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第46話 国境なき関係

 グイッ・・・グイッ・・・

 ドラキュラに掴まれた腕を尚も払おうとするパンジー。

 しかし、ドラキュラには離す気が全くなかった。


「坊っちゃまって・・・。もしかして・・・」

 ニニはパンジーに対する疑念が少しずつ晴れていくのを感じた。


「はぁ・・・」

 それは観念が空気になって口から出た音だった。

 パンジーは自分の腕を振り払うのをやめた。

 掴んだ腕から力が抜けていくのを感じたドラキュラは手を離した。


「そうだ。俺はこの国の王子だ」


『!!!!!』

 みんな驚いたのだが、特にニニとムーンが驚いた。


「王子って・・・・・。こんなみすぼらしい格好をしているのに・・・???」

 ニニの言葉に、ムーンは"そこか???"と突っ込みたくなった。


「うるせぇ!!!これはわざとなの!!!少しでも王子ってことを隠すために町の古着屋で買ったんだ・・・ったくもう、みすぼらしくて悪かったなぁ!!!はぁ・・・」

 身のうちがバレたために出たものなのか???

 着たくもない服を着て、さらにそのセンスをバカにされて出たものなのか???

 はたまたその両方か???

 パンジーは中身のわからないため息をついた。


 そして・・・、

 パンジーはどうしてそこまでして城に近づきたくなかったのか???

 全員の中に疑問が浮かんだ。


「まぁ、いいや!!!これも何かのきっかけだ!!!中に入れ!!!俺が案内してやる!!!ついでに親父・・・、この国の国王にも会わせてやるから・・・。ついでだし、俺も一緒に会いにいくとするか・・・」

 パンジーが城を出た理由に興味津々の一行であるが、話からは親と上手くいかずに家出したわけではないということだけは推察出来た。



「坊っちゃま!!!」


「坊っちゃま、お帰りなさいませ!!!」


「おぉぉぉ、坊っちゃまいつお戻りに???」


「坊っちゃま心配しましたぞ!!!」

 一歩進むたびに声を掛けられる。

 それほどに城の兵士たちがパンジーの帰りを喜んでいた。


「どのくらい帰ってなかったのよ???」

 思わずムーンが聞いた。


「今回は2ヶ月くらいかな・・・。その前は3ヶ月くらいだっけか・・・」


「家出の常習犯なのね???」


「人聞きの悪いことを言わないでくれよ!!!家出じゃない!!!社会勉強だ、社会勉強!!!」


「何度も社会勉強するなんて勉強熱心なんですね???」

 ニニが皮肉まじりに言った。


「くっ・・・」

 パンジーは言い返せなかった。


「まぁ、これでガサ王にすんなりと会えるわけだし、願ったり叶ったりではないか!!!」


「ドラキュラって意外とポジティブだな!!!」


「まぁな・・・」

 そう言ってドラキュラとパンジーは笑い合った。




「親父ただいま!!!」

 王の間に入るや否やパンジーは挨拶をした。


「帰って来たか放浪息子よ!!!」


「帰ってきたよ。まぁ、不可抗力だけどな・・・」


「ふん。言わんでも顔に書いておるわ!!!」

 素っ気ないような、仲が良いような、家族の関係性がよくわからない会話をドラキュラたちは聞かされていた。


「そうかい。話は変わるけど、ちょっとこいつらの相談に乗ってほしいんだ」


「その方たちは???」

 そう言ってガサ国王はドラキュラたちに視線をやった。


「私はギルティ王国から来たドラキュラという者だ!!!」


「おぉぉぉ!!!ドラキュラか!!!久しいのう!!!」

 ガサ国王は満面の笑みを浮かべた。


「久しい・・・???」

 ドラキュラはポカンとしていた。

 自分の記憶に国王の顔が全くないからである。


「その顔は忘れておるのじゃな???まぁ、無理もなかろう。あの時はまだ赤子じゃったからな。それよりもバーツさんは元気か???」


「じいちゃんを知っているのか???」


「知っているもなにも、ワシがこの国の王になる前から良くしてくれていての。バーツさんには剣術から学問までたくさんのことを教えてもらったわい。ところでバーツさんは元気なのか???」


「あぁ、ピンピンしてやがるぜ!!!」


「そうか、それは良かった。ドラキュラも遠路はるばるご苦労じゃった。相談があると言うとったが、一体どういった相談じゃ???」

 お世話になった人の孫から相談を受ける。

 不思議な感覚にガサ王は浸っていた。

 それは楽しそうにドラキュラに聞いてきた顔を見れば一目瞭然だった。


 なんだか楽しそうだな・・・

 ドラキュラも思わず心の中でつぶやいた。


「単刀直入に聞く、この虫について何か知らないか??」

 ドラキュラは持って来た"あの虫"をガサ王に見せた。


「そいつは・・・???」

 ガサ王は虫に身に覚えがないようだった。


 ガサ王はこの虫を知らない・・・。

 となるとやはり秘密裏に何かを行おうとしてる者がいるということか???

 などと考えながらも、一旦はガサ王の話に耳を傾けることにしたドラキュラだった。


「なんだか不気味な虫じゃのう???」


「この虫は寄生した人間に膨大な力を与える能力を持っている」


「ほう・・・、使い方次第ではかなり危険そうだな・・・???」


「あぁ、そして俺が遭遇した数件はいずれも悪い使い方だった・・・」


「体を乗っ取られるという時点で良い使い方はほぼ無理じゃろう」


「全くもってその通りだ!!!」


 などと言っても、ガサ王がこの虫について何も知らないとなるとどうしたものか・・・???

 悩むドラキュラであったが、質問を変えることで何か見えてくるのではないかと判断し、次の話を始めた。


「では、質問を変えよう。ホッカ王国のポロ・アチチについて何か知らないか???」


『!!!!!』

 ガサ王とパンジーが揃って驚いた顔をして見せた。


 当たりか???

 ドラキュラは心の中でつぶやいた。


「アチ兄について何か知っているのか???」

 先に食いついたのはパンジーだった。


「アチ兄・・・???」

 思わずニニが聞き返す。


「あぁ・・・、アチ兄とは小さい頃よく遊んでいてな。大きくなってからはあまり会えなくなってしまったが、それでもあの日々を忘れることはない。そんなアチ兄が・・・」


「どうやら今、消息不明になっているようだな」

 パンジーはコクリと頷いた。


「あぁ・・・。ただ、城下町では第二ガサ王国に入っていくのを見たという噂がチラホラ出ているんだ」


 虫と第二ガサ王国の関係を調べていたら、ポロ・アチチと第二ガサ王国が結びついたか・・・。

 これはただの偶然だろうか???

 それとも・・・???

 

 悩むドラキュラの口角がジワジワと上がっていくのをニニは見逃さなかった。

 "何やら良からぬことを考えている"

 長年ドラキュラに付き添って来たニニは知ってる。

 ドラキュラはこういう時にこそ燃えるのだと。

 ニニにはドラキュラの本心が透けて見えていた。


「というわけだから、第二ガサ王国に入る許可をいただきたい!!!」

 ドラキュラは真っ直ぐガサ王を見つめた。


「わかった。バーツ王の孫ということであれば、無下に断ることも出来まい!!!」

 そう言って、ガサ王は微笑んだ。


「では、ついでに一つ頼まれてくれんかの???」


「?????」

 ドラキュラたちは不思議そうな顔をし、何を言われるのかと構えた。

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