第26話化粧箱
楓さんから事件のほとんど海苔弁なあらましを聞かされる。
結論 真壁さんが俺に嘘ついた。
トモさんたちは俺のことを知ってた上であの場に居合わせた。
理由は勧誘のためではなく、俺を守るためだったけれど。
あの脱税乙女マジン卍は、なんとはるばる中国から空を飛んでやってきたらしい。
異象=ライフストック直結のマジンが命を消費してわざわざ俺を殺しにきたことになる。
「俺のなにがそんなにマジンを駆り立てたんだ」
わかりきってる。
査定日の前から検査結果は出ていた。
でもどうして国外が俺がシンギュラー適応者だって知ったんだ。
……内部に敵がいる。
「楓さん。ガバくないっすか、国のセキュリティー」
「ヒラクくんの特異関連事項に限っては、我々国家機関は最高のクオリティで職務の遂行を果たしていると私は評しています」
いや、自画自賛自己評価じゃ意味ないっす。せめて──。
「事件後もちゃんと設置した調査本部による内部調査を行ってます」
こころ読まれた。
「じゃあせめてこれだけは正鵠を射た答えをください! 俺の特異のなにがマジンが命を削るほどに殺意を駆り立てたんですか!」
「機密事項です」
……その対応はほんとダメじゃん。
「私から補足できるのは、今後もあなたを狙って他国や他国に住むマジン、もしかしたらこの国に住むマジンが襲ってくるかもしれないということです。では、10分ほど席を外します。春瀬さんと至道さんを連れて戻ってくるので、答えを考えておいてください」
そういう脅しね!俺にはどうしようもなんねぇわな!
……でてっちゃった。
スマホで誰かに相談……。
俺が狙われるってことは、俺の周りも巻き込むってことだ。
家族、幼馴染、友達……この連絡先に並ぶ名前の人たち。
「ヒラクくん」
「トモさん」
「はい」
「かなり性格悪いですね」
「反感を買ったようだけど、私たちは少なくとも1回、危険を冒してあなたを守っています」
「だから他人へのこんな横暴も一回までなら許される」
「ええ」
「……あなたは、なりたくて公安になったんですか」
「なりたくてなりましたが、そもそも防衛省への所属が強制される立場であり、ならばせめて私の愛する人たちが住む国を身近に感じながら仕事をしたいと思っての願いです……例え管轄が、私の首に縄をかけ絞首台に乗せている憎い組織の母体にあっても、私に降りかかった矢は、本来はだれにでも刺さってしまう可能性のあるものだった」
「あなたの言葉で、もういちど今の質問の答えを俺に教えてください」
トモさんは目を見開いて信じられないと恨み節で訴えかけてくる。
しかしすぐに落ち着きを取り戻し、直立したまま楓さんの方に頭をわずかに傾ける。
楓さんはトモさんの意図を察して、両耳に指をつっこんだ。
「こんな仕事、だれがやりたくてやってるのか。人の命が強制的に掌に乗っかる仕事だ。常に投げ出したい気持ちでいっぱいだ!それでも私は、わたしはこの目に情報が届く範囲の出来事すべてを支配して守り尽くす!!!」
「……そう生きることしかできないなんて、哀れだと思います。あなたを蔑んだんじゃありません」
「君の未来を蔑んだんでしょう。私はそうだった」
「俺の特異は非戦闘系です。失敗はするかもしれない、けれど足手まといは嫌です」
「だから公機捜はヒラクくんに合っていると思う。戦えないならサポートでもいい。私もバンリくんもいる。頼ってほしい」
それは、俺がやってやるもんですか?
あなたは俺のことを見てますか?
心を開いてくれてますか?
俺は開いてませんよ、それでも俺が役に立てますか?
ストレスで禿げそう。




