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05.罠

「これは、思ったよりひどいな」


新一、みちる、弥彦、京也の4人は坂を下った所にある、店が並ぶ街道に来ていた。

この道をしばらく進むと、駅へと続く道に出られる。


その街道はすでに荒れ始めていた。

店はどこもシャッターを下ろし、人もほとんど歩いていない。

たまに人を見かけても、互いに様子を見ながら、無言で去っていくだけだ。


「なんにもねえな」


「俺たちは、すでに後発組だったか」


周りをキョロキョロ見回す京也に、新一が呟く。

たまにすれ違う人も、自分たちと同じように物資を探しに来て、開いている店が見つからずにウロウロしているクチだろうと新一は考える。


「どうするのよ!

どこも閉まってるじゃない!」


「や、やっぱり皆、もう引きこもっちゃってるんだよ」


「どうするか。

個人経営の所はどこもそうだろうな。

駅前まで足を運ぶか、いや、この街道にもコンビニやスーパーがあったな。

まずはそこに行ってみるか」


新一は努めて冷静に呟く。

このよく分からない状況で、冷静さを失うことは危険なことだと新一は考えていた。


「それしかねえか。

ま、望みは薄いけどな」


京也が頭の後ろで手を組んで賛同する。


「京也は意外と冷静なんだな」


新一は一見のんきな京也を見て、クスッと笑った。


「あ?

悪いかよ。

これでも、それなりにヤバいとこをくぐり抜けてきてんだ。

こんなことで取り乱しても仕方ないのは分かってんだよ」


「いや、今はそれが頼もしいよ。

京也はそのままでいてくれ」


「はっ!

な、なんだよ!

当たり前だろ!」


新一に笑ってそう言われて、京也は照れたように顔を背けてしまった。


「ん?

おい、あれ」


京也は何かに気付き、そちらを指差す。


「スーパーだ!

開いてる!」


弥彦が大きな声を出して駆け出す。


「おい!

勝手に行くな!」


「弥彦!

まずは様子を見るんだ!」


「ぐえっ!」


新一と京也に首根っこを掴まれ、弥彦は首がしまりながら止まった。


「まったく、あんたはいつもびくびくしてるくせに、こんな時に勝手に行こうとするんだから」


みちるはやれやれと首を横に振っていた。


「うぅ。

すみません~」


弥彦はしょんぼりと項垂れていた。





「で、でも、なんで行っちゃいけないのさ。

早く行かなきゃ売り切れちゃうよ」


ようやく復活した弥彦が首を押さえながら尋ねた。

新一が弥彦の方をチラッとだけ見て、すぐにスーパーに視線を戻しながらそれに答える。


今は物陰に隠れて、スーパーの様子を窺っていた。


「他の商店は全部閉まってる。

物資は今や貴重品だ。

それなのに、あんなに解放しているのはおかしい。

善意から店を解放しているなら、表に誰か立っていてもいいだろう。

それに、店の奥の方の棚をよく見てみろ」


新一に言われて、弥彦とみちるは目を凝らしてみる。


「え、あ、あれって」


「荒らされてる、の?」


パッと見では分からないようにしてあるが、奥の方で地面に転がる商品や倒れた棚を見て、2人は驚いたように目を見張る。

よく見ると、ガラス張りの入口にも、少しヒビが入っている所がある。


「ああ。

すでに何人もが入り込んで、一通り物色したあとだろう。

にも関わらず、目に見える部分はキレイに戻されている」


「嫌な予感しかしねえよな」


京也の呟きに、新一も頷きで応える。




「あ!あれ!」


「だ、誰か来るよ!」


みちると弥彦が、スーパーに向かう人を見つける。

家族なのだろう。

父親と母親、大学生ぐらいの女性の3人だった。


キョロキョロと周りを見回しながらも、開いているスーパーに安堵の笑みを浮かべながら近付いていく。


「ちっ!

バカ野郎がっ!」


その姿に、京也は舌打ちをする。


親子は閑散とした様子のスーパーに入っていく。

モノは少ないが、食料もまだ置いてあるのだろう。

親子は嬉しそうにそれらをカゴに入れていく。


「レジが見える所まで移動するぞ」


新一の言葉に従って、皆は移動することにした。



「……ませーん!」


「誰かいませんかー?」


スーパーの奥で声を上げている家族の声が聞こえる。

レジにカゴを持っていったが、誰もいないので店員を探しているようだ。


しばらくしても誰も出てこないため、一家はお金だけをレジに置いておくことにしたようだ。

レジ台で母親が何かを書いている。

一筆申し送りをしておくつもりのようだ。


すると、いつの間にか親子の後ろに数人の男が立っていた。

全員、ナイフを持っている。


「あっ!」


そこからはあっという間だった。


男たちは3人の背後から首筋にナイフを突き付ける。

親子は叫び声をあげる暇すらないまま拘束され、バックヤードへと連れていかれた。


「ど、どうしよう!

連れていかれちゃったよ!」


弥彦がおろおろと慌てた様子をみせていた。


「た、助けに行かないと」


みちるが慌てて飛び出そうとする。


「待て!」


「待てよ!」


新一と京也がそれを止める。


「なんでよ!

人が連れ去られたのよ!」


「行けば、みちるも死ぬぞ」


「うっ……」


新一に脅され、みちるは押し黙った。


「あいつら、なんなの!

人をさらって、いったいどうしようって言うのよ!」


みちるはやり場のない怒りを、地面を蹴ってぶつける。


「京也。

どう思う」


「なんとなく、こうじゃねえかなってのはある。

けど、具体的には分かんねえ」


新一に振られたが、京也は首を横に振った。


「……そうか。

この辺りの店は同じように見張られてる可能性か高い。

悟の意見も聞きたい。

一回戻ろう」


皆がそれに頷き、踵を返そうとした時、また別の家族がスーパーに向かっていくのが見えた。


「咲っ!」


みちるがその家族を見て、そう叫んでいた。




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