第49話
「もうムリ〜」
リク、ウミ、ソラは浜辺にへなへなと倒れ込む。
最初の接敵から5時間。
ヒラクはずっと武器を振り続けた。
「コーヒーバケツでかぶったみたいに真っ黒だ……」
楽しすぎて時間を忘れてた。
戦い始めてからどのくらいの時間が経ったのかは覚えてない。
だけど積み上がった屍の数を見渡せば、まぁまぁな時間が経ったことがわかる。
自衛隊の人たちが途中から解体して回収していってたっぽいから、ここにある分が全部ではないけれど。
「……なんでおまえらぶっ倒れてんの?」
「おまえ……おまえのせい」
「一体ずつ向かいやすいように威嚇したりして制御してた私たちの苦労を……あぁ、しゃべんのだるい。ヒラクだっこ。リクを」
「まぁいいけど」
「バカそのきたねぇナリでにじり寄ってくんな!」
「オレそんなに汚い?でも肌についた血とかぜんぜん残ってないけど」
「服だよ服!いつジャケット買ったんだよ!もう!」
……言われてみればそうだ。
でもオレの腕の皮膚とアンにはまったく汚れが残ってねぇな。
たしかに血糊が付いてたんだが、振ってるうちにぜんぶ飛んでったんか。
「なんだ?」
血がついていたはずの皮膚の無臭な匂いを嗅いでいると、一帯に警報が鳴り響く。
「ヒラクくん。海から100体ほどの群れが近づいています。3分後に上陸すると青灯基地からの連絡です」
「んあ?はい、もっと狩ればいいんすか?」
「まだ戦闘を継続できると」
「げんきピンピンっす、ハガネさん」
「そうですか。ではリク、ウミ、ソラを後退させ、代わりにバンリ、そしてわたしが支援に入ります。モカもずっと気を張っていてもうぐったりなので、予防線の質は落ちますが大丈夫ですね?」
「うっす」
砂浜に背中をつけた3人を起こして、バンリとハガネさんが来る間、おれはずっと海の方を見続けた。
いつの間にか波打ち際に立っていた。
オレが殺した屍を背中に感じながら、虚無を感じていた。
この世界におれ一人みたいな、それだけあればいいような……だからもっと狩りたい。
「ヒラク!下がれ前に出るな!!!」
バンリの切迫した声が耳に残るのと同じくして、水中からジャンプしてゆらめく波と日光の綾を踏み潰すように、数歩下がったオレより背の高い2mくらいのデカブツの体躯が視界一帯を覆った。
バンリ、警告聞こえたがもうおそい。
オレは右腕を振りかぶりかけてる。
信号に差し掛かっていきなり黄色になったからって急ブレーキかけるより振り切ったほうがいいって、直感が囁いた。
怪異物の断末魔が耳をつんざく。
ソイツを真っ二つにしたのは、ほぼほぼ事故だった。
「I got you…チッ、負けた」
轟く銃声と耳に残るバンリの声、それを掻き消すモカさんの恨めしそうな声、質量のあるものが地面に落ちた時に伝う振動がオレの体をしばらく揺らし続けた。




