第63話 夢の別荘
『こ・・・これは・・・』
チヨ婆の血痕らしきものを追いかけていったシナにドラキュラたちが追いついた。
立ち尽くすシナの先には・・・
「家・・・???」
「家ですね・・・???」
ムーンもニニも目の前の建物に困惑していた。
「はぁ、はぁ、嘘だろ・・・???」
急いで先を行ったシナは、そのまま建物の中に入っていった。
"後を追いかけましょう"というニニの声にうなずき、ドラキュラたちも建物の中に入っていった。
スグに立ち尽くすシナを見つけた。
そんなシナの背中越しに人影が見えた。
うっすらとした明かりに目が慣れ始めると、その人影らしきものが全身血で汚れているのがわかった。
「チヨ婆・・・」
シナがそう呼びかけると人影が立ち上がりシナの方に近づいてきた。
「おぉぉぉぉぉぉ、シナ坊っちゃまぁぁぁぁぁぁ!!!」
チヨ婆はシナに抱きついた。
「嘘だろチヨ婆、完成したのかよ???」
シナが満面の笑みでチヨ婆に問いかけた。
「そうですじゃ!!!ついに完成したのですじゃ!!!」
『・・・・・』
何の話をしているのか全く分からず、シナとチヨ婆以外、全員固まった。
そんな空気を変えようと口を開いたのがニニだった。
「あの・・・久しぶりに会って喜んでいるところ申し訳ないのですが、どうやらその方がチヨ婆さまということで間違いないでしょうか???」
「そうじゃ・・・ワシがチヨ婆じゃが、何かねそなたたちは・・・???」
「私たちはただの旅好きです!!!そんなことよりも血は大丈夫ですか・・・???」
「そうだった・・・!!!」
ふんわりとしたニニの会話に違和感を感じたことがきっかけとなり、シナは自分が聞きたかったことを思い出した。
「チヨ婆、クホーの祠からここまで血痕が続いていたんだが大丈夫か・・・???」
誰も何も言わなかったが、チヨ婆の動きから見るに、大丈夫であろうことはうっすら理解出来た。
「あれは鼻血ですじゃ。は・な・ぢ・・・!!!ほれっ!!!こうやってティッシュ詰めとるから大丈夫ですじゃ!!!」
よく見るとチヨ婆の鼻の穴が両方とも丸めたティッシュで塞がれていた。
「ワイルドな婆さんだな・・・」
「そちらは・・・???」
ドラキュラの呟きに反応して、チヨ婆が言った。
「ドラキュラだ!!!ギルティ王国で処刑人をやっているんだってさ」
「!!!!!」
「そんなに驚いた顔しなくても・・・」
チヨ婆のリアクションにシナが思わず突っ込んだ。
「ドラキュラってあのドラキュラさまでしょう、そりゃ驚きますよシナ坊っちゃま」
シナは"へぇ〜"と呟きながら、横目でドラキュラを見た。
シナは、さっきまでチヤホヤされていたのに、その相手がドラキュラに変わっていきそうな雰囲気を感じた。
対してドラキュラは、"ここでもかぁ〜"と自分の知名度にまんざらでもない心持ちだったが、顔に出さないように必死に隠していた。
「こんな辺境の地にまであんたの噂が広がっているって相当ね・・・」
そう話すムーンの顔はなんだか誇らしげだった。
「そう言えば、さっき完成したとかなんとか・・・いったい何の話ですか???」
今までのおちゃらけた雰囲気を仕切り直すように、ニニがチヨ婆に真剣に聞いた。
「この家じゃよ、こ・の・い・え・・・!!!」
「3年前から計画してたもんな・・・」
「ヘェ〜・・・」
"の割には、1ヶ月もあれば完成しそうな家ですね??"
は、飲み込んだニニだった。
「まぁ、建物自体は1ヶ月で建ったのですがな」
ニニは自分を恥じた。
「で、クホーの祠で修行をしていたところ、やりすぎてしまい・・・」
「鼻血が出て、この家に戻って来たと・・・???」
シナの言葉にチヨ婆はコクリとうなずいた。
「その意気込みは若々しくて良いと思うが、チヨ婆も婆って言うくらいなんだから、あんまり無理するなよ。体を大切にしてくれ!!!」
「おぉぉぉ!!!なんというありがたいお言葉。しかし、そうも言っておられませぬ!!!悪い予感がするのですじゃ!!!何か大きな戦さが起こりそうな・・・ワシは不安で不安でじっとしておられんのですじゃ!!!」
「そんなこと言われても・・・」
ニニはチヨ婆にほんのりと苦手意識を持ちそうになっていた。
「いや、チヨ婆の予感はいつも当たるんだ!!!俺は信じても良いと思う」
「虫がらみかもしれんな・・・」
ニニ、ムーン、ツシカが一斉にドラキュラの言葉に反応した。
全員に緊張が走った。
「虫・・・???虫ならそこら中に溢れかえっておるじゃろうて・・・。そんなものがいったいどうしたというのじゃ・・・???」
「俺たちが探しているのはただの虫じゃない。寄生虫と言った方が良いのかもしれんな。こういうヤツだ・・・」
そう言ってドラキュラは虫のサンプルを取り出してチヨ婆に見せた。
ドラキュラはチヨ婆の顔をじっと見ていたが、チヨ婆は首をかしげながら虫をいろんな角度から見るだけだった。
「この虫が人間に寄生して命を奪うと・・・???」
「それだけではない。寄生した人間から限界を超えた力を引き出し、その後、理性を奪って凶暴化させるのだ!!!」
「あれまぁ・・・」
チヨ婆は何とも緊張感のないリアクションをした。
しかし、真剣な空気の中では、その違和感に気づく者は誰もいなかった。
「そして、この虫が第二ガサ王国にいるかもしれないんだ・・・???」
「それは本当で???でも、どうしてそんなことが言えるんですかい???」
「アチ兄がこの第二ガサ王国に来ているらしいんだ・・・」
「本当ですか???ポロ・アチチ坊っちゃままでこちらにいらっしゃっていると???」
「あぁ、そしてアチ兄もこの虫を探しているんだ!!!」
「で、アチチ坊っちゃまにはもうお会いになったので???」
「まだなんだ・・・っとその前に・・・父さ・・・いや、ガサ王からこれを渡すよう頼まれていたんだ・・・」
そう言うとシナはカバンをあさり始めた。
そして頼まれていた品を取り出した。
「チヨ婆、回覧板だ!!!」
「おぉぉぉ!!!今回は坊っちゃまがお届け下さったのですね・・・ありがたや、このチヨ婆、涙が止まりませぬ!!!」
雫一つ通ってない、ツルっツルの頬を全員にじっと見られながらチヨ婆は言った。
「それにしても、この家が無事に完成して良かったな???」
「本当ですじゃ!!!この家さえあればワシはもう・・・」
その時だった・・・
ドンガラガッシャンガラガラド---ンンン!!!!!!
家の天井を突き破り巨大な何かが落ちて来た。
それはゴーレムだった。
そしてゴーレムの肩には見たことのある人影が三つ見えた。
「オラオラオラ!!!また会ったな野郎どもぉぉぉ!!!」
「カラカラカラ!!!」
「キラキラキラ!!!」
それは、先日温泉宿でこらしめた野良山賊三兄弟だった。




