第65話 ありがとう
ガラガラガラガラガラガラ・・・・・・
それは小さな土砂崩れだった。
ゴーレムの頭から岩の塊がこぼれ落ちていった。
「あのゴーレムを一撃で・・・」
シナはツシカの快勝に驚きを覚えたと同時に、何か胸の奥から熱いものがたぎっていくのを感じた。
「オラオラオラ!!!まさかゴーレムを一撃で倒してしまうとは・・・恐れ入ったぞ!!!だがなぁ、ゴーレムなんてのは所詮噛ませ犬よ!!!本当の勝利は俺たちを倒してからでないとな・・・」
野良三兄弟はそれぞれの武器を構えた。
カチャ・・・カチャ・・・
ツシカは弾丸を銃に装填し始めた。
ズシーーーンンンン!!!
三男の降ろした棍棒が、周りの地面に亀裂を走らせた。
「キラキラキラ!!!今ので分かったろ???この棍棒がどれだけ重くてどれだけ頑丈なのか」
三男は棍棒を軽々と振り回しながら余裕の表情で語った。
「重ければ強いのかい???」
ツシカが三男の話の真意を挑発するように返した。
「キラキラキラ!!!言っておけば良い。勝利すれば、それが正義!!!その正義が、コレからお前という悪を倒すのだ!!!」
ブンッ!!!ブンッ!!!ブンッ!!!ブンッ!!!ブンッ!!!
三男は軽く100kgは越えるであろう棍棒を頭の上で振り回してみせた。
「コレは物騒だ・・・。君の間合いに入ってしまうと大怪我しそうだね・・・」
そう話すツシカの表情には余裕が見られた。
棍輪罪
ブオンッ!!ブオンッ!!ブオンッ!!ブオンッ!!ブオンッ!!
三男は大きな棍棒を持った手を体の右側で大きく一回転した後、その手を今度は体の左側で一回転。
それを何度も速く続けることで自信を守る防御にもなる攻撃を繰り出した。
そのバリアを張りながら、少しずつツシカに近づいていった。
「キラキラキラ!!!どうだこの技を破ったものは今まで数人しかいないんだぞ!!!お前など、この技でペチャンペチャンのグチャングチャンにしてやる!!!」
「コレだけ大きな棍棒をこんなに速く振り回せるのは確かに凄いと思う。少しは褒めてあげるよ!!!でもね、いくら迫力のある技でも、動きが単調だと意味がないんだよ」
「キラキラキラ!!!単調と分かっていても受け止めることが出来ない。それがこの技の怖さだ!!!とくと味わえぇぇぇぇぇ!!!」
ブンッ!!!ブンッ!!!ブンッ!!!ブンッ!!!ブンッ!!!
三男が棍棒を振り回しながらツシカとの距離を詰めていった。
しかし、ツシカに動揺は見られなかった。
ゆっくりと銃を上げ、自分の顔と銃と相手の顔が一直線に並ぶように照準を合わせた。
ダンッ!!!ダンッ!!!
ツシカが弾を二発撃った。
「キラキラキラ!!!たかが二発で俺を仕留められると思っているのか???俺をゴーレムと一緒にするなよ!!!」
侮辱された怒りで三男の棍輪罪の速度が上がった。
足元に転がっている石が、風の力で吹き飛ばされ周りの木々に当たっては表面をエグっていった。
「おぉぉぉ!!!どんどん回転速度が上がっていくね。ありがとう・・・」
ツシカは余裕の表情を浮かべながら三男に感謝を述べた。
「キラキラキラ!!!血迷ったか?何故俺に感謝の言葉を伝えた?・・・そうか!一瞬で息の根が止まるほどの力をこんな自分のために使ってくれてありがとう的なやつか?」
三男の推理は欠点だらだった。
しかし、ツシカの言葉の真意につながる、それとは別の推察を見出すこともまた困難だった。
実際、戦いを見ていた全員がツシカの"ありがとう"という言葉に疑問を抱いていた。
「この世にはたくさん不思議な生物が存在する・・・。例えば・・・トリモチグモとかね」
突然話し始めたツシカに全員が耳を傾けた。
「トリモチグモの糸はその名の通り、とりもちのような粘着性も持っている。その糸に捕まれば最後、抜け出すことは出来ない!もがけばもがくほど絡まっていき、命耐えてもなお絡まり続けるんだ・・・」
「キラキラキラ!!!貴様の遺言は、その豆知識か?」
「違うよ。アドバイスだ!そんなトリモチグモの糸を弾丸に込めて君に放ったんだよっていうね」
「キラキラキラ!何ぃ〜?」
三男が驚いた瞬間・・・
パカッ!
ツシカの弾丸が開いて、中から真っ白い糸が飛び出してきた。
飛び出した糸は大きな蜘蛛の巣の形をしたまま三男を包み込んだ。
ドチャッ!
トリモチグモの糸が三男に絡みつく。
ギュルギュル・・・ネチャネチャ・・・
ギュル・・・ネチャネチャネチャ・・・
三男は勢いよく回った手をスグに止めることが出来なかった。
なぜならツシカに対する怒りで回転速度を上げたからである。
結果、回転する手に糸がドンドン絡まり、その勢いで体全体にも糸が絡まっていった。
三男の体は糸でがんじがらめになり止まってしまった。
「そして・・・トリモチグモは自分の糸に絡まった獲物に致死性の高いガスを噴射して命を奪うんだ・・・」
「キラキラキラ!ということは・・・?」
「そう、2発目の弾丸にはその致死性の高いガスが入っているのさ・・・」
パカッ!!!
強張る表情の三男に同情することなく、2発目の弾丸は割れた。
中からは何も出てこなかった。
それが逆にツシカのいう通り、致死性の高い毒が入っていた証拠でもあった。
「キラキラキラ!ぐ・・・ぐ・・・が・・・がはっ・・・ひゅっ・・・ぐ・・・」
毒は即効性が高く、弾丸が割れるや否や三男はもがき苦しみ始めた。
毒を喰らえば息苦しくなり反射的に喉に手を持って行きたくなるものであるが、糸の絡まった腕ではそれが出来ず、三男は仁王立ちのままだった。
それでもなんとか手を動かそうとプルプルさせた。
その姿は拷問を連想させた。
そんな中、ツシカはゆっくりと三男の方へ向かった。
カチャッ・・・
ツシカは歩きながら銃に弾丸を込めた。
「言わなくてもわかると思うけど、一応、この銃は普通の弾も撃てるからね!」
そこには、"だからこの普通の弾で君を撃つよ"という意味が込められていた。
三男もその言葉を読みとった。
だから全身に恐怖が走った。
ピトッ・・・
ツシカが、もがき苦しむ三男の前に立ち、眉間に銃口を当てた。
「最後に言い残すことは・・・???」
ツシカは無邪気に笑った。
「キラキラキラ!助・・・け・・・」
言い切る前にツシカは引き金を引いた。
ドスッ・・・
しかし、それよりも速く・・・
ツシカは後ろから刃物で刺された。




