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第39話 二度あることは三度ある

((着きました!))

 シータの声・・・、いやテロップに反応したドラキュラたちが一斉に前方へと目を向けた。

 そこはガサ城の城下町入り口だった。

 お昼過ぎということもあり城下町へと向かう人や荷馬車などがたくさん並んで、城下町へ入るための審査を待っていた。

 審査は回転が速く次から次へと行列ははけていった。


((では、私はここで))

 シータはドラキュラたちと向かい合い別れを告げた。

 そして別れを惜しむかのようにうつむいた。

 つむじの辺りから"別れたくない"と聞こえてきそうだった。


「その能力は俺が命を落とさない限り消えることはない!!!とはいえ、自分のさじ加減で使ったり使わなかったり出来るがな・・・。どう使うかはお前に任せるとしよう。もしコレからも使うのであれば、仕事にでも役立ててくれ!!!」

 シータはうつむいたまま頷いた。


「また会えるわよ!!!心配しないで」

 そう言ってシータを慰めるムーンの表情は寂しげだった。


「立派な馬車の運転手になってくださいね。応援しています!!!」

 ニニは晴れやかな笑顔で言った。


「お父さんを大切に・・・」

 ツシカは感慨深げに言った。


((みなさん、ありがとうございます))

 まるで涙が溢れているかのようにテロップが歪んでいた。


「じゃあな・・・」

 ドラキュラの言葉にシータはまたコクリと頷いた。

 そして馬に気合を入れ、新しいお客さまのところへと馬車を走らせて行った。


『・・・・・』

 ドラキュラたちに沈黙が流れた。


「見て、アレ!!!」

 ドラキュラたちはムーンが指差した方を見た。


((ありがとう))


((ありがとう))


((ありがとう))

 小さくなっていくシータの頭上で"ありがとう"という文字が、何度も何度も現れては消えていく。

 それはシータが心の中でつぶやいているつもりだった言葉が、知らぬ間に小さな声となっていたために起きた事だった。

 もちろん、シータ自身はこのことに気がついていない。


「バカね・・・、あんたの声、丸聞こえよ・・・」

 届くはずのない言葉を届かせる気もなくムーンは口にした。


「あいつのためにも、この国を平和へと導かねばな」

 "平和"・・・そんな言葉がドラキュラの口から出たことにニニもムーンも驚いて、反射的にドラキュラの顔を見てしまった。

 ドラキュラは"どうした??"というように、ちょっと驚いた顔をしていた。




 ワイワイガヤガヤ

 ワイワイガヤガヤ

 行列に並んだドラキュラたちの耳に城下町の賑やかな声が入ってきた。

 そんな久しぶりの賑やかさに聴き入っていると、長かったはずの行列は短くなり、あっという間に順番が回ってきた。


「どんな要件で??」

 ぶっきらぼうな声から想像のつく見た目、そんな男が言った。


「四人だ!!!買い物に来たのだが・・・???」


「はいっ・・・!!!」

 そう言って男は手を差し出した。

 どうやら何か証明するものが必要らしい。

 それをこの手に乗せろと言っているのだ。

 しかし・・・。


「うむ・・・」


 ギュッ!!!

 ドラキュラは自分が握手を求められているのだと思って、男の手を握ってしまった。


「なんでじゃぁぁぁ!!!」

 すかさず男が怒って言った。


「どうした???」

 ドラキュラは自分のミスに気づいていない。

 それどころか、自分が握手してあげたのに何の不満があるのだろうと不思議に思っているほどだった。

 それもそのはず、ドラキュラは自国では超有名な処刑人である。

 新しい処刑人が入れば、"ドラキュラさまのようになりたくて"という者も多くいるほどだ。

 すれ違いざまにサインや握手を求められることなど日常茶飯事。

 そんな環境にいたドラキュラに手を差し出せば、"握手を求められている"と判断されるのはしょうがないことだった。


「どうしたじゃねぇよ!!!買い物に来たのならちゃんと証明書を見せろよ!!!こっちは、近頃物騒な話ばかり耳に入るようになっちまって、検問を厳しくするように言われてんだよ!!わかったならホレッ!!!」

 そう言って男は、また手を差し出した。


「・・・・・」

 この沈黙はドラキュラが困っている沈黙ではない。

 "この生意気な男をどう成敗してやろう"と思考を巡らせているために生まれた沈黙であった。


「ごめん、ごめん!!!遅くなっちまった!!!」

 そんな考え中のドラキュラに馴れ馴れしく声をかけて来た者がいた。

 しかし、この男、ドラキュラがどれだけ記憶を掘り起こしても心当たりがない。


「お前は」

 "誰だ"という言葉を言いかけたが、男はそれを遮るように話を続けた。


「早くしないと店が閉まっちまうぞ!!!行くぜ!!!おっさん、コレがあれば良いよな!!!」

 そう言って男は通行証明書を見せた。


「ふんっ・・・」

 男はお茶を濁されたことに若干苛立ちを見せたが、これ以上引きずるつもりもなかったようで、通行証明書を確認した後、ドラキュラたちが門を潜る許可を出した。


「いやぁ〜、危なかったなぁ〜」

 男は昔からの知人であるかのようにフランクに話し始めた。


「いやいやいや、あなたどなたですか???」

 門を潜れるように、今まで空気を読んで黙っていたニニが、さすがに我慢出来なくなって聞いた。


「俺は・・・、うぅぅぅ〜〜〜んと、そうだな・・・、パンジーとでも呼んでくれ!!!」


「・・・・・」

 男の歯切れの悪さにニニは何かを感じ取った。

 "この男怪しい"そんな第一印象だった。


「まぁ・・・、私たちを町の中に通してくれたんだし、悪い奴ではなさそうだけど・・・、どう思う?」

 ムーンが小声でドラキュラに聞いた。


「信じてみても良いのではないか・・・???」

 "と言うと思った!!!"

 ムーンはそんな表情をした。


「そんな目で俺を見るなよ!!!よし、こうしよう!!!今から俺がこの城下町を案内してやるよ!!まぁ・・・、それで信じてもらえるかわからねぇけど・・・」

 パンジーは周りからの猜疑心を日光よりも強く浴びながら、ドラキュラたちの前に立ち町を案内し始めた。

 様々な店が立ち並ぶ中、ニニやムーンが行きたい店を次から次にパンジーに伝えた。

 するとパンジーは迷うことなくその店まで連れて行ってくれた。

 "本当にこの町を知っている"

 ニニもムーンもパンジーを見直し始めた。

 次第にドラキュラたちから質問することも増えていった。


「そう言えば、どうして僕たちを助けてくれたんですか・・・??」

 ニニが改めて不思議そうに聞いた。


「あんたらがどんな理由でこの町に来たのかは知らねぇが、困ってそうだったんでな。おせっかい焼いちまったんだよ!!!」

 そう言って笑ったパンジーの瞳は空を向いていた。


「ようパンジー!!!」

 数人の屈強そうな男たちがパンジーに声を掛けて来た。

 どこからどう見ても友達には見えなかった。

 一悶着ありそうな雰囲気がビンビンに立ち込め始める。


「もうっ!!!私たち何回絡まれんのよ・・・」

 ムーンが飽き飽きしながら言った。

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