第41話 反抗期
「子供を驚かせてほしい??」
「はい。子供が全然言うことを聞かないのです!!それで・・・」
「ちょちょちょ・・・ちょっと待ってください!!子供が言う事を聞かないからドラキュラさまの力を借りると言うのですか??」
「はい・・・」
母の力は規格外に凄かった。
「はぁぁぁ・・・」
"この人には自分の話が通じない"
だからと言ってドラキュラの凄さをイチから説明するような野暮なことはしたくなかった。
何よりも時間が惜しいということもある。
ニニは諦めと共にため息をつき、早々に自分の考えを主張することを止めた。
「そもそも子供というのは大人の言うことを聞かないものではないのか??」
ニニのモヤモヤなどつゆ知らず、ドラキュラは食い気味に言い返した。
しかし、いつも自分のペースで話すドラキュラとしては、それは珍しい事であった。
「ごもっともです!!しかし・・・」
「どうしたのですか??」
思わずムーンが聞いた。
「"ただいうことを聞かない"というのであれば、子供の成長過程で多くあると思います。しかし、今回のそれは今までと様子が違うのです!!こう・・・、上手く説明出来ないのですが・・・、とにかく違うのです!!いきなり人が変わったかのような印象さえ受けました!!!叱られればスグにやめたり、私が気づく前にごめんなさいと謝ってきたり、悪いことをしたことがないわけではありませんが、それでも素直な良い子でした。それなのに最近のあの子は・・・」
「それでも、今の話を聞いていると"ただの反抗期なのでは??"と、思ってしまいますがね・・・」
一行を代表してニニが言った。
「私も初めはそう思いました。ですが、他にもあるのです。よくわからない言葉を口にしたり、空に向かって話し始めたり、不気味な行動も増えてきたのです。私はもう心配で心配で・・・」
育児の悩み相談かのように思えた内容が、だんだんと雲行きを変えてきた。
いつしか誰も"子供のただの反抗期"という決断を口にしなくなった。
「様子が変わったという日にですね、何でもいいので変わった出来事などありませんでしたか??」
「うぅん・・・」
女が何でも良いから思い出そうとしているのが一行に伝わった。
「そういえば、あの日はウオウの方まで遊びに出かけたと言っていました」
「ウオウ・・・???」
「えぇ!!あのウオウです。ご存知ないですか・・・??」
「ごめんなさい。私たち観光で初めてこのガサ王国に来たもので・・・」
「すみません!!そうとは知らず、失礼な言い方をしてしまいました!!」
それなりに裕福な家庭なのだろう。
振る舞いも含め、着ている洋服などからも品の良さが感じられた。
「ウオウは、別名を第二ガサ王国と言います」
「第二ガサ王国???」
「はい。ご存知の通りガサ王国というのは自然豊かな国です。その自然は私たちが生まれる遥か昔から育まれてきました。その中で植物も進化を遂げてきたのです。私たちが生まれる前の植物の中には毒を持っていたり、人を襲ってきたりと人間との共存が不可能な品種が多く存在しました。それらとは逆に、綺麗なものや良い香りのするものなどもありました。そういった人間に良い効果を与えるものだけを採取し、人の力で増やし、生活に溶け込ませ、出来たのがこの今私たちがいるガサ王国なのです」
「なるほど、この国にはそんな背景があったのですね・・・」
「はい。そして人に害を及ぼす植物たちはむげに扱われ、野放しにされていきました。しかし、そんな植物たちも少しずつ進化を遂げていたのです。そして、それらはついに人間の手には負えないほどの凶暴さを手にいれたのです。そこで国王は苦渋の決断をしました。そのエリアを隔離したのです」
「それが第二ガサ王国の誕生・・・???」
ムーンが恐る恐る言った。
「はい。隔離されているとはいえ、近づくだけでも危険とされている場所です。エリアの外にさえ中の植物までとはいかないにしろ、凶暴な植物が生い茂っていると聞きます。そんな危険な場所にあの子は・・・」
「なるほど、それだけ凶暴な植物が生息しているとなるとウオウへ行ったことにより、何かしらの影響を受けた可能性は高いですね???」
「うぅぅむ。とりあえず一度その子に合わせてもらうとするか??」
「おいおいおい!!!そんな寄り道してていいのかよ??俺が城へ案内するって話はどうなったわけ??」
パンジーが苛立ちながら言った。
「その後だ!!多分、その方が良いと思う・・・」
ドラキュラには何か意図があるようだった。
「まぁ、困っている人を見過ごすわけにもいきませんからね」
ニニも今回ばかりはドラキュラの案に賛成のようだった。
「私としては、ドラキュラが子供に対してどう出るのかに興味が湧いているのだけれどね・・・」
意地悪そうな笑みを浮かべてムーンは言った。
「ありがとうございます!!!ありがとうございます」
女は何度も頭を下げた。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私の名前はメグと言います。ちなみに息子の名前はメジです」
メグにならってドラキュラたちも順に自己紹介をした。
パンジーも渋々自己紹介をした。
そんな時でも、やはり何かを隠しているような雰囲気がして、気がつくとニニとムーンは鋭い目つきになっていた。
そして、メグはドラキュラたちを自宅へ案内した。
パンジーは専売特許だった案内を見ず知らずの女に奪われたことに腹を立てていた。
しかしメグの話を聞く内に、母親としての愛の温もりや尊さがひしひしと伝わってきて、いつしかドラキュラたちと同じようにメジを心配するようになっていった。
「あちらが私たちの家になります」
メグの指差した先を見て一行は"やはりな"と思った。
明らかに周りの家と比べて違う。
専門的なことはわからないが、使われている素材が違う。
窓の並び方から推測するに4階建てのようだ。
周りの家は高くても2階建てである。
家の横のサイズも大きい。
そもそも周りを塀で囲まれている。
庭もある。噴水も見える。
メグから感じられた品性もこの家を見れば納得だった。
「メジですが、今日は大事をとって学校を休ませています。昼食後にお昼寝をしたので、そのタイミングで私は買い物に出かけました。なので、もしかしたらちょうど起きているくらいかもしれません」
と、門の前でメグが言った時だった。
ドガァァァァァンンンンン!!!
4階の左端あたりから爆発音が聞こえた。
見ると天井をブチ破って5〜6mはあろうかという異形の何かがうごめいていた。
「あ・・・、あぁ・・・、あの部屋はメジの部屋・・・」
突然の大きな音と目の前の衝撃的な光景にメグは腰を抜かした。
「あ・・・っ、マ・・・、ママ・・・、おか・・・、えり・・・、メ・・・、ジ・・・、お腹が・・・、空い・・・、た・・・、よ・・・」
異形な姿となったメジは、メグを見つけこちらに向かってきた。
「おたくの息子さん、寝起きが悪いですね???」
そう言ってドラキュラはメグの前に立ち、構えをとった。




