第50話 手をつたう真実
「これって肉片じゃないですか??」
三度足にぶつかった骨を拾い上げてニニが言った。
「確かに・・・もっと言うと・・・」
そう言ってシナが肉片を触った。
「やっぱり、真新しいな!!」
「えっ??ってことは、つい最近もここで命を落とした人がいるってこと??」
思わずムーンが聞いた。
「そうだな。どのくらい最近かまではわからないが、少なくとも1ヶ月以内なのは間違いないだろう!!」
「仮に人間の仕業だとしても、ここら中に血の匂いが充満したのであれば、それだけで生息している怪物たちを刺激するには充分だ!!先ほどから聞こえてくる奇声も、空腹によるものなら合点がいく・・・」
「いや、それはないはずだ!!だってチヨ婆が怪物たちに餌を上げているはずだから・・・」
「チヨ婆さまはそんな危険なことまでされているのですか??」
「危険・・・??まぁ、チヨ婆にとっては危険でも何でもないだろう!!俺が生まれる前からここで活躍してくれているからな!!俺も数年会っていない・・・」
「話を聞けば聞くほどに謎が出てくるところだな!!」
「そう言うとミステリアスで楽しそうに聞こえるが、実際は持て余している過去の産物でしかない!!うんざりしているよ・・・。ここが無ければ国家予算をもっと多くの民のために使えるのだからな・・・」
「なるほどな・・・シナの言うことも一理ある」
「しかし、代々受け継いで来たものを俺たちの代で無くしてしまうわけにもいかないからな。親父も苦労していると思う・・・」
「しっかり国のことを考えているのですね??」
ニニが意外に思って言った。
「当たり前だろ!!俺は次期国王なのだからな!!」
などと話していた時である・・・
ガサッ・・・
ドラキュラたち一行の目の前の茂みがハッキリと揺れるのが見えた。
「あっ・・・??あなたたちは・・・??」
揺れた茂みの奥から男が一人現れて言った。
男は兵士のような格好をしていた。
しかし、鎧はボロボロ、兜は被っておらず、武器も持っていない。
「どうしました??」
ニニが心配そうに言った。
「助けてください!!遥か向こうの方で炎を操る男が暴れているのです!!」
『!!!!!』
一行は思わず互いを見合った。
「あいつは化け物です!!助けてください!!このままでは、この国が危ない!!お願いします・・・」
そう言って男はすがるようにニニに近づいた。
グイッ!!!
その男の首を後ろから鷲掴みにしたのはドラキュラだった。
「助けて欲しければ、その物騒な牙をしまえ!!」
「な・・・何故わかった??」
男の声のトーンが変わった。
一気に低くなったのである。
「俺も牙を持っているのでな!!」
そう言ってドラキュラは自分の牙を男に見せた。
「クソォォォォォ!!」
ドラキュラに捕まれたまま、男は変貌を遂げた。
「人間じゃない??」
ムーンが声を上げた。
男は怪物だった。
「あと少しで人間を食べることが出来たというのに・・・」
「この怪物、私を食べようとしていたのですか??」
「ニニよ、頼むからそのくらいの殺気には気がついてくれ!!」
ドラキュラがうんざりして言った。
その隙をついて怪物はドラキュラに捕まれたままニニに噛みつこうとした。
しかし・・・
「とりあえず落ち着け!!」
ボッゴオォォォォォンンンンン!!!
怪物はドラキュラのパンチをお腹にくらった。
「がっふあぁぁぁぁぁぁ・・・」
怪物はドラキュラに捕まれたまま悶絶し、あまりの痛みに大人しくなった。
「オイラの名はウメオって言います。ご・・・ごめんなさい・・・もう悪さはしません・・・許してください・・・」
ウメオはドラキュラたちに命乞いを始めた。
「その前に一つ教えてくれ??さっきお前が言った炎使いに、お前は本当に会ったのか??」
「いえ、会っていません・・・」
ウメオは申し訳なさそうに言った。
「ですが、ここ最近、たくさんの人間が第二ガサ王国に出入りしているのは本当です!!」
ドラキュラはウメオが一気に塩らしくなってしまった様子を見て、嘘をついているのではないと感じていた。
「その中の一人に無茶苦茶な強さの炎使いがいると聞いて・・・それが頭に残っていて先ほどは言ってしまいました」
「さすがと言うべきか、ポロ・アチチの噂は万物を越えて広がっているのですね??」
「やっぱりアチ兄は凄いな・・・」
「他にもいろんな奴らがこの国に出入りしているのだろ??みんな同じグループなのか??」
「すみません!!そこまではわかりません!!ただ、俺たちの周りでは、人間の目撃情報が日に日に上がってきていたので、多分、全員が同じ部隊ということはないと思います!!」
「少なくとも2つ以上の勢力がこの国に集まっているということか・・・??」
シナは自分の国の現状を憂いていた。
「そうなります・・・ね・・・」
そんなシナの切なさを感じながらウメオは気をつかって応えた。
「でもポロ・アチチが誰かと一緒にいるなんて考えにくいわよね??」
「そうですね!!そこまで人となりを知っているわけではないですが、前に会った感じだと単独行動が好きそうでしたからね」
「みんなの言うとおり、アチ兄は昔から一人が好きだったからな・・・。今もこの中にいるのなら一人で来ているんじゃないかと思う」
「他に何か知らないか??ポロ・アチチ以外の人間たちの特徴などわかると助かるのだが・・・」
ドラキュラがウメオに聞いた。
「すみません!!オイラが知っているのはこの程度です!!」
「ちょっと待てよ・・・??何だかおかしくねぇか??」
シナが何かに気づいた。
「どうしたのですか??」
突然のことにニニが聞き返した。
「ウメオの言っていることが正しいとすると・・・さっきの見張りの言葉が正しくないことにならないか??」
『!!!!!』
シナの言葉にニニたちはハッとした。
「オイラは嘘なんてついていません!!本当です!!信じてください!!」
「こいつは嘘をついていない!!」
必死に弁解するウメオを庇うようにドラキュラが言った。
ドラキュラは処刑人である。
触れた者の体温や汗のかき方などで相手が嘘をついているかどうかがわかるのである。
「ドラキュラさまがそう言うのであれば・・・先ほどの見張りが嘘をついていたと???」
場面は変わる・・・
屈強そうな男三人が第二ガサ王国の入り口ゲートへ向かって歩いてきた。
「はっ!!これはこれはお久しぶりです」
三人に話し掛けたのは見張りの男だった。
「オラオラオラ!!!変わったことはないか??」
「はっ!!お言葉通り、黒いマントをまとった男たちをゲートの中へ入れました!!」
「オラオラオラ!!!それはご苦労だったぁぁぁ!!」
「はっ!!ちなみにですが・・・いつ頃になったら娘を返していただけるのでしょうか??」
「あんっ!!」
男の一人が見張りを睨みつけた。
「い・・・いえ・・・私の娘を・・・」
と、モゴモゴと見張りが話している最中であった・・・
バッガァァァァァァァンンンン!!!
男の一人が見張りを鈍器で殴り飛ばしたのである。
見張りは吹き飛ばされ、金網に叩きつけられ、そのまま気絶した。
「カラカラカラ!!!娘を返すなんて出来るわけねぇだろぉぉぉ!!!だって、もう"あの虫"に体を乗っ取られたんだからなぁぁぁ〜!!!ケケケケケ」
男たちは笑いながらゲートを潜っていった。




