第57話 やっちゃってんなぁ
「ふぅぅぅ〜〜〜、なんとか時間通りに終わらせることが出来たな。どれどれ・・・」
そう言ってシナは自身の料理を味見した。
そして、口の中いっぱいに広がった深みのあるコクを噛みしめながら何度もうなずいた。
「文句なし!!!これなら誰にも負けねぇ!!!」
シナは自信を確信に変え、料理を決められた場所へと運んだ。
その様子をじっと見ていたのはツシカだった。
「シナの料理は油断なりませんね!!だからと言って負けるつもりもないですが・・・。念には念をということで、どれどれ・・・」
そう言ってツシカは自身の料理を味見した。
そして、口の中いっぱいに広がった芳醇な香りを堪能しながら何度もうなずいた。
「これなら大丈夫!!調理時間もしっかり守ったし、非の打ち所がないですね!!!」
ツシカは自身に満ちた表情で、料理を決められた場所へと運んだ。
その様子をじっと見ていたのはニニだった。
「ツシカさんの料理はタダならぬオーラを発していますね・・・あれは、美味しいが確定している料理のオーラ!!!ふふふ、でも相手が悪かったですね。私の料理はその上をいっています。そんな料理の完成を祝ってテイスティングでもしてみますか・・・、どれどれ・・・」
そう言ってニニは自身の料理を味見した。
そして、口の中いっぱいに広がった食感と味付けのハーモニーを楽しみながら何度もうなずいた。
「完璧です!!!言うことなし!!司会をしながらもこのクオリティ・・・あぁ、自分の才能が怖いです!!」
ニニは自分に酔いながら、料理を決められた場所へと運んだ。
その様子をじっと見ていたのはドラキュラだった。
「ふふふふふ・・・ははははは・・・笑いが止まらん!!!これぞ最高傑作!!!見よ、この光り輝く料理を!!!眩しくて直視出来んわ・・・しかし、これだけでは勝負にならない。勝敗を決めるのはなんだかんだ言って味だ!!しかし、その点も抜かりは無い!!!とは言え最終確認を怠ってはいけないからなあ・・・どれどれ・・・」
そう言ってドラキュラは自身の料理を味見した。
そして、口の中いっぱいに広がった今の茶番に対する羞恥心と自信の無さから来る敗北感を感じながら、自分を慰めるように何度もうなずいた。
「これぞ唯一無二の味!!!この味を越えるものはそう現れんだろう!!いやぁ〜手間暇掛けたかいがあった・・・と言っても丸焼きなのだがな・・・」
そう、ドラキュラの料理は丸焼きだった。
ただただ、何か良く分からない素材を丁寧に焼いただけ。
処刑人として拷問のスキルがあるドラキュラは、火炙りの刑などの経験を生かして、絶妙な火加減で焼き上げたのだ。
素材の良さ(と言ってもその良さが分からない・・・)を活かすための下処理などはこれといってなし。
焼く以外にしたことと言えば、素材を十分に洗ったことくらいである。
それでもドラキュラは自分の料理に絶大な自信を持っていた。
だからと言って、王道漫画のお約束のように、会場中に悪臭が立ち込めるようなことはなかった。
丸焼きはそれなりのクオリティを担保出来ていた。
しかし、周りのライバルたちの料理と比べるとどうしても見劣りしてした。
それにドラキュラは気づいていなかった。
そしてそのまま胸を張って、料理を決められた場所へと運んだ。
「おやおやおや・・・あいつらもそれなりに良いものを作っているではないか???」
料理を置き終わったドラキュラはライバルたちの料理を見ながら余裕を見せていた。
「おいっ・・・ドラキュラ・・・???お前の料理ってそれか・・・???」
思わずシナが聞いた。
(ハハハハ。やはりな、シナのやつ俺の料理の凄さに驚いている!!!まぁ無理もないか、なんせ出来が違うんだからな!!)
と、心の中で前向きな受け止め方をしたドラキュラであったが、もちろんシナはそんなつもりで言っていない。
(マジかよっ!!!ドラキュラの料理、ただ焼いただけじゃねぇか・・・。どうしちまったんだ???奇策か何かか??いやぁ・・・奇策だとしても丸焼きってことはないだろう・・・安易すぎる。なんだか勝負を諦めたようにしか見えないのだが・・・)
と、ドラキュラに対して残念さに近い感情を抱えていた。
そうこうしているとツシカもドラキュラたちの話に入ってきた。
「えっ???ドラキュラさまの料理ってコチラですか・・・???」
思わずツシカが聞いた。
(ハハハハ。ツシカも同じリアクションとは・・・それほどまでか俺の料理は・・・???)
それほどまでなのである。
しかし、その"それほどまで"はドラキュラが認識しているものとは真逆の意味であった。
(ドラキュラさま・・・本気で言っている・・・???まさか私にも分からない仕掛けでもあるのか???それとも試行錯誤を重ねた結果、シンプルという結論に至ったのか・・・???分からない・・・ドラキュラさまの意図が全く分からない・・・)
と、ドラキュラの料理に対して混乱にも近い驚きを受けていた。
そうこうしているとニニもドラキュラたちの話に入ってきた。
「はいっ???あの・・・えっと・・・まさか・・・こ・・・これがドラキュラさまの料理・・・ですか・・・???」
思わずニニが聞いた。
(もぉ〜いいって!!!ニニまで驚いているじゃないか!!!これだけ付き合いが長くても驚くってことは、まだまだ俺の凄さが全部伝わっていないということか・・・まぁ、それも仕方ないか。簡単には計れない!!!それが俺だからな。そんな俺の作った料理なのだから驚くのも無理はないか!!!それにしても、それほどまでか俺の料理は・・・???)
何度でも言おう。それほどまでなのである。
そして、その"それほどまで"は、やはりドラキュラが認識しているものとは真逆の意味であった。
(ちょっと待って!!!ドラキュラさまが私の言葉でこんな表情になるってことは、本当の本当に本気で真面目にこの料理を作ったってこと・・・???どうしたいの??何がしたいの??全く意図が見えない・・・。えぇ〜〜〜、やっちゃってんなぁ・・・ドラキュラさまやっちゃってんなぁ・・・!!!)
と、ドラキュラの料理に対して怒りにも近いざわめきを感じていた。
が、そんな表情はスグに一変した。
なぜならニニにはしなくてはいけないことがあるから。
マイクを片手にステージに上がり、大きな声で伝えなければならないことがあったから。
「全員の料理が出揃いましたぁぁぁ!!!これから実食に入りたいと思いまぁぁぁす!!!みなさん、料理の前に集まってくださぁぁぁい!!!」
すぐさま全員が料理の前に集まった。
そして、運命を左右する実食が始まった。




