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第26話 横取り

 シュゥゥゥゥゥゥーーーストン!!!

 ボリべを地面に叩きつけたドラキュラは、ボリべにトムとヤムの家族の居場所を聞くため、地面に降り立った。


「終わってみると、こんなに呆気ないのね・・・。本当に私たちがこの男に恐怖していたのか???と、自分自身に問い掛けたくなるほどだわ!!!」

 サンは苛立ちよりも、自分のボリべを見る目が変わったことに驚いていた。


 ガシッ!!!

 地面に仰向けになって倒れているボリべの頭をドラキュラは片手で掴み、持ち上げた。

 しかし、ボリべは依然として意識を失ったままであった。

 その時である・・・。


 ズルン・・・。

 ボリべの口から先ほどの虫が出てきたのだ。

 虫は口から出ると飛んでどこかへ行こうとした。

 

 ガシッ!!!

 その虫をドラキュラが素早く捕まえた。

 そしてサンをジロジロと見つめて言った。


「その胸元から見えているものは何だ??」


「これ??これはポーチだけど・・・??」


「それを貸してくれないか??」


「いいけれど・・・って、もしかしてその虫を入れる気じゃ・・・???」


「正解!!」


「・・・」

 サンは言葉を失った。


「まぁ、いいわ!!命の恩人だしね」

 そう言ってサンはポーチをドラキュラに渡した。


「う・・・。うぅ・・・」

 そうこうしている内にボリべが目を覚ました。

 ボリべは自分の置かれている状況にピンときておらず、自分がドラキュラに頭を鷲掴みにされていることにひどく驚いていた。

 が・・・、スグに今までのことを思い出したような顔をした。


「よう、目が覚めたか??」


「あぁ・・・。色んな意味でな!!」

 そういうボリべの表情は憑きものが取れたかのようにスッキリとしていた。

 まぁ、実際取れたと言っても間違いではなかった。


「ならば教えろ!!クンの仲間の家族たちは何処にいる・・・」

 ボリべには反撃する意志も力もなかった。

 だから、トムとヤムの家族の居場所を素直にドラキュラに伝えた。


「それともう一つ・・・。"この虫"をどうやって手に入れた??」

 そう言ってドラキュラは、先ほどボリべの口から出て来た虫を見せた。


「知らん・・・」

 ボリべはドラキュラから目を逸らした。


「"その知らん"は、知っている時の"知らん"だぞ!!」


「・・・」

 ボリべは図星を突かれ返す言葉を失った。


「まぁいい。俺のところに来れば嫌でも話したくなるだろう」

 ドラキュラは不敵な笑みを浮かべた。

 その笑みがこれから起こる地獄の裏返しだとボリべはスグに感じ取った。


「待て!!わかった、話すから見逃してくれ!!」

 手のひらを返したかのように話すボリべの瞳は、これ以上傷つくのを恐れていることを語っていた。


「話のわかるヤツで良かったよ!!」

 もはやどちらが悪なのかわからない。


「あの虫は・・・、ポロ・アチチさまが調査をしている通り・・・」

 と、ボリべが話していた時である。


 ズドン・・・・・・。

 ボリべの頭を何かが突き抜けていった。


 ポタポタポタポタ・・・・・・。

 ボリべの頭から滴る真っ赤な血が無情に地面に溢れていく。

 ドラキュラは"何か"が飛んで来たであろう方向に目をやった。


「なんとか口を割る前に始末できた・・・。やはり、あいつは最後まで信用出来なかったか。あの欲深さは見込みがあったのだがな」

 男はドラキュラたちから数キロ離れた木の上からライフルでボリべの額を撃ち抜いたのだった。

 決して足場は良くない。

 さらには普通の者なら数十メートル先を狙うのもままならないほど木々が入り組んでいる。

 そんな場所から正確に弾丸を撃ったのである。


「ふぅ・・・。やれやれ、あっちもポロ・アチチのことなどで忙しいというのに・・・、他国のものに手を出すとこれだから困る!!これも発展・拡大のためには致し方ないことなのか・・・。しかし、これであの方も安心出来るだろう・・・。ではさっさと戻るか」

 男の足は早かった。

 遠距離武器を使用する者とは思えぬ脚力で、ライフルを抱えたまま、入り組んだ木々の隙間を正確に見分けて進んで行く。

 並の者が出来る芸当ではなかった。

 そう、男はとある部隊の隊長だったのである。

 正確な判断と軽い身のこなしは、頭脳も肉体も鍛え上げられている証拠だった。

 賢いその男は念には念を入れて、自分の射撃の最大距離からボリべを狙った。

 そうして抹殺が終わり次第スグに戻る。

 そんな計画を立て、今最終段階に来ているところだった。

 これだけ離れた場所から狙撃出来れば、"何者かに狙われた"ということこそ感づかれようと、どこの誰だかまでは分かることはない。

 証拠がなければ、自分たちが疑われるはずもない。

 男は抜け目のない計画でボリべ抹殺を企てていた。

 そして、その計画を実行するのに有り余る力も持っていた。

 だから成功した。

 と、思っていた・・・。


「よう!!!」

 凄まじい勢いで走り抜ける男の前から、自分を呼ぶ声がした。

 目を凝らすと前方にある木の枝の上に誰か立っていた。


 ゾクッ

 男は恐怖を感じた。

 まだ対峙して・・・というより視認して数秒の相手にである。


「なるほど・・・。こういう怒りもあるのだな。そう言えば昔、とある処刑人が罰するはずだった罪人が処刑室を飛び出したことがあった。その罪人の逃げた先にたまたま俺がいたので、俺が代わりに処刑してやったんだ!!そうしたら、その処刑人が怒ってな。その時の俺はまだ感情がなかったから、そいつがどうして怒ったのか理解出来なかった。それどころか代わりに処刑したことに感謝してもらえるだろうとさえ思っていた。だが・・・、今の俺には分かる!!自分の獲物を横取りさせることは、優しさでも何でもないってことがなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ドラキュラの苛立ちは顔からはみ出そうなほど表情にあらわれていた。


 バガァァァァァァンンン!!!

 男はドラキュラの怒りのパンチをくらい、地面に叩きつけられ気絶した。


「ったく、話を聞かなきゃならんヤツがどんどん増えていきやがる!!」

 そう言ってドラキュラが地面に落ちた男に近づこうとした時・・・。


 ズルン・・・

 その男からも虫が出て来たのである。

 その虫はボリべの口から出て来た虫によく似ていた。


「用意周到だな・・・」

 ドラキュラはポツリとつぶやいた。

 そして近い内に対峙するであろう相手が一筋縄ではいかないだろうと悟った。


 男を抱き抱えてサンとボリべのところまで戻るとボリべは意識を取り戻していた。


「命は大丈夫そうだな!!」

 ドラキュラはホッとした。

 ボリべに死なれてはそもそもの計画が流れてしまうからである。


「凄いわねこの結界」

 ドラキュラは結界を張る能力を使い、サンとボリべをその中に残して男を追いかけたのだった。

 結界には、怪我人が中に入ると治癒をしてくれる効果があった。

 とは言え、頭が貫通している人を治癒するほどの力は無い。

 ボリべが生きていたのは、虫に体を乗っ取られたことで異形の力を手にしていたからである。

 もちろんボリべが撃たれたのは、虫が体外に出た後であったが、その後遺症のパワーアップが良い意味で残っていたのである。

 絶頂時と比べると圧倒的に劣るが、それでも一命を取りとめるほどの回復力があった。


「では、戻るか!!よいしょっと」

 そう言ってドラキュラはボリべを担いだ。


「私はもう大丈夫!!歩けるわ」

 右肩にボリべ、左肩に暗殺者の男を担ぐドラキュラとサンは、教会で待つみんなの元へと向かった。

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