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第64話 バラバラバラ

「な・・・なんでアイツらがここに・・・」

 ニニは驚きこそしたが、構えたり、剣を抜いたりなどはしなかった。

 恐怖や不安があったわけではなく、ただ純粋に驚いただけだった。


「オラオラオラ!!!また会ったな野郎どもぉぉぉ!!!」


「カラカラカラ!!!」


「キラキラキラ!!!」

 ドラキュラたちの目の前に現れたのは、先日温泉宿でこらしめた野良山賊(のらさんぞく)三兄弟(さんきょうだい)だった。

 しかし、それよりも皆が注目したのは・・・・


「あれって、ゴーレムじゃねぇのか???うっひょおぉぉぉぉぉぉ!!!こんなところでお目に掛かれるなんて・・・」

 三兄弟が従えていた体長10mはあろうかというゴーレムだった。

 そしてゴーレムの肩に乗って三兄弟は現れたのであった。

 ゴーレムはレアな生き物で中々見ることができないということもあり、敵でありながら、シナは興奮していた。


「オラオラオラ!!!噂によるとお前らもメガチコを探しにこんなジャングルまで来たらしいじゃねぇか・・・???」


「メガチコ・・・???」

 ニニはその言葉に全く聞き覚えがなかった。


「ニニよ、多分あの虫の名前ではないか??」

 ドラキュラの読みは当たっていた。


「なるほど・・・となると・・・・」


「あぁ、アイツらは虫のことを何か知っている」

 ドラキュラとニニは三兄弟を睨みつけるように見た。


「オラオラオラ!!!なんだぁ〜その目は???俺たちとやろうってかぁぁぁ???」


「カラカラカラ!!!この前の俺たちと同じと思ったら痛い目見るぜぇぇぇ!!!」


「キラキラキラ!!!何たって今日はゴーレムもいるんだからなぁ!!!それに・・・」


「オラオラオラ!!!この前とは違って、正真正銘、俺たちの専用の武器を今日は持ってんだからなぁ!!!」

 そう言って三兄弟は自分たちの武器を大きく天に掲げた。

 長男は自分の顔よりも遥かに大きな鉄球に鎖がついたもの。

 次男は自分の上半身よりも遥かに大きな刃渡りの刀。

 三男は自分の体よりも遥かに大きな棍棒。

 どれも一撃喰らえば致命傷。

 そんな印象を抱くほど一つ一つの武器が力強かった。

 それに加えてゴーレムもいるのだった。


 "前回とは違う"

 

 その言葉が嘘ではないことをこの場にいる全員が肌で感じた。


「ウゴォォォォォォ!!!!!」

 "早く始めようぜ"と言わんばかりに、ゴーレムが痺れを切らし大声を上げた。


「ワ・・・ワシの・・・ワシの家が・・・」

 チヨ婆は膝から崩れ落ち、散らかった天井のかけらたちを眺めていた。

 カケラたちをひとつひとつ集める手はプルプルと震えていた。


「オラオラオラ!!!それにしても何だこの家は???ボロボロじゃねぇか???天井だってこんなに大きな穴が開いちまってよぉ」


「カラカラカラ!!!その穴はさっきオイラたちが開けたんじゃなかったか兄者???」


「オラオラオラ!!!そうだっけか???もう忘れちまったよ、そんな昔のことは!!!」


 キッ!!!

 チヨ婆は三兄弟を睨みつけた。

 今にも飛びかかりそうなチヨ婆にスッと手を差し出す者がいた。

 ツシカだった。


「オラオラオラ!!!誰かと思えば、この前俺たちに恥をかかせたヤツじゃねぇか???どうした、またやろうってのか???ひとつ言っておくが、俺たちをこの前と同じだと思わない方がいいぜ!!!」

 あおるように話す長男をじっと見つめるツシカ。

 真剣な表情からは、

 "お前たち、わかっているんだろうな???"

 そんな気迫が感じられた。


「この前と同じだろうと違っていようと構わない!!!君たちは、チヨ婆さんの血と汗と涙の結晶を罪の意識ひとつ感じることなくふみにじったんだ・・・・僕にはもう君たちを許してあげることは出来ない」


「オラオラオラ!!!よっ・・・と」

 長男はゴーレムの肩から飛び降りた。

 次男、三男もそれに合わせてゴーレムから飛び降りた。


「オラオラオラ!!!言いたいことはそれだけか・・・???俺たちと戦いたいのなら、まずはこいつを倒してからにしてもらおうか???」


「ヴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ!!!!!」

 ゴーレムは長男の言葉に答えるように声を上げた。

 地面は揺れ、様々な生物が木々から飛び立っていった。

 その羽音は痛々しく響いた。

 その音は、まるでこの場に留まることを危険とみなしたのだという意志の表れのようだった。


 ガチャッ・・・

 ツシカは自分の銃に弾を込めた。


「オラオラオラ!!!それはこの前、俺たちを痛めつけた憎き銃。だがな、そんなものこのゴーレムにゃ通用しねぇんだよぉぉぉ!!!」

 ツシカは長男の言葉に反応することなく弾を込め続けた。


「君たちがあの時、本気でなかったように、僕もあの時、本気ではなかったんだ・・・」

 そう言いながら、ツシカは顔を上げ、向かって来るゴーレムに銃を向けた。


 ドンッ!!ドンッ!!

 ツシカは弾丸を二発撃った。


「オラオラオラ!!!ハハハハハハ!!!またスリッパでも飛ばしてゴーレムをやっつけるつもりか???だがなぁ、どんなスピードでスリッパを飛ばしたとしても、頑丈なゴーレムはビクともしねぇぞ!!!」


「そんな無駄なことはしない!!!僕はゴーレムの硬さを侮ったりはしていないよ。ただね・・・、そんなゴーレムにも弱点はしっかりあるんだ!!!ゴーレムの弱点・・・。それは水だ!!!ゴーレムは土で出来ているからね!!!そして、もう一つ・・・、隙間だ!!!ゴーレムは土で出来ているから、よく見ると体の至る所に小さな隙間があるんだ。この二つの弱点をつくために、今、僕は二発の弾丸を撃ったんだよ!!!」


 ピカァァァァァァァァァァ!!!!!

 ツシカの放った弾丸が割れた。

 すると中から小さな黒い玉が夥しいほど飛び出してきた。

 その玉はスピードに乗ったまま、ゴーレムを覆うように飛び散った。


 カツカツカツカツ・・・

 小さな玉はゴーレムに当たった。

 しかし、ゴーレムの体に傷一つつけることが出来なかった。


「オラオラオラ!!!何だそれは、そんな小さな玉でゴーレムをいくら攻撃しても、ダメージなんて与えられるはずがないだろうが!!!」


「君たちは、コレが何だか分かって言っていないんだろ・・・???」


「??????」

 首を傾げる三兄弟に対してツシカは話を続けた。


「コレはスグサクバナの種なんだ!!!スグサクバナは水をかけた瞬間に成長を始め、1分もすれば枯れる。それと引き換えに成長する時の力がとてつ強いんだ・・・こんな風にね」


 ピカァァァァァァァァァァ!!!!!

 ツシカの放った二発目の弾丸が割れた。

 中からはお風呂の浴槽一杯分はあろうかという水が出て来た。

 そして・・・


 バッシャァァァァァァンンンンンン!!!

 ゴーレムはその水を全て浴びた。

 水はゴーレムの体の表面はおろか、隙間から中へとも浸透していった。


 シュルシュルシュル・・・

 水を得たスグサクバナの種からはツタが伸び始め・・・かと思うと、見る見るうちに成長していった。


 ミシミシ・・・

 ミシミシミシ・・・

 ミシミシミシミシ・・・

 内部に入っていた種は、小さな隙間を縫って枝を成長させながら外へと伸びていった。

 外部に残った種は、小さな隙間を縫って内部へ向かうように成長していった。

 内側から、外側から、ツタの成長に押されるゴーレムにはたくさんの亀裂が入っていった。


「ヴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ!!!!!」

 ゴーレムは悲鳴を上げた。

 しかし時すでに遅く・・・


 バッガァァァァァァァァァンンンン!!!

 ゴーレムは粉々に砕けた。


「オラオラ・・・・・・」


「カラカラ・・・・・・」


「キラキラ・・・・・・」

 三兄弟は崩れゆくゴーレムを見ながら言葉を失った。


「バラバラ・・・・・・だね」

 ツシカはゴーレムに勝利した。

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