第38話 3次元漫画
パカラッ!!パカラッ!!パカラッ!!
パカラッ!!パカラッ!!パカラッ!!
ドラキュラたちを乗せた馬車は軽快にガサ王国の大自然を駆け抜けていた。
「それにしてもさっきのシータときたらないわね!!!あの驚きようはちょっと笑っちゃったわ!!!」
((もうっ!!ムーン姉、その話はやめてって言ったじゃないですか!!))
「確かにムーンの言う通り。でもまぁ、目の前の光景を信じられなかったのでしょう・・・。吹き飛んでいった地破鳥をずっと見ていましたからね・・・フフフ」
((ちょっと・・・、ニニさんまで・・・))
ムーンやニニと親しげに話している、このシータという者、実は死神である。
シータというのは死神の本名であった。
地破鳥の件が終わり、いざ馬車に乗り込もうというところで、ドラキュラが死神の本名を聞いていないことに気がついたのだ。
そして本名を本人の口から聞き、シータということが判明。
すると距離が近づいた気がしたのか、ムーンは自分のことを"お姉さんのように慕って良いのよ"と言った。
それからシータは"ムーン姉"と呼ぶようになったのだ。
妹のいないムーンにとってはとても新鮮な響きで、呼ばれるだけで体全体がほんのりとした小気味よさに包まれた。
しかし、ここで一つ疑問が残る。
何故、普通に会話が出来ているのか??
という点である。
それは今から彼らが説明してくれる。
「それにしても"コレ"凄いですよね・・・」
ツシカが何とかみんなの話に入ろうとして、半ば強引に話しかけてきた。
「ツシカの言う通り。こんなのがあるなら最初から使えば良かったのに・・・」
ムーンはツシカの強引さなど全く気にしておらず、いつも通りにドラキュラに話しかけた。
「改めてですけれど、コレって一体どんな能力なんです・・・」
ニニもムーンと同じように何も気にしておらず、ドラキュラに尋ねた。
「これは自分の言ったことが頭の上に文字として現れる能力だ!!!」
((私にはその文字が全然見えないのですが、こうやってみなさんと会話が出来ているということは、ドラキュラさまの仰る通りなのでしょうね))
そう、現実世界にテロップが表示されるこの能力のおかげで、シータはみんなと会話が出来ていたのである。
テロップはホログラムのような性質を持っているため、手で触れることなどは出来ない。
しかし、感情に合わせてフォントや文字の大きさや色が変化するため、普通なら声の抑揚や間の取り方などから伝わるちょっとした感情の部分も相手に伝わりやすいというメリットがある。
会話が短調になったり、会話相手が退屈するような心配もない。
ちなみに、シータの本当の声は馬車の音にかき消され全く聞き取ることが出来ない。
「念の為言っておくが、あくまでも口から出た言葉が頭に表示されるだけだからな!!!本音が文字となって表示されるわけではないのだからな!!!その点は勘違いするなよ!!!」
ドラキュラはこの能力の注意点をしっかりとみんなに話した。
「それでも楽しい能力に変わりはないわよね!!!コレって例えば・・・、ねぇシータ、"一階"って言ってみてくれない???」
ムーンがそう言った意図は同音異義語の場合、どういった変換がされるのかを確認したかったからである。
((いっかいというのは"一回"ですか?"一階"ですか?もしかして"一介"だったりしますか??))
シータが質問に答えるよりも先に、疑問の答えは出てしまった。
「文字の変換はあなたが頭の中でイメージしたものになるってところかしら・・・」
((そうなのですか・・・???))
シータには自分の言葉が見えないため、全く持ってピンと来ていなかった。
「何だか、未来を先取ったような能力ですね???」
「そうね。じゃあ、こんなのはどう??1+1=2って言ってみて」
((1+1=2、コレで良いですか??))
「おぉぉぉ!!!しっかり数字に変換されている。じゃあじゃあじゃあ、こんなのは??"ゴゴゴゴゴゴゴ"って言ってみてください」
((ゴゴゴゴゴゴゴ))
「おぉぉぉぉぉ!!!凄い!!!」
ニニはシータの頭の上に表示された擬音にワクワクしていた。
「漫画を見ている様ですね。何だか奇妙な冒険が始まりそうです!!!」
ニニの目がどんどんキラキラしていく。
「確かに・・・。一般的な漫画は2次元だけど、コレは3次元の漫画って感じね」
「じゃあじゃあじゃあじゃあじゃあじゃあ、今度は"ざわざわざわざわ"って言ってみて!!!」
ニニのテンションはまだまだ上がり続ける。
((ざわざわざわざわ))
「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!めちゃめちゃ凄い!!!何だかこの後、巨額の金をむしり取られそう!!!じゃあじゃあじゃあじゃあじゃあじゃあじゃあじゃあじゃあ、次は・・・」
((もう・・・、ニニさん私で遊んでいませんか!!!))
「ごめん!!!次で最後にするから!!!」
「シータの言う通りよ!!!」
ムーンが少し強い口調でニニに言った・・・のだが・・・。
「だから次で本当に最後にしなさいよね・・・ふふふ」
どうやらムーンも楽しんでいる様だった。
「どうしようかなぁ・・・」
ニニは頭をフル回転させて最後に相応しいものを弾き出そうとしていた。
((無いなら、無いでいいんだけどなぁ・・・))
「うぅぅぅぅぅ・・・」
最後となると吟味してしまう。誰しもがそんな経験があるかもしれないが、そんな中でもニニは特に悩んでしまうタイプだった。
ガダンッ!!!ガダンッ!!!ガダンッ!!!
ガダンッ!!!ガダンッ!!!ガダンッ!!!
そんなニニを急かすかのように馬車の揺れが強くなった。
「ちょっとぉぉぉ、早くしなさいよぉぉぉ!!!」
揺れが強くなったことで車内に響く音も大きくなった。
それに合わせてムーンもニニにしっかりと聞こえるように声量を上げて言った。
「わかりましたよ!!!」
ニニはムーンの急かしに若干苛立って言った。
もちろん、ニニの声量も上がっていた。
その声は運転しているシータにもしっかり聞こえていた。
"わかりましたよ"という言葉を聞いたシータは、ニニが次に口にする言葉は擬音で、自分はそれを復唱すれば良いのだと思い込んでしまった。
「擬音・・・、擬音・・・、擬音・・・」
しかし、ニニは全く持って思い浮かんでいなかった。
小声で呟きながら良い擬音は無いのかと考えていた。
ところが、シータはニニの呟きを聞いて要求されたのだと受け取ってしまった。
そこにニニの声が小さくて、シータが上手く聞き取れなかったという事態が重なる。
結果・・・。
((ギョーン!ギョーン!ギョーン!))
「うわぁぁぁ!!!シータが黒いスーツ着た奴らに撃たれたぁぁぁ!!!」
ニニは度重なる偶然によってこうなったことなど全く意に介さず、目の前の出来事に全乗っかりした。
「いやぁぁぁ!!!シータ星人・・・、いや死神星人、大丈夫???この後、重力に潰されちゃったりしない???」
ムーンもニニと一緒のノリだった。
二人のテンションをとにかく鬱陶しく感じたシータは、小声ながら怒りをあらわにして言った。
しかし、興奮しすぎたシータは大事なところで噛んでしまったのである。
結果・・・。
((いいかげんにしてくだちぃ!))
100点の返しをしてしまった。




