第42話 ご本人さま登場
「ウガガガガガガ・・・、お前・・・、は・・・、誰・・・だ・・・???」
メジがメグの前に立ったドラキュラを疎ましく思って言った。
「俺か???俺はドラキュラというものだ!!!」
「ド・・・、ラ・・・、キュ・・・、ラ・・・???あの・・・、おとぎ話・・・、に出てくる・・・、恐怖の・・・、象徴・・・??」
「まぁ・・・、俺は自分がそんな恐怖の象徴になっていることなど知らなかったのだが、どうやらそのようだな」
自分を褒めている訳ではないのだが、これはこれで何だか照れくさいドラキュラであった。
「ハ・・・、ハ・・・、ハ・・・、僕は・・・、力を手に・・・、入れたんだ・・・、見てわかるだろ・・・」
"強大な植物"
それが今のメジのイメージである。
数mものツルをいくつもムチのようにしならせて、人が近づくのを威嚇している。
大木に手足が生えたような見た目は人型とも言えなくはない。
しかし、それはシルエットだけの話。
体全体から枝やツルが伸び、風に棚引いたり、体に巻き付いたりしている。
その様子は異形という以外なかった。
「今の僕に・・・、かかれば・・・、ドラキュラなんて・・・怖くも何ともないね・・・」
「少しずつ言葉が流暢になっていませんか??」
ニニの気づきにドラキュラも頷いた。
「多分、変貌に体が慣れてきたのだろう・・・」
「では、このまま時間が経てば・・・」
ニニが不安いっぱいに聞いた。
「あぁ、この子は異形の体に脳も乗っ取られ、元の人間の姿に戻れなくなるだろう」
「そ・・・、そんな・・・」
メグは腰を抜かしたまま口に手を当てた。
「そもそも、これは一体どういうことなのですか??人間が植物と一体化しているなんて聞いたことがないですよ!!!」
「だから、俺たちの想像を超える植物が第二ガサ王国にはいるということだろう・・・。それか・・・。なんにせよ面白いじゃないか!!」
「待ってくださいドラキュラさま!!どんな戦い方をするおつもりかわかりませんが、メジの命を優先させてくださいよ!!」
「わかっている!!命があれば良いのだろう??」
「えぇ・・・、そうです!!!って、・・・え???」
ニニは勢いでドラキュラの言葉に頷いたが、何だか嫌な予感がした。
「まぁ、気絶させるくらいは我慢してくれよ!!」
そう言ってドラキュラは暴れるメジに向かっていった。
「あんた、よく親の前でそんなこと言えるなぁぁぁ!!!」
ニニの叫びはドラキュラには届かなかった。
「んぎぎぎ!!!この僕に逆らおうというのかい??」
もうすっかり言葉が流暢になったメジがドラキュラに尋ねた。
「逆らう・・・、違うなぁ、これはしつけだ!!!」
そう言ってドラキュラはパンチを繰り出した。
ドガァァァァァンンン!!!!!
家の屋根に登ったメジにドラキュラの一撃が決まった。
ズザザザザザザザ!!!
メジはドラキュラのパンチの威力で家の左端から中央あたりまで屋根の上を滑っていった。
「な・・・、なんて力???お前人間か???」
「あぁ、今のお前と違って純粋な人間だ!!!」
「何を言っているのかわからないなぁ!!!僕だって人間だよ!!!」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
身体中から伸びるツルを使ってメジがドラキュラに攻撃を仕掛ける。
バシン!バシン!バシン!バシン!バシン!
バシン!バシン!バシン!バシン!バシン!
ドラキュラはメジの攻撃を全て捌いた。
「人間は体からツルなんて生えねぇよ!!!」
バッガアァァァンンン!!!
今度はドラキュラのキックがメジにヒットした。
「あぁ・・・、メジ・・・」
メグは心配そうにドラキュラとメジの戦いを見ていた。
「ドラキュラさまは、本当にメジの命のことを考えているのだろうか・・・??」
この言葉には"それほどまでに自由に戦っている"という意味が込められているのだが、隣で聞いていたメグはニニのそんな含みなど汲み取れるはずもなく、ただただ心配でニニの方を見てしまった。
ニニはそんな不安でいっぱいのメグの視線を感じとり、自分の今言った言葉に反応したのだとスグに悟った。
そしてすかさずフォローした。
「でも、泣く子も黙るドラキュラさまですからね、なんとか上手いことしてくれるでしょう!!!」
他力本願なフォローだったが、それでもメグは安心したようで、再びドラキュラとメジの戦いに目を向けた。
「ちょっと遊んでやるとコレだ!!!調子に乗りやがって!!!良いだろう、そっちがその気なら僕も本気を出させてもらうぞ!!!ガァァァァァァ!!!!!」
メジの体が輝き始めた。
「おいおいおいおい、大丈夫かアイツ???」
パンジーが心配そうにニニに尋ねた。
「大丈夫ですよ!!!ドラキュラさまはこういうのが大好きですから・・・」
と言いながら、ニニは少し不安に思っていた。
それはドラキュラの動きについてだった。
ドラキュラは上手く避けながらメジに攻撃を当てていた。
しかし、その動きにどこか迷いのようなものがあるように見えて仕方なかったのである。
そんなニニの予感は当たっていた。
さぁ、どうしたものか・・・。
アレを試してみたいのだが、どうしても躊躇してしまうなぁ・・・。
多分、こいつが植物だからだろうなぁ???
上手くいくいかないは、この際二の次。
そもそも上手くはいくだろう・・・。
問題はそこじゃない!!!
この植物に対してアレを試すというのがネックなのだ。
嫌悪感が全く消えん。
そんな自問自答を繰り返しながら、ドラキュラはメジの攻撃を避け続けていた。
「ドラキュラさまぁぁぁ!!!集中力がかけているんじゃないですかぁぁぁ???」
ドラキュラの苦悩など知らずにニニがはっぱをかけるように言った。
ニニもドラキュラがそこまで考えながら戦っているなど想像ついていなかった。
「ふんっ!!!いいように言ってくれるわ!!!」
と、ドラキュラはボソリと呟いたつもりだったのだが、ニニにもしっかりと聞こえていたようで・・・。
「す・・・、すみませんでした・・・」
と、ニニは落ち込んでしまった。
「そんな態度を取ると俺が悪者になるだろう!!!」
どうやら、ドラキュラの敵はメジだけではなかったようだ。
「もうよい!!!逆に踏ん切りがついたわ!!!」
そう言ってドラキュラは立ち止まった。
「何だ降参か???」
メジが言った。
「は???まだ寝ているのか???寝言は寝て言うのだな!!!降参じゃない、終決だ!!!」
ドラキュラはそう言って笑い、キバを覗かせた。




