第29話 上級者過ぎ
「全く・・・、この孫と祖父は・・・」
ドラキュラとバーツのやりとりにニニは飽き飽きしていた。
「それはそうと・・・、その男は誰なのだ???」
バーツはボリべの命を狙った男を指差して言った。
「・・・」
男は黙ったままだった。
「しゃべる気はゼロか・・・。それならそれで良い!!」
バーツよりも先に、ドラキュラが反応した。
しかし、ドラキュラには男の素性について見当がついていた。
その様子があまりにも自信に満ちていたため、男は不安を感じた。
そんな男を横目にドラキュラは男に関する推察を始めた。
「まず、この男が持っている武器。これはとある国で生産されているものに非常に酷似している。俺も本でしか見たことがないから確信には至らないが・・・。そして、こいつが身につけているこのネックレスもまた、武器と同じ国で大量生産されていると本で読んだことがある。そして・・・」
そう言うとドラキュラは男の着ていたオリーブの羽織の肩部分をめくった。
「この数字だ!!!」
男の肩には"1796"という数字が刻まれていた。
「とある国では法令で、体の一部に何かしらの数字を刻まなければならないというものがあると聞く。そしてその国は先の二つに関する国と同じ国だ。その国は・・・」
『・・・』
バーツ、ニニ、ムーンは息を呑んだ。
「ガサ王国!!!」
「ガサ王国って、地の国と呼ばれているあの・・・???」
ニニが確認するように言った。
「そうだ!!コレは俺の予想だが、ポロ・アチチの本体もそこにいると思う」
「そう言えばアチチが言ってたわよね。虫のことを調べているとかなんとか・・・」
「あぁ・・・。ガサ王国に行けばアチチにも会えるだろう!!!」
「・・・」
ニニはドラキュラの言葉を聞いてなんだか違和感を感じた。
その違和感が何なのかちょっと考えたのだが、答えはすぐに導き出された。
「もしかしてドラキュラさま・・・。アチチと戦いたくて、その男を口実にガサ王国に行こうとしているのではないでしょうね??」
ドキィィィィィィィンンン!!!
ドラキュラは固まった。
しかし、黙っていると怪しまれると思いすぐさま話しを続けた。
「な・・・、何を言っている??は・・・、はは・・・、そんなわけないだろ!!このままだとこいつが不憫で可哀想だから力になってやろうと思っただけだ!!人助けだ。人助け・・・」
ボリべを指差しながら反論するドラキュラ。
その目を猜疑心丸出しで見つめるニニ。
ドラキュラは耐えられず目を逸らした。
「もうわかっていますから!!!」
ニニはジト目のまま言った。
「わかりやす!!」
ムーンも少し呆れて言った。
オホン!!!
ドラキュラはわかりやすく話を切り替えるきっかけを作った。
「まぁ、要するに、俺たちの次の目的地はガサ王国だ!!!あの虫については、まだまだわからないことが多すぎる。それに地の国と言われるだけあってガサ王国は自然が豊かだと聞く。あの虫以外にも様々な昆虫や動物がいるのかもしれん!!中には人体に影響を及ぼすヤツもいるだろう。みんな油断するなよ!!!」
「はい!!!」
ニニは頼もしい返事をした。
「ええ!!!」
ムーンも頼もしい返事だった。
「えぇぇぇぇぇ、ちょっと待ってぇぇぇぇぇ!!!さっきからワシ全然話に入れてもらえないんじゃけどぉぉぉぉぉ!!!何か楽しそうにみんなで話し始めて、気づいたら話が締めに入ってるんですけどぉぉぉ!!!これって放置プレイってやつぅぅぅ!!!マジ??大マジ??何の前触れもなく放置プレイを始めるなんて、ワシの孫、上級者過ぎない???小慣れてない???大丈夫???本当に大丈夫???って、ワシを不安にさせるのも、もしかしてプレイの一種???嘘じゃろ???いつの間にかオプションまでついちゃってる???商売人としての才能もおありか???こんなことされたら飽きないって!!!一生続けてられるって!!!このプレイ一生モノだって!!!もう孫の可能性が、地平線よりも、水平線よりも遥か先まで伸びているんですけどぉぉぉ!!!」
バーツはドラキュラたちのやりとりを玉座で見守りながら、心の中でカーニバルを催していた。
「というわけだ、じいちゃん!!!」
ドラキュラのその言葉にハッと我に帰ったバーツは、再び表情筋をこわばらせた。
「うむ。気をつけていってくるのじゃぞ!!!」
「あぁ、必ず元凶を連れてきてやる!!!」
そう言ってドラキュラたちは王の間を出ていった。
そのまま長い廊下を歩き、出口へと向かって行く。
「ガサ王国か・・・。虫ねぇ・・・」
ムーンの顔が浮かない。
「ムーンは虫が苦手なんですよか??」
ニニがいやらしい表情で言った。
「そうよ!!!悪い???なら、あんたは大丈夫なわけ・・・???」
ムーンが負けじとニニに言い返す。
「当たり前ですよ!!!これでも処刑人の卵ですよ!!!虫ごときに驚いていてどうするんですか!!!」
「じゃあ、その肩に乗っている虫も何ともないってことね???」
「へ・・・???」
ニニは自分の肩に視線をやった。
するとバターの箱サイズの紫色をした虫が肩から顔に向かって、のそりのそりと動いていたのである。
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ニニの声が城中に響き渡った。
「何事ですか???」
「大丈夫ですか???」
「侵入者ですか???」
様々なところから兵士たちが心配して声をかけてくれた。
「はは・・・、ははは・・・。すみません。ちょっと驚いただけです。何でもありませんので、みなさんお仕事に戻られてください!!!」
「あれぇぇぇ〜〜〜。虫大丈夫なんじゃなかったっけぇ〜〜〜???」
先ほどのニニよりも悪どい表情でムーンが言い返した。
「何なんですかコレ!!!ひぃぃぃ、首を登ってきましたよ!!!」
「コレは私の召喚獣よ!!!」
そう言ってムーンはニニの首を登っていた虫を捕まえた。
「召喚獣・・・???」
「そう!!!私、召喚士になったの!!!」
「召喚士に???」
ニニは驚いた。
「ほう!!!」
ドラキュラもほんの少し驚いた。
「まぁ、あんたのおかげだけどね」
そう言ってムーンはドラキュラに微笑みかけた。
しかし、ドラキュラはムーンが投げかけてきた笑顔の意味を理解できないでいた。
首を傾げたドラキュラをムーンは面白そうに見ていた。
「ドラキュラさま!!!」
長い廊下を歩き終えた頃、城の入り口の方から兵士が走ってやってきた。
「どうした???」
「ドラキュラさまに会いたいと、お客さまがいらしていています」
「俺に・・・???」
「はい???」
ドラキュラのみならず、ニニもムーンも不思議に思った。
"ドラキュラにお客さま・・・???"と。
程なくして三人は城門に着いた。
すると、三人が出てくるのを確認して、一人の男が建物の影から出てきた。
「は・・・、はじめまして・・・、ドラキュラさま・・・。わ・・・、私は・・・、ツシカと言います・・・。ホッカ王国で2番隊隊長をしています」
男はなんとも挙動不審だった。
「ほう。で、その2番隊隊長が俺に何のようだ??」
「・・・」
ツシカはモゾモゾしていた。
何か言いたいことがあるのだけれど言えない。
そんな様子だった。
「冷やかしなら、時間がないので先に行くぞ!!!」
「待ってください!!!」
ツシカの目に覚悟が見えた。
「私と一緒にガサ王国に行ってください!!!」
こうして次なる波乱の幕が開いていくのであった。




