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第23話 分身のくせに

 異形・・・

 ボリべの姿は、二足歩行であること以外、人としての原型を留めていなかった。

 全身が真緑色、背中には羽らしきものが生え、頭にはツノのように太く大きな触覚が生えていた。

 その力もまた異形であり、ポロ・アチチとの距離を一瞬で詰め、腹を突き抜けるほどの強力な一撃を食らわせるほどであった。


「ボリべ・・・。何てことを・・・??」


「"何てことを??"ですか??分かりませんか??ならば教えてあげましょう。あなたが俺を失望させたからです!!こんな閉鎖された国で処刑を仕事にしているだけのボンクラに、遅れをとっている自国の王・・・。これが失望せずにいられますか??だから、そんな王ならいらないと判断したのです!!ここであなたとお別れし、これからは俺が王になります!!」


「そんな自分勝手な考えしかできない者が王になんてなれるわけがないだろ??」


「でも、あなたよりも力はありますよ!!」


 ドガガガガガガガ!!!

 ボリべの残った腕がポロ・アチチへ連続攻撃を仕掛けた。

 その様子をドラキュラはただ黙って見ている。


「やめろぉぉぉぉ!!!!」

 動こうとしないドラキュラとは対照的に、ニニはポロ・アチチを助けようとボリべに向かっていった。

 しかし、それをドラキュラが止めに入ったのである。


「止めないでくださいドラキュラさま!!このままではポロ・アチチの命が危ないです!!」


「大丈夫だ!!あいつは死んだりしない!!」


「大丈夫なわけないでしょ!!あんなに一方的にやられているのに・・・」


「気にするな!!それでも死にはしない」

 余裕を見せるドラキュラに、ニニは苛立ちを覚えた。

 そして、ドラキュラもニニの怒りを感じとっていた。


「怒っているな!!だから冷静に物事を判断することが出来ないのだ!!」


「私は目で見たものを信じているだけです!!」


「ならば、もっと良く見ろ!!とはいえ、そろそろ限界だろうがな・・・」


 ドガガガガガガガ!!!

 ボリべの攻撃はまだ続いていた。


「はははは!!ホッカ王国の王が手も足も出ないか??どうやら俺は強くなり過ぎたようだな・・・」


「・・・・・」


「おい!!遊び過ぎだぞ!!」

 ドラキュラが言った。


「ならばお前が止めに来れば良いだろうが!!」

 ボリべがドラキュラに言った。


「お前に言ってねぇよ!!」

 ドラキュラはポロ・アチチに向かって言ったのだった。


「あれ??もしかして僕ってしつこい??」

 全く苦しむ様子もなく、ポロ・アチチが言った。


「いやいやいや!!余計な気遣いさせてすまなかったね」

 ポロ・アチチはボリべに殴られながら普通に話す。


「ど・・・、どう言うことですか・・・??」

 ニニはポロ・アチチが苦痛の"苦の字"も見せない様子に混乱していた。


「お前は今どこにいるんだ??」

 ニニとは違い、全てに察しがついているドラキュラは驚く様子もなく、ポロ・アチチに言った。


「君は全部お見通しなんだね・・・。実は僕の本体は野暮用で今ガサ王国にいるんだ!!」


「何を言っている??」

 ボリべは二人の会話の内容が全く理解出来ない。


「まだわからんのか??お前が今殴り続けているのはポロ・アチチの分身だ!!」


「何・・・??」

 ボリべの手が止まった。


「えっ・・・??」

 ニニも驚いた。


「全く、人が本気で相手してやろうと思ったら分身とは・・・。本気なんて出せたものではない!!全くもって興醒めだ!!」

 ドラキュラが呆れて言った。


「バカな・・・。これほどまでに普通の人間と同じなのに、これが分身だと・・・??」


「ごめんねボリべ、本当はこう言う席って、本体が出席するはずなんだろうけど、ちょっとコッチが立て込んでしまっててさ。戻れなくなったんだよ!!でも、せっかくのお祝いの時だから、何かしらの形で参加したいなと思って・・・。それで申し訳なさを感じながら、渋々分身を送ったってわけ。バレなければこのまま参加したことにしておこうと思っていたのになぁ・・・。ドラキュラのせいでバレちゃったじゃないか!!とはいえ、こんなことになるくらいなら参加しなくて正解だったかな!!」

 ポロ・アチチ(分身)は皮肉を込めて笑った。


「ドラキュラさまは知っていたのですか??」

 ニニが半信半疑で質問した。


「当然だ!!この程度の技を見抜けないでどうする??」


「正直、私は・・・」

 ニニが申し訳なさそうに言った。


「技を使わないようにするあまり、関係の無い感覚までも遮断していたのではないか??」

 ドラキュラはニニの力に信頼を置いていた。

 だからこそ、"本当ならニニも気がつけたはず"という含みを持たせて聞いたのである。


「精進します!!」

 ニニもまた、強さに対して愚直であった。


「おっと、みなさまごめんあそばせ!!僕の本体の方に進展があったので、そろそろ分身はおさらばさせていただくよ!!」


「お前は一体どこで何をしているんだ??」


「僕が今取り込んでいるのは・・・。今しがた、ボリべに入っていったあの虫の調査さ!!」


「何!!」


「実は、僕も色々とその虫には迷惑掛けられていてね。元凶を探るべく、ちょっと自国を出て調査をしているところなのさ!!そんなことをしていたら、まさか自国でその虫に出会うとは・・・。何とも皮肉なこと」

 神妙な内容とは反対に、ポロ・アチチは軽いノリで淡々と話した。


「でも、こっちでも進展があったんで、悪いけれど分身は本体にかえらせてもらうよ!!」


「こいつはどうする??」

 ドラキュラは異形のボリべを指差して言った。


「君たちはギルティ王国に連れて行きたいんだよね??」


「あぁ!!」


「僕としてはそれで構わない!!ただ・・・」


「"ただ"なんだ??」


「出来れば、処刑はその更に先にある真実を見極めてからにしてもらえないだろうか??」


「"虫"のことか??」


「あぁ・・・。その虫による事件は各国で報告されている!!その虫に取り憑かれた者は力を手に入れる代わりに、異形の姿になってしまうらしい。今わかっているのは、その虫は人の欲が好物だと言うことだ・・・。そう考えると、もしかしたらボリべも被害者に一人なのかもしれないと思ってね・・・」


「人のことを部下思いとか言っておきながら、お前も大概だな!!」


「へへ。君とは長い付き合いになりそうだね!!」


「良く言うぜ!!分身のくせに!!」


「じゃあ、今度は本体で会おう!!」

 そう言い残すとポロ・アチチの分身は消えた。


「ニニよ!!俺は決めたぞ!!」


「な・・・、何をですか??」

 ニニは嫌な予感を感じながら聞いた。


「これが終わったらポロ・アチチを追う!!」

 満面の笑みでドラキュラは言い放った。

 それとは反対にニニの顔はやつれた。


「もう、好きにしてください!!」

 そしてニニは諦めた。


「そうと決まれば、こんなドーピング野郎さっさとぶっ飛ばすぞ!!」

 ドラキュラはボリべをまっすぐ見つめ、気合を入れ直した。

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