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第51話 そういう器じゃない

「ギャァァァァァァ!!!」

 突然飛びかかってくるトラやライオンのように獰猛な獣型の怪物。


「クゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 空を覆うほどの葉っぱを突き抜け突如現れる怪鳥。


「ジュゥゥゥゥゥゥ!!!」

 気がつくと腕や足から血を吸い取ろうとするヒルのような吸血生物。


 そんな気を抜くと命を奪われてもおかしくない生き物たちからの急襲をかいくぐりながら、ドラキュラたちは歩を進めていった。

 そしてこれといったことが起きることなく、一日目が終わろうとしていた。


「そろそろ今日の寝床を確保しませんか??」


「賛成!!私もうヘロヘロ・・・」


「そうだな。まだ一日目だし、これ以上頑張っても今日の内にアチ兄に会うのは難しそうだしな!!」


「そうですね。私も疲れました」

 ニニの案に、ムーン、シナ、ツシカが賛同した。


「ドラキュラさまはいかがですか??」


「ん・・・??あぁ、そうしようか」

 ドラキュラはニニの案に反対なのではなく、単に何か考え事をしていて聞いていなかった。


「あそこいいんじゃないか??」

 シナが数百メートル先に見える平らな場所を指差した。


「本当だ!!他に比べてひらけてますね!!では、あそこにしましょう!!」

 ニニがみんなに伝えるように言った。




 程なくして一行は現場に着いた。


「では、ここにテントを張りましょうか・・・???」

 と言いながら、ニニはそれらしい動きを見せない。


「ねぇ・・・この中でテントを張ったことがある人っているの・・・???」

 ニニの様子を見て嫌な予感がしたのでムーンが質問した。


 し〜〜〜んんん・・・

 誰も手を挙げなかった。

 それもそのはずである。

 ドラキュラは処刑人として生涯のほとんどを城内で過ごしてきた。

 同じようにニニも処刑人の卵としてドラキュラ同様、ほとんどを城内で過ごしてきた。

 ツシカも自身の仕事があるため一人でテントを張って寝ることなど経験がない。

 ムーンは姉と仲良く家で暮らしてきたため経験がない。

 そんな中、一人の男が声を上げた。


「何だ何だぁ〜、みんなテントも張れねぇのかよ!!」

 煽るように話し出したのはシナだった。


「何よ!!あんただってテント生活とは無縁でしょうが!!」


「チッ、チッ、チッ、チッ!!ムーンちゃん、何を言っているんだい・・・」

 そう言うとシナはテント道具に手を伸ばし、テキパキと組み立て始めた。

 そしてあっという間に一張り完成させてしまったのである。


「えぇぇぇぇぇ!!ど・・・どうして・・・そんなに簡単にテントを張れるんですか??」

 あまりのスピードと意外さに軽く動揺しながらニニがたずねた。


「このくらい当たり前でしょ!!」

 シナの返しはチャラかった。


「ふ〜〜〜ん。わかったわ!!あんた家出した時、テントで過ごしてたんでしょ??」


「ギクリ・・・・・・・・」

 シナの頬を嫌な汗がつたった。


「やっぱりね!!危うく尊敬するところだったわ!!」


「いや、理由はどうあれ一張り出来たのだから、そこは素直に尊敬してくれても良いのでは??」


「尊敬ってそんなに安くないのよ!!」


「ムーンは厳しいですね」

 思わずツシカが言った。


「良いのよ王子なんだから!!王子ってただでさえ甘やかされて育ってんだから!!」


「お前は王子に何かされたのか??」

 思わずドラキュラも聞いてしまった。


「何もされてないわよ!!ただ、何をしても許される立場の男が、本当に自由に生きているのが許せないだけ!!シナにしてもポロ・アチチにしてもね・・・」


「・・・・・」

 シナは何も言わなかった。

 王子という存在に対してムーンのような考えを持っている者が他にもたくさんいるのだろうと思うと申し訳なくなったからである。


「お前はそういう器じゃないのかもな・・・」

 ドラキュラは黙り込んだシナに向かって言った。

 "そういう器じゃない"

 それは"お前は王子としての器じゃない"という意味ではない。

 ムーンの言葉を聞いて反省したシナを見て、ドラキュラはシナが"一般市民の言葉を真正面から受け止めることが出来る男"と判断したのである。

 要するに、ドラキュラは"お前は自由に外を飛び回って王政を蔑ろに出来るような器じゃない"と言いたかったのである。

 もちろん、シナもドラキュラの真意を理解していた。


「だな・・・」

 シナは笑顔を浮かべてドラキュラの言葉を受け取った。


 それから切り替えて男連中はテントを張り始めた。

 シナの教え方は上手かった。

 男連中はシナの教えに沿ってテキパキとテントを張っていった。


「ご飯はどうしましょう・・・??」

 全員、テントを張るのに夢中になるあまり食事のことを全く考えていなかった。


「ここに来るまでに川がいくつか流れていたわよね・・・???」


「では、夜は魚にしますか??」


「ここら辺に生息している怪物は食べることは出来ないのか??」

 全員が魚料理で手を打とうとしていたところにドラキュラの質問が割って入ってきた。


「食べれないことはないと思うけどね・・・」

 シナは難色を示しながら言った。


「では植物はどうですか??山菜的なものは・・・???」


「それも同じで、食べられるものも中にはあると思うけれど、毒を持っているものもたくさんあると思うよ!!ちなみに俺には、どの植物が毒を持っているかは分からない・・・!!」

 やはりシナは難色を示した。


「それ言ったら魚だって、この国に生息してるくらいですから、毒を持っていてもおかしくないでしょ!!」

 ニニは自分の意見を否定された気がして、少しムッとしながらシナに言い返した。


「それはそうだが・・・」


「安心しろ!!俺には解毒をする能力がある!!」


「マジかよ??」

 ドラキュラの突然の告白にシナは驚いた。


「あぁ!!」

 ドラキュラはドヤることなくうなずいた。


「サバイバルにおいて無敵の能力じゃねぇか!!頼もし過ぎるぜ!!」


「そんなにか??何だか照れるな・・・」

 ドラキュラは喜んだ。


「じゃあ、みんなで競争するか??」

 シナが提案した。


「競争・・・??」

 ニニが聞き返す。


「あぁ!!題して・・・」


 ゴクリ・・・

 全員が固唾を飲み込んだ。


「第一回誰が一番上手い食材を取って来れるか勝負ぅぅぅぅぅ!!!!!」


 バンバンバンバンバンバンバ〜〜〜ン♪

 と、シナが口で効果音を奏でた。


「なるほど!!」

 ツシカにヤル気が出た。


「良いですねぇ!!」

 ニニにもヤル気が出た。


「面白い!!」

 ドラキュラにもヤル気が出た。


「ミンナガンバレェ〜」

 勝負という言葉に勢いよく食いついた男たちにうんざりしながら、ムーンが棒読みでエールを送った。

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