第30話 肌が荒れそうな話
「いきなり現れてガサ王国に一緒に行ってくれだと??一体どういうことだ??」
「実は・・・、ポロ・アチチさまなのですが・・・。ボリべとの戦闘で分身が本体に戻った後から、連絡が途絶えてしまったのです」
『・・・』
ドラキュラたちはツシカの話に聴き入り始めた。
「みなさんもご存知の通り、ポロ・アチチさまは虫の秘密を調査するためガサ王国に向かわれました。あの危険な虫を調査する上で、何かの事件に巻き込まれたのだと私は考えます・・・」
ツシカは俯いた。
「それで安否を確認するために、俺たちにも一緒に来てほしいという訳か???」
「はい・・・。本当は自国の部隊で向かうべきだということは十分わかっています。しかし、ボリべとの戦いを見ていた私たちからすると、自分たちだけでは心許ないというのが実状です。私たちの部隊だけでガサ王国に向かってもポロ・アチチさまを見つけることは出来ないでしょう・・・。自分で言っていて恥ずかしいですが・・・」
ツシカは苦悶の表情を浮かべていた。
「それだけならまだしも、最悪の場合・・・あの虫のようなものがまだまだたくさんいた場合、私たちは体を乗っ取られ、逆にポロ・アチチさまに迷惑を掛けてしまうかもしれません!!!それでは本末転倒です」
「流石は二番隊の隊長といったところか、冷静に分析出来ている。自分たちの未熟さともしっかり向き合っている。その上で出した答えなのであればしょうがないか・・・」
「ということは・・・???」
ニニが軽く煽った。
「あぁ、連れて行ってやろう!!!」
「ありがとうございます!!!」
ツシカは満面の笑みで御礼を言った。
「ドラキュラって、何だかんだ言って優しいわよね・・・」
少し厳しめに言ったムーンであったが、その表情はとても柔らかかった。
「フフフ・・・」
誰にも聴こえない声でニニが笑った。
「それはそうと・・・」
そう言ってニニはツシカに近づき、身体中をジロジロと眺め始めた。
「ふむふむ・・・。遠目からは華奢に見えますが、じっくり見ると意外や意外、肉付きがしっかりしている!!!やはりホッカ王国2番隊隊長・・・。かなりの実力者だとお見受けする」
「は・・・、ははは・・・、どうでしょう??」
ツシカはニニの態度にただただ困っていた。
「当たり前だ!!!実力者でなくては困る!!わざわざお荷物を増やしてガサ王国に行くわけにはいかんからなぁ。それでは男とボリべを城に置いてきた意味がない!!!」
「は・・・、ははははは・・・」
ツシカの表情筋は今にもつりそうであった。
「ホッカ王国の部隊と言えば、なんと言っても1番隊隊長のコダテが群を抜いて有名ですからね・・・。他の隊長の話はほとんど入ってこないですよ。ですから2番隊隊長と聞いてどんなモノなのかと興味があったのです。お気を悪くしたのなら申し訳ございません」
「い・・・、いえ・・・、全然気にしてなんかいませんよ・・・。コダテかぁ・・・。はぁ・・・」
「ちょっと、ニニ!!!あんたのせいで隊長さんがえらく落ち込んじゃったじゃないのよ!!」
「まぁ、私は事実を言ったまでですので」
「あんた、こういう時、気をつかえないのね???まだまだ卵なのがわかった気がするわ」
自分の態度に自信満々のニニをムーンはチクリと皮肉でつついた。
「コダテかぁ・・・。ふむふむ」
「ちょっと、ちょっとドラキュラさま??今、闘争本能が口からこぼれませんでしたか??」
「何を言っている!!!そういう奴がいるのだなぁと頭にとどめておこうと思っただけだろうが!!!ニニよ、お前そういうところあるぞ!!!」
「そういうところって・・・」
"それは自分だろ!!"とは言えないニニだった。
「色々言ってるけれど2番隊隊長なんだから戦力になるわよ!!ごちゃごちゃ言ってないで早く行きましょうよ!!」
ドラキュラたちは城下町をぶらりと見学した後、ガサ王国へと向かい歩を進めた。
テッカテッカテッカ
道中には、大きく手を振り満面の笑みで歩くムーンがいた。
「何だか肌がテカテカしてませんか??」
誰も触れないので、辛抱たまらずニニが言った。
「えっ??わかっちゃう感じ??」
面倒臭い空気が流れ始めた。
「実はコレ、さっき城下町で買ったのよ!!!噂に聞いてたギルティ王国のコ・ス・メ!!!」
「はぁ・・・」
ニニは空返事をした。
自分が開けてはいけない、トークのパンドラの箱を開けた気がしたからである。
「このコスメねぇ・・・、ギルティ王国が独自の抽出方法で植物エキスを抽出していて、それが年齢・睡眠不足・栄養不足などどんな状態の肌にも効果抜群ってことで今話題なのよ!!!さらに、その抽出方法ゆえギルティ王国でしか手に入らないときたわけよ!!!ギルティ王国って基本他国の人たちは入ることができないじゃない??それで闇取引が行われたりもしているのよ!!値段も売値の10倍近くで出品されてるなんてザラ。物によっては100倍で取引されている物だってあるのよ。そんな貴重なコスメを正規の価格で手に入れることができたのよ!!!本当に夢みたい!!だから、私こんなに買っちゃった」
そう言ってムーンは登山バックほどの紙袋を広げて見せた。
「へぇ〜〜〜・・・」
ニニは抑揚のない返事をした。
全く興味がなかったからである。
尚且つ、この話を早く終わらせたかったからである。
「我が国のコスメがそんなに世界的に有名だとは知らなかった・・・。そんなに違うのか???」
ドラキュラは全く悪気なくムーンに聞いた。
(おいぃぃぃぃぃ!!!何で話を膨らませようとするんだよ!!今、いい感じで終わろうとしていただろうが!!もうこの話聞きたくないんだって!!!空気読めよ!!)
と、ニニは心の中でドラキュラに突っ込んでいた。
「全然違うわよ!!!手に取るだけでわかるわ!!そして、肌に塗ってもわかるの!!さらにはさらには、馴染ませている時にもわかるわ!!まず手に取った時に感じる違いから説明するとね、他国のものと違って・・・」
それから1時間以上もムーンの熱弁は続いた。
"このストレス、肌に悪いわ!!"
と、ニニは心の中でつぶやいた。
「ところでニニよ、ガサ王国まではあとどのくらいあるのだ??」
「そうですね。ホッカ王国と同じように隣国ではあるのですが、ガサ王国のお城は国の中心部にあるため、ホッカ王国の時よりも時間が掛かると思います。倍の時間は見ておいた方が良いでしょう」
「そうか。では、旅を楽しみながらのんびりと向かうとするか???」
「そうですね!!!」
ニニはニッコリと笑った。
「私にはこのコスメがあるから、何が来たって大丈夫よ!!!」
ムーンも笑った。
「ど・・・、どうなるんだ・・・、このメンバーかなり曲者揃いだぞ・・・。でも、楽しくなりそうだ・・・」
様々な不安を抱えてツシカも足並みを揃えた。
晴天とも曇りとも言えない空の下を四人は歩いていく。




