば、軽度の調合は付与アーキテクトで可能。というやり方があるわ」
リリアナは微笑みながら、更に言葉を続けたのだった。
* * *
その日以来、カイトは時たま夕方にリリアナの部屋に遊びに行くようになった。調合薬学について教えてもらう建前だが、のんびりした空気だった。
リリアナの説明によれば、
>
異能〈付与〉の持ち主が作った魔道具アーキテクトを使えば(ある程度の)能力の付与可能。
調合には毒か錬金属性等が必要だが、軽度の調合は付与アーキテクトで可能。
リリアナの血と念を注入した付与のアーキテクト指輪
をいただいた。
「リリアナ姉さん。ありがとう! あなた様に付いていきます」
カイトはその日以来、リリアナを姉さんと呼ぶようになった。
こうしてカイトは、召喚能力以外に、軽度の調合スキルを手に入れたのであった。




