表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/67

第7話 稲穂とヒマワリ

 森を彩る数多の木の香り。

 風に躍る稲穂、それに彩りを加える可憐な花々。

 今までの閉塞的な自分とは対照的に空を自由に泳ぐ鳥たち。

 小気味良い音と清涼感で目と耳を楽しませてくれる小川。

 今まで城の外に出たことがなかったドラキュラには、それら全てが初体験であった。

 そんな一つ一つに感動を示すドラキュラと。それを微笑ましく見つめるニニがいた。


「私は知らないことだらけだったのだな・・・・」

 一通りの初体験を終わらせたドラキュラがポツリと呟いた。


「チッチッチッチッ。ドラキュラさま何をおっしゃいます!!このくらいで世界を知った気になってはいけませんよ。まだまだこんなものではありません。何と言っても僕たちがこれから向かうのはホッカ王国なのですから」

 ニニは人差し指を左右に振りながらマウントをとってきた。


「ホッカ王国はそんなに凄いのか??」

 ドラキュラは目に星を浮かべながら尋ねる。


「大都会ですよ!!ふぅ〜、知らないんですか??全く、これだから田舎者は困りますねぇ」

 勢いに乗って直属の上司を小馬鹿にするほど、ニニは調子に乗りやすいのだ。


「なるほど・・・・。それは楽しみだ」

 ドラキュラにはニニの嫌味が伝わっていなかった。

 肩透かしを食らったニニは、少し頬を膨らましてムスッとした。

 その様子を見ていたムーンはクスリと笑った。


「少しずつ笑う回数が増えて来ているのではないか??」

 ドラキュラがムーンに話しかけた。


「さっきまで感情がなかった人に言われたら終わりだわ!!」


「ふんっ!!それもそうだな」

 そういうドラキュラも、笑う回数が少しずつ増えてきていた。


「ムーンとのやりとりは理解できるんですね??」

 ニニはドラキュラに嫉妬した。


「それはそうとニニよ!!俺たちが今向かっているホッカ王国とはどういったところなのだ??」

 ドラキュラの天然が悪びれる様子もなく話を元に戻す。


「えぇ〜っとですね・・・・、確かこの中に・・・・」

 ニニは背中に背負ったバッグをお腹の方に持っていき、その中から一冊の本を取り出した。


「ジャーーーーン!!旅太郎ぉぉ〜〜!!」

 ド●えもんのような声が自然いっぱいの景色に吸い込まれていった。

 鳥の声がとても良く聞こえた。


「この本には世界中の国々の情報が記載されています!!もちろんホッカ王国のことも!!」


「おぉぉぉぉ!!ニニよ、凄いものを持っているな」


「へへへへ。まぁ〜、私ぐらいになると教養を身につけるために様々な書物を読みますからね。こういった世にも珍しい書物も持っているわけですよ」

 得意げに語る。


「何を偉そうに言ってんのよ!!単なるガイドブックでしょ!!そんなの私だって持ってるわ!!」

 ニニのメッキはすぐに剥がれた。


「ぐぬぬぬぬぬぬ、さっきから聞いていれば、横から不躾に入って来て色々言って・・・・。僕に恨みでもあるんですか??」

 ニニは常日頃からドラキュラを小馬鹿にしてきていた。

 (もちろん、ドラキュラのことを尊敬していること前提である)

 しかし、ムーンという常識人が現れたことで、今までのポジション(マウント)が崩れようとしていたのである。


「恨みなんてないわよ。ただ・・・・」


「ただ・・・・??」


「ただ"みっともないなぁ〜"って・・・・」


 ガーーーーーーーーン!!!!

 ガックシ・・・・。

 ニニはうなだれた。

 先ほどドラキュラが関心を寄せた稲穂よりも頭を下げて・・・。

 ニニはとても打たれ弱かったのである。


「ご・・・・、ごめん!!そんなつもりじゃなかったんだけど」

 想像していなかったニニのリアクションにムーンは少し取り乱した。


「どうせ僕はみっともないですよ・・・・。人としての器もちっちゃいですよ・・・・」


「面倒臭さっ・・・・じゃなかった。そんなことないわよ!!ニニはドラキュラのことを今まで支えて来たんでしょ??最強の処刑人とも言われるような人を"あなたが"支えて来たんでしょ!!それってとても凄いことだと思うの!!器がちっちゃい人には務まらないことだと思うの!!」


「本当に・・・・??」


「えぇ、本当に・・・・!!」


 ムクッ!!

 ニニは顔を上げた。

 先ほどドラキュラが感動したヒマワリの花よりも空に向かって・・・。

 その顔は満面の笑みであった。


「ですよね??ですよね??やっぱり僕って凄いですよね??ドラキュラさまを支えて来たんですからね!!そうですよね??そんじゃそこらの人には務まらないことですよね!!わかってるなぁ〜。ムーンはわかってるなぁ〜」

 ニニは立ち直るのが早かった。


「はは・・・・、はは・・・・、はははは」

 "やれやれ"といった表情でムーンは作り笑いをした。

 そんな二人のやりとりをドラキュラは微笑ましく見ていた。


「誰かの会話のやりとりに、笑ったり、怒ったりするなんて、今まででは考えられなかったことだ・・・・。うん、悪くない」

 ドラキュラは体の内側からも新鮮さを感じていた。


「で、結局、ホッカ王国というのはどんなところなのだ??」


「そうでした!!ホッカ王国はヤパン王国を取り囲む四つの国の一つで、火の国と呼ばれています」


「火の国??」


「そうです。火の国の国王である、ポロ・アチチが世界一の火の使い手であることからそう呼ばれています」


「世界一の火の使い手・・・・」


「ドラキュラさま、もしかして今、"その能力欲しい"なんて思ったんじゃないでしょうね??」

 ドラキュラには能力コレクターとしての一面もあった。


「べ・・・、べ・・・、別に・・・・。ただ、よく聞こえなかったから聞き返しただけだろうが!!全然"能力欲しい"なんて思ってないぞ!!へ・・・・、変な言いがかりはやめてもらってよいかニニよ!!」

 動揺が半端ない。


「いいですか??僕らの目的はムーンに着せられた罪の真相を暴くことです!!そのために本当の犯人を探すのが目的です!!国王に喧嘩を売って能力を手に入れることではありません!!目的を見誤ってはいけませんよ!!僕らが会って話を聞くのは"三番隊隊長ボリべ"です。やつがこの事件の真相を知っているはずです。ホッカ王国についたなら、まずは聞き込みから始めましょう。聞き込みは全ての基本です」


「しかし、聞き込みなどしていたらムーンの正体がバレてしまうのではないか??処刑されているのかどうかを確認するために城まで部下を寄越すくらいだぞ!!しかもその部下たちがムーンをしっかりと認識できたいたんだぞ。それほどまでに身バレしたムーンを連れて、十分な聞き込みなどできるのか??」


「そのためにドラキュラさまの力があるのでしょう!!」


「力・・・・??どんな・・・・??」

 ドラキュラにはニニの期待に応えられるような能力に心当たりがなかった。


「あれですよ、あれ!!」

 ニニは不敵な笑みを浮かべて言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ