第51話
これまで葬ったシフターと形態が違う。
スリムで、顔は口と耳だけだが、珊瑚みたいなのを体表にくっつけつつ、全身が毛の代わりにキラキラ光るブルー系のタイツみたいに密集する日光を反射する鱗たちで覆われてる。
手の先、足の先の間は水掻きみたいなのがついてて、腕や背中に鰭もある。
いろんな異物さえ気にしなければ、デカいニンゲンみたいに見えなくもない。
「初心者でいきなり怪異人までぶった斬るとはやるなヒラク」
「これが?」
「鱗の怪異人ですね。スパンコール回数は1回。いい刃の筋でした。ブラボー、ヒラクくん」
ハガネさんに褒められた、うれしっ。
「ではわたしが作った足場まで下がりましょうか」
「はい……で、あれってぜんぶ怪異人っすよね」
「これは異常事態だぜ」
海面の先から、次々と鱗のカイジンが頭を出した。こちらに近づいてくるごとに彼らの姿が白日にさらされる。
「おい。この異常な状況がわかるか。百体のカイジンが隣に目もくれずにヒラクにメンチ切ってやがる」
「奇襲が失敗してどう攻めるか考えてる。魚ばっか食べて頭の良さそうなやつはいないからどうせ総攻撃だろうけど」
「フユミ。おまえ、変なフェロモンとか出してねぇよな」
「近海の底を闊歩していた連中がヒラクの被ってる死臭に釣られてきた。わたしからしたら激臭だけど、いまのヒラクはあいつらには最高級肉にそうじゃない感じのチーズソースをドレッシングしたみたいな麻薬感がある。超ジャンキー」
「普通なら隣り合った時点でカイジン同士の共食いがはじまるんだがな」
「脳はカイジンのアクセサリー。そして、脳は脳化指数が高ければ高いほど彼らには美味しく映るのだと言われています。彼らが賢くないのは明らかで、脳の質も人に劣る。さらに、海のなにかしらをアップしてドレスコード=アクセサリーでもある彼らは同じものを食べてきたウーレンフェルトの血を浴び続けて特濃のドレッシングがかかったヒラクくんが食べたくて仕方ないってところでしょうね」
「めっちゃ判りやすい。さすがハガネさん……」
「お前までメンチきってどうすんだよ」
「1/3はオレの獲物だ」
「なぁ、シフターを切るのは気持ちいだろうがさ」
「さいっこうだわ」
「……クセにならないようにしろよ。それで身を滅ぼしたやつは大勢いる」
傍目からはおれが薬でもきめてるように見えるんだろうか。
脳は奴らを狩り尽くすと至って明瞭なんに、そんなに心配っていうんならやめとくか。
コイツ、なまぐせぇし自分から近づきたいとは思わねぇんだよな。
「ヒラク」
「どしたフユミ」
「念の為に言っておくけど、わたしには遠慮しないで」
「……いいのか?」
「わかると思うけど、わたしも結構な数の怪異人を殺してる。それにこうなった後もね。私たちにとっては生存競争の範疇って認識だから、思う存分、やるといい……アゲハたちはわたしが守るから」
そんな応援されちゃったら、臭いからやめたとか言いづらいじゃん。
「御前フナムシみたいにちんこめ〜姑息な前進しちょる。フジツボみたいに張りついた視線で人をジッと見つめてきやがる阿呆が」
「おっしゃやるぞヒラク!」
「せっかく身内でやる気に盛り上がってるところですし、わたしは援護に回りましょう。といっても、バンリくんの方はあまり目をかけるつもりはありませんので」
「この状況でハガネさんが出たら一瞬で終わっちまうからありがたいっす。仲良く半分個だ!!!」
「バカみたいに一番殿の後追いをしやがってよぉ!羊っていうか、ヒヨコみたいだなおまえら!!!ぐっどもーにんぐって鳴いてみろ!!!いっしょにアンハッピーバースデーうたおうぜ!!!おまえらのなぁ!!!」
金属を操るハガネさんが造る水上の足場を走り抜け、膝から上を海面に晒しながら一直線に襲いかかってくる怪異人を斬り裂いていく。




