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第58話 実食

「さぁ、只今より実食です!!一人目はぁぁぁ・・・ガサ王国王子ぃぃぃ、シィィィナァァァ!!!」


「さぁ、全員驚け!!俺の料理は名付けて"霜降りゴブリンのスパイシーファイヤーマグナム"だぁぁぁぁぁ!!!」


 ・・・

 ・・・

 ・・・

 会場が静まり返った。

 そして全員が心の中で同じことを思った。


 "何、そのネーミング・・・???"と


「え〜っと、誰も実食に動こうとしませんねぇ・・・」

 ニニは全員を見渡したのだが、皆シナのネーミングセンスに度肝を抜かれて、その場に固まったままであった。


「このままでは進まないので、まずは司会者の私が代表して実食したいと思いまぁぁぁす!!!」

 ニニが空気を読んでか、シナの料理を真っ先に食べた。


「!!!!!」

 一口食べてニニは絶句した。


「これは何という辛さ!!!ガハッ、ゲホッ!!」

 悶絶に近い咳き込み方をするニニを見て、シナのネーミングセンスのなさに固まっていた者たちも我にかえった。


「だけど・・・次の瞬間、霜降りゴブリンの肉汁がその辛さを甘みに変えてくれる。そのおかげで、もう一口食べられる・・・」

 そう言ってニニはもう一口"霜降りゴブリンのスパイシーファイヤーマグナム"を口に運んだ。


「やっぱり辛ぁぁぁいぃぃぃ!!!でも、スグに甘ぁぁぁいぃぃぃ!!!だから美味ぁぁぁいぃぃぃ!!!口の中が次から次へと引っ掻き回される、まさにシナさんの生き方が投影されたような料理・・・」

 ニニのコメントを聞いて周りもシナの料理に興味が出て来た。


「どれどれ・・・」

 ドラキュラがシナの料理を口に運んだ。


「辛ぁぁぁいぃぃぃ!!!水・・・水・・・水をく・・・いや、甘ぁぁぁいぃぃぃ!!!やっぱり水はいらん!!!辛味と甘味の旨味で口の中を一杯にしていたい!!!あぁ、何と激しくて素晴らしい料理だ!!!」

 ツシカもドラキュラと同様に料理を口に運び、同じ感想を抱いていた。

 だからドラキュラの言葉を聞きながら、賛同するように首を縦に振っていた。

 気がつくと全員がシナの料理を口に運んでいた。

 そして、もれなく辛味と旨味の口内バトルの餌食になった。


「さぁ・・・シナさんの料理が想像以上の盛り上がりを見せていますが・・・残念ながらお時間が来てしまいました。それでは次の料理に行きたいと思います!!!」

 そう言ってニニは次の実食を誰にするか決めようと選手たちを見回した。


「何だかみなさん、この流れで自分の料理を出すのが嫌な様子・・・仕方ありません!!!次の実食は私の料理にしましょう!!!」

 全員がニニに注目した。

 自身の料理を実食していたシナもニニに注目した。


「私の料理はこちら・・・」

 そう言ってニニは土鍋のフタを豪快に開けた。


「"チョットダケと山菜の炊き込みご飯"だぁぁぁ!!!!!」


 フワァァァァァ〜〜〜〜〜

 当たりに優しい香が広がった。


「米だぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 シナは誰に何を言われるでもなく、ニニの"チョットダケと山菜の炊き込みご飯"に飛びついた。

 そして、そのまま実食を始めた。


「ふふふふふ・・・」

 ガツガツと"チョットダケと山菜の炊き込みご飯"を口に運ぶシナを見ながらニニは笑みを浮かべていた。


「これは美味しい!!!さっぱりしていながらも味に深みがある!!!そして山菜のポテンシャルが存分に溶け込んでいる!!!だからだろう、香が鼻から抜けていく度に幸せな気持ちになっていく・・・」

 と、食レポするシナとは対照的に、ツシカは一口一口を味わうように食べていた。

 しかし、シナと同じように手は全く止まらなかった。

 シナもツシカも、お椀に盛られたご飯がドンドン減っていった。


「ま・・・まさか・・・ニニ・・・お前・・・???」

 ドラキュラもニニの料理を美味しそうに食べていた。

 しかし、ニニの料理を食べながらずっと感じていた違和感があった。

 そして、シナやツシカの様子を見て、ドラキュラはその違和感に気づいたのだった。


「何ですかドラキュラさまぁ〜〜〜??どうかしましたかぁ〜〜〜???」

 ニニはドラキュラがソレに気づいたことに気づいた。


「お前・・・だから二番目の実食を選んだのだな・・・???」


「今頃気が付きましたか・・・。しかし、もう遅い!!!ドラキュラさま、あなたはもう食べてしまったのですから・・・!!!そう、ドラキュラさまが考えている通りです。私は最初のシナさんの料理を見て、自分の料理を出すなら次しかないと思いました。そして司会の特権を生かし、上手くシナさんの次に自分の料理を実食してもらえるように誘導したのです!!!」

 ニニの作戦にはめられたことを知ったシナたちは、料理を食べる手を止めた。


「シナさんの"霜降りゴブリンのスパイシーファイヤーマグナム"はとても濃厚かつ辛みがあった。一発目の料理としてはかなりのインパクトを与えることが出来たと思います。下手すれば、それで満足しきって後の料理が入ってこないまでありました。しかし同時に、パンチのある料理だからこその盲点もあったのです。それは、食べたものの口がさっぱりしたもの欲するという点です!!!その点からすると、私の作った"チョットダケと山菜の炊き込みご飯"はまさにピッタリ!!!このチャンスを逃すまいと二番目の実食に何とかねじ込ませました」


「卑怯だぞニニ!!!」

 シナが強い口調で言った。


「卑怯ではありません!!!これも立派な戦略です!!!調理が終わってもまだ、勝ちへの執念を捨てなかったからこそ掴むことの出来たチャンス、そしてアドバンテージです!!!私から言わせれば、みなさんは全て終わったと油断し過ぎなのです!!!まだ勝負は終わってないのですから!!!」

 シナはニニの言葉にぐうの音も出なかった。


「はひはに、ニニのいふほおり、しなほひょううひほはへははほひ、ニニのひょうひほはへふほほひひっほうほひひはははふはんひはふふは!!!(確かに、ニニの言う通り、シナの料理を食べた後に、ニニの料理を食べるとより一層美味しさが増す感じがするわ!!!)」

 ちゃっかり実食していたムーンも口いっぱいに頬張りながら言った。


「それでは、そろそろお時間なので次の実食に行きましょう!!!さぁ、この流れで我こそはと言える人がいるのでしょうかぁぁぁ!!!」

 ニニは自分の勝利を確信しながら話していた。

 しかし、ニニはまだ知らなかった。

 ニニがシナの料理を踏み台に使ったように、ニニの料理もまた踏み台に使われようとしていることを。

 そして・・・


 スッ・・・

 手を上げ、三番目の実食に立候補する者が現れた。

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