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グレードアップ  作者: エスプレッソ
巾箱之寵 編

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第24話衣装箱

 特定部位、特定の種、特定のマテリアル。

 シフターそれぞれに固有の食(アクセサリー)がある。


 (ハンド)(メイド)、なる習性。


 毒蛇ばかり食べる蛇型シフターが毒の分泌物を生成する異象を獲得し、当該シフターの核肉と適合した異象者が毒を含む唾液を分泌する怪異を獲得した事例がある。

 彼女は軍の施設に収容され、その一生を人の監視下に置かれた。

 ハンドメイドはシフターの異象に影響を及ぼし、また、シフターの獲得した異象(アクセサリー)はシフテットの獲得する異象に影を落とす。


 それからドレス。

 シフターは環境を着飾るドレスと、アクセサリーを繕うハンドメイドにて独自の異象進化を遂げる。

 研究では、環境を着飾ること(アップ)で、アクセサリーを身につけて異象(コード)とする順行と考えられている。


 であるからして、草食で害となりそうにないシフターが葉や根の毒を垂れ流したり、花粉を撒き散らしたりと害になり得る。

 しかしほとんどのシフターは、そもそもハンドメイドしても怪異相当の異象を獲得しない。

 摂食を続ける内に体がデカくなるだけ。

 それでも大きくなりすぎると家屋を潰したりするので注意は必要となる。


 これが義務教育の内に習うことだ。


怪異人(かいじん)はご存知ですか?」

「ああ。近年増加傾向にある人も襲うタイプの人型種シフター」

「”ウーレン(Woolen)フェルト(Felt)”については?」

「シフターの基礎形態とライフステージにおける幼体期を示す二重用語ですよね」

「バッチリです。さて、ウーレンフェルトには絶対に共通する特徴が3つあります。核肉を宿していること、異才を持つこと、そして、必ず口を持つことです」


 ウーレンフェルトには基礎(ボディ)に口と核肉だけ。

 摂食・貯蓄を続けるうちにスパン(Span)コール(call)というタイミングが訪れる。 

 英語ではSequin(シークイン).

 シフターが飽食臨界に達して停異期(ていいき):Vintageに入るまでに数回、確率こそは非常に稀だが、そのスパンコールこそが異才から怪異に、シフターがプルーラルからヴァリアントへ変異する一種のタイミングとされている。

 Dress, Chic, Glam──シフターのスパンコールは3回。1回目がドレスなのは、1回目のスパンコールがその後のシフターの変化(コード)の方向性に最も大きく影響するから、らしい。


「心して聞いてください。怪異人は3つの部位に加えて、必ず脳を持ちます。怪異人はスパンコールごとに目、鼻、耳のいずれかの部位を獲得していきます」

「異形な怪異人ばっかりなイメージだったけれど、容姿の凶悪醜悪は副次的な変化だったのか」

「そうです。そうであって知性知能はありますが、食欲に優る理性はない、が怪異人の定説です。それでヒラクくん。口に、目、耳、鼻。全ての頭部の部位を獲得したら怪異人はどうなると推察しますか?」

「……巨人、ですかね」

「惜しい。最後のスパンコール-Glam-を結ぶと、直感に反してシフターは縮小します。停異期に入るのです」

「……誘導しました?」


 楓さんはニコリと笑うだけで肯定はしないが、内心ほくそ笑んで満足している。

 綺麗に引っかかったもんだ。


 異象の源である色元素(いろげんそ)(英 Lustrous Life)、通称はライフ。

 核肉が摂食臨界(Radiant)に達してシフターが停異期に入るとライフの生成が止まるドライボーン(Dryborn)状態の停異期核(ていいきかく)(Gem)となり、低燃費なOLDモードに移行、そうしたシフターをビンテージと呼ぶ。

 ビンテージは食事をし消化はできても肉体のエネルギー吸収能力が限界を迎えているため、残照(ライフストック)をゆっくりと消耗し衰弱(fade)する。

 これがシフターの死への順行である。 


「自分にお似合いの飾りを片っ端から貼り付けて、歪に()れて。長く生きのびるだけであれば果てに石ころに形を変えればいいものを、怪異人には知能も知性も、理性もあります。食欲が抑えられることで理性が優位となり生存欲を抱くんです。そうして、私たちと同じような何ら変哲のない人型へと落ち着きます」

「シフターもQOLとか気にするんですかね」

「異象さえ使わなければ、彼らの生存欲、ライフストックの消費に影響はほとんどないそうです」


 冗談を言ってみたが、楓さんの反応は鈍い。

 ……こっからが本番、なのか。


怪異間人(カイイマジン)。マジンとかイマジン呼びが主流です。何かと便利ですから」

「マジンはともかく、イマジンって外国の人に通じますか?将来的に情報共有できないと不便なような」

「いずれも日本語準拠の呼称です。正式な国際呼称は別にあります。ですがそもそもマジンの存在自体が秘匿されるべきものであり、公表されている呼び名もない機密なので」


 間違って声にしても苦し紛れにでも誤魔化せるようにしとこうって感じ。

 俺って信用されてないね。


「その時は、追って必要な情報を開示していきます。現在のあなたの立場で新しく話せることは以上です。ここからは擦り合わせを行います」

「擦り合わせ……」

「マジンについてお話ししたのは、あなたに剣のような針を投げつけてきた女性が、そのマジンの一人だからです」

「……投げつけてきた……マジンが……なんで?」


 女性ってどの女性。剣を投げつけたん……バンリが反発したんじゃなくて、あの女が俺を狙って投げたのか!?


「ちょっ!あのオンナ脱税犯じゃなかったんすか!?」


 こりゃあ、ヤバいわ。


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