第53話Noa
「うーみーはひろいーなおおきーなー!」
青灯基地の沿岸。
水産養殖場。
連れはフユミだけ。
アゲハは学校。
バンリとハガネさんは仕事で東京に戻っちゃったけど、リンくんとモカさんは宮崎に残ってる。
「ほんとうにおおきいなぁ!」
3日前の最悪な潮の香りが上書きされていく!
素材の核肉をグリックにしちゃった件は許されることになったし、よきかなよきかな。
それに海ってのは漁業権よろしく、土地所有者いねぇからな。
拡張機能の件で、宮崎滞在は延長になった。
しばらくはこっちにいることになりそうだ。
カエデさん経由で養殖実験の申請が通ったんで、さっそく養殖用生簀を♦︎6から♦︎7にグレードアップ!
拡張機能
・水温変化緩慢(ストレス軽減や安定的な成長を促す)
・突然変異率 0.0007%(生簀内の対象が突然変異する確率)
突然なにに変異……わすれよーっと。
「父さんの話を真剣に聞くなんて、変わってるよおまえ」
「失礼だろう。こんなにわたしの話を真摯に聞いてくれるフユミさんのすばらしい姿勢、感動したよ」
「愛想いいアゲハだって眉をしかめるもんな」
「現場だとつい熱が入ってしまうんだよ」
「常に全力で取り組んでいらっしゃる証左だと思います」
「ありがとうフユミさん」
「まぁ、よかったんじゃねぇの……なんだよ」
「いいえ。おわったの?」
「ああ。それでさ、ちょっとはなしがあるから船の方にきてくれない?」
「オッケー」
父さんに捕まってたフユミのレスキューを終えて、2人、誰もいない船の上で腰をかける。
「こうして船に揺られるのもずいぶんひさしぶり……それでおはなしって?生簀になにかあった?」
最初は暗かったようにも見えたフユミは、ここ数日、よく笑ってるし喋り方がやわらかくなって言葉調も砕けてきてるように思う。
「フユミ」
「なーに?」
「オレの秘密おしえてやるから、おまえの秘密おしえてくれ」
春瀬さんもバンリもいない。フユミと二人、孤立した場所にいる。これ以上ないってくらいに監視の目に配慮したシチュエーション。
「どうしておまえはおれを殺そうとしたのか、とか」
ノーガード戦法というわけではない。
「直球じゃん。ごめんだけど、わたしにも秘密保持の息はかかってる」
「……おまえが一人でいるからつけこんだ。わるい」
「ほんとうにね……わたしがひざまくらしてっていったら、してくれる?」
「かまわないな」
「自信がついたんだね……手、貸して」
フユミは戸惑いなくオレのふとももの上に頭をおいて横になった。
勝手に手をとると、体温を感じるように頬をさわらせて甲に自分の手のひらを添える。
「おまえは……慣れたか?」
「それなり」
「おれは苦労したなぁ。高2のとき……留学して、ノアって子と仲良くなったんだ」
ノアは日本から留学していたおれがいちばん仲良くなりたかった子だ。




