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第6話 民を守るため孫を蹴る

「はわわわわ!!孫がまたワシに会いに来てくれたぞい!!これで2日連続じゃあ!!・・・・じゃが、待てよ。孫は今、本当なら処刑をしている最中のはず・・・・??なのにここにいるということは・・・・、もしかして、ワシに早く会いたくて処刑をスグに終わらせてきたとか??マジぃ〜〜!!可愛すぎるんですけどぉ〜〜!!ワシに会いた過ぎの孫、マジ可愛いんですけどぉ〜!!ヤバいくらいに孫がワシを求めてくるんですけどぉ〜〜」

 などと心の中で思いながら、バーツは玉座にどっしりと構えていた。


「オホン!!・・・・してドラキュラよ!!用というのは何じゃ??」

 バーツが真顔で問いかける。


「今日、俺が処刑する予定だったムーンという女がいるのだが・・・・。そいつの処刑を却下したい」


「何??処刑を却下じゃと??お前は自分が何を言っているのか知っておるのか??」

 バーツの言葉の一言一言には凄みがあった。

 しかし、心の中では・・・・。


「はわわわわ!!孫がワシに刃向かってくるんですけどぉ〜〜。これは噂に聞く、反抗期ってやつじゃないのかのぉ〜〜。えぇ〜〜、マジィ〜〜??ってことは、もしかしてワシがその反抗期に触れた第一号なんじゃないのぉ〜〜!!あざーーっす!!反抗期の対応第一号、あざーーっす!!」

 などと思っていた。


「実は・・・・??」

 そう言ってドラキュラは感情を取り戻した経緯をバーツに話した。


「本当に感情を取り戻したのか??」

 バーツは目を見開いたままドラキュラに問いかける。


「あぁ、本当だ!!自分でも不思議な気分だ!!」


「うぅ〜む、何じゃか信じられんのう・・・!!おぉ、そうじゃ。それを証明するために今ここで笑ってみてくれんかの??」

 バーツの天然な無茶振りが炸裂した。


「へへへへへへ」

 ドラキュラはそんなバーツの願いを真摯に受け止め、これまた天然炸裂と言わんばかりに、笑って返した。


「おぉ!!どうやら感情が戻ったというのは本当のようじゃな!!」


『何じゃそれ!!』

 一緒について来ていたニニとムーンは、心の中でツッコんだ。


「ということは、その者の記憶が流れて来たということも本当なのであろう!!・・・・そうか」

 バーツは少し塞ぎ込んだ。


「お前もわかっておるとは思うが、ワシらはあくまでも処刑人じゃ!!ここに連れてこられたものは"罪人"。それ以上でもそれ以下でもない。それを前提として処刑をしておる。連れてこられた罪人の詮索が禁じられているのは、私情が処刑を邪魔する可能性があるからじゃ!!それは、この国の信頼を損なうことにもつながる、ワシは王としてお前の頼みを聞くことは出来ん!!」

 それは祖父としてではなく、王としての決断であった。

 ここで判断を誤れば、多くの民に迷惑が掛かる可能性がある。

 "民を守るため孫を蹴る"

 それがバーツの出した答えだった。


「そうか・・・・。ごめん。じいちゃんだったら頼れると思ったんだけどな・・・・」


 じいちゃんだったら頼れると思ったんだけどな・・・・

 じいちゃんだったら頼れると思ったんだけどな・・・・・・・・

 じいちゃんだったら頼れると思ったんだけどな・・・・・・・・・・・・

 バーツの頭の中でドラキュラの寂しそうな言葉が何度も繰り返された。


「よし!!では猶予をやろう!!」

 バーツは"民を守るため孫を蹴る"ことをやめた。


「聞いてくれるのか??」


「だから猶予じゃ!!お前はその女が罪人でないと確信しているのじゃろう??じゃったら、それを3日以内に証明して見せろ!!そうすれば、今回のことは水に流してやる」


「証明とは具体的にどうすれば良いんだ??」


「本当の罪人をここに連れて来い!!」


「生死は問わないか??」


「いいや!!生きておらんと意味がない!!今回の事件の罪人をこの国で処刑するからこそ、お前のわがままが通るのじゃ!!」


「わかった!!じゃあ3日以内に本当の罪人を連れてくるとしよう!!」


「くれぐれも気をつけるのじゃ!!お前の話を聞くからに、何か一筋縄ではいかない事件の臭いを感じるぞい!!」


「構わん!!それで良い!!目的はハッキリしているのだから。ありがとう、じいちゃん」


 ありがとう、じいちゃん・・・

 ありがとう、じいちゃん・・・・・・

 ありがとう、じいちゃん・・・・・・・・・

 バーツの頭の中でドラキュラの感謝の言葉と嬉しそうな笑顔が何度も繰り返された。


「はわわわわ。めっちゃ感謝されたんですけどぉぉぉぉ!!ワシの孫マジ天使!!全然反抗期なんかじゃなかったんですけどぉぉぉぉ!!昇天しちゃうって、このままじゃ、じいちゃん昇天しちゃうってぇぇぇぇ!!ありがとうって言われたけれど、こちらこそありがとう、孫ぉぉぉぉぉぉ!!」

 などと、バーツの頭の中はカーニバルになっていた。


「くれぐれも無理はするなよ」

 バーツは真剣な面持ちで言った。


「安心しな!!俺を誰の孫だと思っているんだ!!」

 そう言って振り向き、ドラキュラはバーツに背を向けながら手を挙げた。


「ふん!!笑わせおるわい!!」

 バーツは笑った。


「ふん!!笑わせおるわい!!」

 と、心の中でも思いながら。




「本当に、真実を突き詰めるつもりなの??」

 ムーンが恐る恐る聞く。


「そのつもりだ!!」


「ドラキュラさま!!私もお供をしてよろしいでしょうか??」

 ニニがドラキュラの歩幅に合わせるように早歩きで並走しながら聞く。


「もちろんだ!!お前がついて来ないなどという選択肢は、俺の中にはない」

 その言葉にニニの頬が緩んだ。


 ドラキュラ、ニニ、ムーンの三人は城の建物を出て、城門に差し掛かろうとしていた。

『いってらっしゃいませ、ドラキュラさま!!』

 二人の門番が見送ってくれた。

 城門を出ると橋が架かっている。

 その橋の先にこちらをみながらニヤニヤしている兵士が二人いた。


「ドラキュラさま、あれはホッカ王国の兵士だと思われます」


「うむ。知っておる!!」


「えっ??」


「ムーンの記憶に出て来たからな」

 ドラキュラの言葉を聞き、ニニはムーンの方を見た。


「・・・・」

 ムーンは兵士たちを見ることはなく、何かに怯えるような表情をしていた。

 その陰に、どことなく怒りのようなものも滲ませながら。


「おいっ!!あの女生きてるぞ!!」

 兵士の一人がムーンを指差して言った。


「本当だ!!一体どういうことだ!!」

 兵士は二人とも目の前から近づいてくるムーンを見て驚いている。


「あいつらもお前の記憶によると、お前を落とし入れたホッカ王国の兵士だったな??」


「えっ??本当ですか??」

 ニニは不意に声が大きくなった。


「う・・・・。うん・・・・」

 ムーンは俯いたままとても小さな声で頷いた。


「おいっ、お前たち!!その女をどこへ連れて行く気だ??その女はホッカ王国の隊長に斬り掛かり、命を奪おうとした、生きる価値のない罪人だぞ!!」

 兵士は道を遮るようにして立ち塞がった。


「俺たちが納得する説明が出来なければ、ここから先へ通すわけにはいかんな!!」

 もう一人の兵士がニヤニヤしながらドラキュラたちに向けて剣を構えた。


 その様子を見ていたムーンは両手で耳を塞いだ。

 何も聞こえないように・・・・。

 ここから消えてしまいたいと思いながら。

 処刑室で威勢が良かったムーンは、ここにはいなかった。

 そんなムーンの肩を優しく"ポン"とドラキュラが叩いた。


「安心しろ!!あんな兵士に俺たちを止める事などできん!!」


「そうですよ!!何たって、ここにおられるのは、あのドラキュラさまですからね!!」

 そんな会話を続けながら、一行は兵士たちに近づいていく。


「おいおいおいおい!!俺たちの話が聞こえてなかったのか??何を真っ直ぐにこっちに向かって来てんだよ!!引き返して、その罪人の処刑をはじめろよ!!そのためにこの国があるんだろ!!ちゃんと働けよ!!」


 ググググググググ!!!!

 気がつくとドラキュラは拳を強く握りしめていた。

「なるほど・・・・。これが怒りという感情なのだな!!」

 そう呟いたドラキュラを見て、ニニは嬉しそうに笑った。


「あんな兵士、やっちまってください!!ドラキュラさま!!」

 ニニが大声でドラキュラにエールを送った。


「はははは!!俺たちを敵に回そうってか??それはホッカ王国に対する宣戦布告だぞ!!良いのかそれで??この国が滅ぶぞ!!はっはっはっはっは・・・・」


「逆に聞くが??お前らは俺を敵に回そうというのか??」

 そう、ドラキュラが言った瞬間であった。


 ドガバギドゴズガドガドガドーーーーンン!!!!

 兵士たちにドラキュラの拳が炸裂したのである。

 二人の兵士は遥か彼方へと吹き飛ばされた。


「ふん。ウォーミングアップにもならん!!」

 そう言ったドラキュラを、ムーンは顎が外れそうなくらい驚いて見ていた。

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