第27話フーミン文明
3日後。
「終わったな。お前の部屋の隣が俺の部屋な。ところで俺、最近料理にハマってるんだけどな、ヒラク、お前、料理できる?」
「できますよ。でも他人に作ってやるのは好きじゃないっす」
「そうか……おれチャーハン食いたい」
「自分で作ってください。もう16時だし、夜が入らなくなりますよ」
「おやつでいいじゃん!引っ越しの手伝いしたんだからもてなしてくれよ!材料俺の使っていいから!」
おまえぜったいに料理にはまってねぇだろ!!!
「うめぇ!うめぇよヒラク!!!」
「ネギと卵だけのシンプルなやつですけど。ごはんレトルトだし」
「それでなんでこんなうめぇんだ!?」
「味付けは塩と鶏ガラ粉末だけですよ」
「うま味調味料ってやつか!」
「いろんな料理の下味つけるのに使えたり、牛乳入れればちゃんぽん作れるし便利なんす」
「そうか。お前ちゃんぽん好きだもんな。いやー、春瀬さんのアドバイス通り買い置いててよかった」
……俺の好みなんで知ってんの。
東京の一等地に建てられた特異者専用宿舎の邸宅、至道邸。
国の支援で建てられ外には警備も滞在する至道の家に、防犯のため俺は居候することになった。
腹が一杯になって、同じレンジ飯チャーハンを食べたことで気も緩んでくる。
「それでさ、今日はもう一人家族が増えるから」
「居候だっての。増えるとか聞いてねぇ……俺以外にも増えんの?トモさん?」
「いや、別。もうすぐ護送されて来るんじゃねぇかな」
「VIP?」
「そんなかんじ。春瀬さんが送ってくるって」
「それを早く言え!身支度しなきゃ!シャワーとタオルとシャンプーと……諸々借りる!」
「おう」
「サンクス!」
今の格好は汚れてもいい、もう汚れてるよれよれシャツに下はジャージ。
チャーハン作ったんで油の匂いも染みついて余計に不潔感がすごい。
30分後。警備からインターホンに連絡が入る。
「至道さん。春瀬さん方がいらっしゃいました」
「オッケー。出迎えようぜヒラク……なんだその格好」
「タキシード」
「見りゃわかる。なんでそんな服持ってんだ」
「備えあれば憂いなし!いつでも女性を夜のディナーに誘えるように!」
「まだガキだな、おまえ。ちょいこい……みろ、俺の一張羅、これを纏った俺の姿を想像してみろ。かっちょいいだろ」
「モーニングじゃん。それでどうやって夜のディナーに誘うんだ」
「……え?」
「紳士が淑女を待たせてはいけない」
「チョ、待てヒラク!俺これでいろんなディナーパーティー出たんだけど!?」
昔、一張羅をクリーニングに持っていかないでコインランドリーで洗濯した挙句に苦情を入れてきた馬鹿がいたんだ。
もうすぐ夜だからお勤めを果たしたトモさんが合流すんのかなと思ったけど、居候は別人か。
誰だろ。
「おまたせいたしました」
張り切ってドアを開けて二人を出迎える……?
「ギャァあああああああ!?!?」
ま、ま、まジ!
「ヒラク。落ち着け」
「ママま!マジンがーでった!ドゥえたぁああああ!!!」
なんでこん人落ち着いてるん!?
あんさんドチャクソに闘りあってたじゃん!
「俺を殺しにきた!守ってください!」
ヒラクは自速型の異才者にも並ぶ瞬間とんでも速度でドアを閉めて、後ろに控えていたバンリの背後に控える。
バンリは怯えるヒラクを無視して、ドアを開く。
……どしてそんなに落ち着き払ってドアを開けるんだ。
「うっす」
「……うっす」
「春瀬さんも、こんちわ」
「こんにちわ、バンリくん。彼女を護送してきました。受け取りをお願いします」
「はいはいサインを……って宅配か!」
漫才まで始めたんだけど。えっ、俺にしか見えてない幽霊なん?……でも、うっすって言葉交わしてた。
「ヒラクが完全に借りてきた猫状態なんすけど。春瀬さん、宥めてくれません?」
「ヒラクくん……」
春瀬さんは俺の名前だけ呼ぶと肩に片手を置いて、もう片手で無言のサムズアップ。あっ、夕方なのにいい匂い。
「トモさん、それだけじゃワカンねっす」
「今日から君たちと同居することになった夏乃 胡柚蜜さん。又の名をマジン”フーフェン”さんです。イェイーイパチパチぃー」
黒サラロング髪だがインナーにイエローのヘアカラーと独特で、Honey Beeとシンプル印字な紫シャツにジッパーの開いた黒のパーカー&短パンコーデで、噛んでないけどフーセンガムとか膨らませてそう。
にしても、髪のこの配色どっかで……ああ、工事現場。
「よろしく」
「あんたらなに考えてんすか!?」
「ごめんね。私まだ仕事が残ってるから。バンリくんから事情を聞いて顔合わせておいて。それじゃあ任せたバンリ班員!春瀬は職務のため戻ります!」
「おっす春瀬班長!」
敬礼するバンリは俺カッケーとか思ってそう。
説明しないとかないわ。
面倒ごとを投げたな、あの人。




