第45話 坊っちゃま
ジンジンジンジン・・・・・
これからは軽はずみな言動や行動は控えよう。
ニニは大きなタンコブをさすりながら反省していた。
「それにしても・・・」
ムーンはメグに抱き抱えられたメジを見てある疑問を抱いた。
「どうされました・・・???」
ムーンの視線にメジが気がついた。
どうしてムーンがそんな目でこちらを見るのか?
全くもって検討がつかない様子だった。
「なんか・・・」
ムーンは言おうか言わまいか悩んでいた。
しかし、他の人たちも自分と同じ疑問を抱いているはずという予想が、ムーンに勇気を与え、背中を優しく押してくれたのである。
「なんだか、少年というより大人ですね・・・???」
ムーンは覚悟を決めて言った。
「それはそうですよ。だってメジは今年で23歳になるのですから」
『!!!!!』
一同驚愕の事実である。
「ははは・・・」
"これが過保護というやつか・・・"
ニニは今まで何度も耳にしながらも、いまいちピンときていなかった"過保護"というものに、これでもかと言うほどピントがあったのがわかった。
「あれ・・・っていうか、お前・・・」
メジはある一人の人物に焦点があっていた。
見つかったその人物はバツが悪そうにしてメジに背を向けた。
そんな態度が通用するほど、誰かが誰かに気を利かせられるような状況ではない。
「久しぶりだな!!!」
メジは何も考えず、悪気もなく、ただ再会出来たことが嬉しくて、その人物に声を掛けた。
「・・・・・あぁ」
パンジーは返事をするかどうか迷った。
出来れば気づかないで欲しかった。
しかし、気がつき声を掛けてくれたメジを無視することも出来なかった。
結果、歯切れの悪い返事を口からこぼすことになった。
「パンジー、メジと知り合いだったのですか???」
ツシカは驚いていた。
「あぁ・・・・・」
力弱い返事だった。
「知り合いも何も、数年前まで毎日のように遊んでいたよな???」
「あぁ・・・・・」
「本当なのメジ・・・???お母さん全く知らなかったわ!!!」
「こいつ、俺たち以外に自分のことを知られたくなかったみたいでさ・・・。とはいえ、俺もコイツの生い立ちや家族構成みたいなところまでは知らないんだけど、一緒に遊んでいると面白かったから、いつも一緒にいたんだ・・・だよな???」
「あぁ・・・・・」
尚もパンジーの声は小さかった。
ニニとムーンのパンジーに抱いていた不安がほんの少しだけ解消された。
それでもまだ不十分。
しかし、何となくパンジーの隠していることは、自分たちにとって不利益を被るようなことではない気がした。
そんな中、俯くパンジーをツシカはじっと見つめていた。
「なぜ隠す必要があったのだ???」
ドラキュラがお得意の直球を投げた。
「それは・・・・・」
何かを言いかけたその時だった。
「ガッハァァァ、ボボボボボボボボォォォォォ!!!!!」
メジが苦しみだしたのである。
「メジ・・・???どうしたの・・・???」
メグは再び不安で押しつぶされそうになった。
「ガ・・・ガ・・・ガハァァァァァ!!!!!」
ボトリ・・・・・。
「ほう・・・やはりか・・・」
メジの吐瀉物を見て周りが驚く中、ドラキュラは冷静だった。
なぜなら幾度となく見て来たからである。
いつも事が起きる度に目にするこの"虫"を・・・。
「これって・・・」
ムーンが何かを思い出した。
「旅の目的だ!!!」
そう言ってドラキュラは地を這う虫を人差し指と中指で摘みあげた。
「やっぱりこの国と関係があるのですね・・・???」
ニニの目つきが真剣になった。
「だろうな・・・。少なくとも第二ガサ王国には存在しているのではないか・・・???」
ドラキュラの推測に賛同するように、ニニとムーンは頷いた。
「そうと決まればですね・・・」
ニニがドラキュラの顔をチラリと見た。
「あぁ、第二ガサ王国に向かうとするか!!!」
「あのう・・・余計なお世話かもしてませんが、第二ガサ王国へ向かうのであれば、一旦、この国の国王にお会いになってからの方が良いと思います。このまま勝手に行けば最悪の場合、不法侵入なんてことになりかねませんから」
「ふ〜む。確かにそうだな!!!よし、ではまずはガサ王に会いにいくとしよう!!!」
「とりあえず今日は寝ましょ!!!」
沈み終わりそうな太陽をよそ目に、今からでも謁見に行きそうなドラキュラをムーンはやんわりと静止した。
なぜなら、ムーンは長旅で疲れていたから。
ドラキュラを足止めしたかったというより、疲れを回復させたかったのである。
もう動きたくなかったのである。
「ですね。今日も今日とて、色々あって疲れましたよ!!!」
ニニもムーンに賛同した。
「みなさん、よろしかったらウチで夕食を食べていきませんか???」
突然のメグの提案にみんなの顔が綻んだ。
「えぇ〜、良いんですかぁ〜???」
"そんな言い方すると、狙っていたみたいに思われますよ"
と、心の中でムーンに突っ込んだニニだった。
「もちろんです!!!だって息子の命の恩人なのですから」
メグは満面の笑みで答えた。
その様子に一行も笑い返した。
それからメグは調理人たちと夕飯作りを始めた。
ガサ王国の郷土料理などに舌鼓を打ちながら、ドラキュラたちはひと時の休息を満喫した。
ドラキュラが"何にでもフタをする能力"を使い、一旦、屋敷の屋根を補修した。
"それ以上は自分たちで何とかする"
そんなメジの言葉に対して、ドラキュラは無理やり優しさを押し付けるようなことはしなかった。
しかし、
"よかったらお布団やベッドもご用意させてください"
という誘いには、存分に甘えた。
男性陣、女性陣に別れてお風呂にも入った。
ツシカはパンジーがいたため一緒に入るのを拒んだが、ドラキュラもニニも今回はあまり突っ込まなかった。
パンジーもツシカの態度に疑問を持つことはなかった。
それよりも何か他のことに気を取られているようだった。
相対的に見れば楽しかった夜は、あっという間に終わった。
翌朝・・・。
「じゃあな!!!」
そう言ってドラキュラはメグとメジに別れを告げた。
「ありがとうございました」「ご飯美味しかったです」「これからもお幸せに」
ニニ、ムーン、ツシカが順に挨拶をした。
「じゃあ、またな・・・」
口ごもりながらメジはパンジーに挨拶をした。
「さっ、お城へ案内してちょうだい!!!」
切り替えの早いムーンにせかされ、パンジーはドラキュラたちをガサ城へ案内した。
「見えたぞ!!!」
パンジーの指差した先には、この国の中心だと誇示するかのように、力強くそびえ立つ城が見えた。
「おぉぉぉ、これがガサ城・・・」
ニニは見入った。
「我が家とはまた違った豪華さがあるな!!!」
ドラキュラもガサ城を見渡した。
"我が家って・・・"
と、ムーンは心の中で突っ込んだ。
「じゃあ・・・俺はこれで・・・」
城門の数m前までドラキュラたちを送り届けたパンジーは、
そう言って、足早に城から離れようとした。
そんなパンジーに声を掛ける者がいた。
「えっ・・・???坊っちゃま・・・???」
休憩から戻って来た門番が驚きのあまり声を上げた。
『えっ・・・???』
ニニとムーンとツシカが声を合わせて驚いた。
「ヤバいっ・・・!!!」
そう言ってパンジーはその場から逃げようとした・・・が、
ガシッ!!!!!
ドラキュラに腕を掴まれてしまった。
「どこへ行くんだ???坊っちゃま???」
ドラキュラはニンマリと笑った。




