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第52話 第一回誰が一番上手い食材を取って来れるか勝負

「第一回誰が一番上手い食材を取って来れるか勝負開催に先駆けまして、ルールをおさらいしておきたいと思います。えぇ〜、私、司会実行兼参加者を務めさせていただきます、ニニと申します。よろしくお願いいたします!!」


 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

 ニニの説明こそコミカルだったが、ガヤ芸人的なノリを持つ者はこの場にはいなかった。

 みんな静かに無心で拍手した。

 礼儀正しいとでもいうのだろうか、しかし、怪物、怪鳥などがお構いなしに叫び続けているこの環境下では、彼らの従順さの方が異常に見えた。


「それではルールの説明です!!制限時間は3時間!!その間に一番美味しい食材を持ってきた人が優勝です!!」


「はいはいはい!!質問です!!」

 シナが優等生のような声と共に手を上げた。


「はいっ、シナくん!!」

 ニニが高校の先生のような口ぶりでシナに発言権を与えた。


「食材を持ってくるだけで良いのですか??」

 シナが鼻をほじりながら言った。

 優等生感は秒で息を潜めた。


「バッカモォォォォォォ〜〜〜ンンン!!!良いわけないでしょうが!!良いですか、"一番上手い食材を取って来れるか勝負"と言ってはいますが、実際は自分たちで持ってきた食材を調理してもらいます!!そして、その料理を全員でいただきます!!そして、自分以外の美味しいと思った料理に投票するのです。そこで一番票を獲得した料理を作った者が、はえある第一回チャンピオンになるのです!!」


「なるほど、競争心を煽ることで自ずとみんなが美味しい食材や料理を意識するため、自然と夕食の質が上がっていく。さらには、評価という名目でみんなが試食することによって腹も満たせる!!何とも一石二鳥な大会じゃありませんか!!!」

 "いくらか貰っているのか??"

 と、周りが疑ってしまいそうになる程、シナのセリフは白々しかった。

 この大会が身内だけで行われていなければ、きっと"さくら"と陰口を言われていただろう。


「その通りぃぃぃ!!!そして、なんと優勝者には・・・」


 ゴクリ・・・

 全員が聞き耳を立てた。


「一番最初に自分の寝るテントを選ぶ権利が与えられまぁぁぁす!!!」


『うおぉぉぉぉぉぉ!!!待ってましたぁぁぁぁぁぁ!!!それが欲しかったんだぁぁぁぁぁぁ!!!』

 "最早、全員さくらなのでは??"

 と、ムーンは荒ぶる男どもとは対照的な冷めた目で見ていた。


「さぁ、それではみんな準備は良いですかぁぁぁ???」


 ザッ!!!

 ニニの声に反応するように、全員がスグにでも走り出せる体勢を取った。


「位置に着いてぇぇぇぇぇぇ・・・・・・」


 し〜〜〜んんん・・・

 周りの生物たちも見守っているのであろうか??

 それとも自分たちの命が狙われるのを恐れて逃げたのだろうか??

 笹よりなどの小さな葉が揺れる音が聞こえるほど静かになった。 


「よぉぉぉ〜〜〜い・・・・・・」


 し〜〜〜んんん・・・

 辺りは更なる沈黙に包まれた。


「ドォォォォォォンンン!!!」


 ドヒュンッ!!!

 数人の男がタイミング良く飛び出そうとしたその時である。


「って言ったらスタートしてくださいね???」


 ズザザザザザザ!!!!!!

 タイミング良く飛び出した男たちはその場でズッコケタ。


「何故みんな転けたのだ・・・???」

 ドラキュラには伝統芸能の素晴らしさが分からなかった。


「みなさん焦らないでくださいね・・・!!!」


「あいつ楽しんでやがる!!!」

 シナは真剣になっていた。

 先ほどまでの優等生キャラや鼻ホジホジキャラなど、とうに忘れていた。


「それでは改めていきます・・・。位置に着いてぇぇぇぇぇぇ・・・」


 し〜〜〜んんん・・・

 再び辺りは沈黙に包まれた。


「同じ手は食わねぇぜ!!!」

 シナは用心深くニニを見つめていた。


「全くです!!」

 シナの意見にツシカも賛同した。


「もう俺たちは焦らねぇからな!!!」

 シナは真剣な眼差しでニニを見つめていた。


「ミー、トゥーーー!!!」

 ツシカも真剣な眼差しでニニを見つめていた。


「俺たちを騙したことを後悔させてやる・・・」

 と、シナが宣言し始めた時であった。


「よぉいドォォォンンン!!!!!!」

 ニニが残りの言葉を早口で一気に叫んだのである。

 そして、自分が一番最初のスタートを切ることに成功したのである。


「ちょ、ちょ、ちょっと待てぇぇぇ!!!」

 ニニにまんまとタイミングをずらされたシナは、焦りながら呼び止めた。


「お前、卑怯だぞぉぉぉぉぉぉ!!!」

 そんなシナの遠吠えは、すでに米粒ほどの大きさになるまで先を行くニニには届くはずもなかった。


「使えるものは、何でも使わなくちゃね!!!」

 ニニは真面目な性格であるが、頑固や意固地とは違い、順応性や臨機応変な対応が出来る男であった。


「ニニもやるようになったな」

 ドラキュラは嬉しそうに言った。


「せいぜい美味しい食材を取ってきてくださいな!!!」

 ムーンは美味しい夕食さえ食べられればそれで良かった。

 大会そのものには全く興味がなく、スタートごときで言い争いをする男たちを相変わらずの冷めためで見つめていた。


「まぁ、冷静に考えれば、一番最初にスタートを切れたからといって何も利点はないよな??」

 シナは負け惜しみであることがギリギリバレないようなテンションでツシカに話し掛けた。


「ですね!!一番大事なのは美味しさですから!!!」

 ツシカも、シナと同様、負け惜しみに取られないように必死に取り繕った。


「なんてシナたちなら考えているのでしょうね・・・」

 一番最初にスタートしたニニは余裕の表情で呟いた。

 ニニが一番最初にスタートを切ったのには理由があった。


 確かあの木々の向こうだったよな・・・。

 ニニにはすでにめぼしい食材があったのである。


 ふふふ・・・。勝ちはいただきますよ。

 やはりどんな場面でも頼りになるのは知識なのです!!

 私は読書が好きで、ギルティ城の図書室でたくさんの本や文献を読み漁ってきました。

 そして見つけたのです!!!

 "レア食材大全集"という本を・・・!!!

 まさかこんな形で役に立つ日が来ようとは思いませんでしたがね。

 その中の一つに"チョットダケ"というキノコが載っていました。

 10年に一度しか生えないキノコらしいのですが、何と今年がその10年目に当たる年とのこと・・・。

 "チョットダケ"はレア食材の中でもさらにレアで、生えている状態のものを見た者はほとんどいない。

 とも書いていました。

 そんな"チョットダケ"を、私はここに来る途中で見つけたのです。

 どうやら第二ガサ王国に生息していたようです。

 ここに生息していたのであれば、生えている状態のものを見た者がほとんどいないのも納得です。

 私はこの"チョットダケ"を手に入れて優勝をいただきます。 

 などと言っていると・・・、


 あっ!!!

 

 ニニは"チョットダケ"をその目に捉えたのである。

 そして、横取りされないように辺りを警戒しながら、摘み取った。

 

 ふふふ。写真と全く一緒!!!正真正銘の"チョットダケ"だ!!!


 これで私の勝ちは決まったも同然。

 ニニは自分の勝利を確信した。


 しかし、ニニはまだ知らなかった。

 第二ガサ王国の偉大さというものを・・・。

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